7.17.お持ち帰り
僕たち三人は、イウボラって悪魔からちょっと話を聞いた後、前鬼城に戻った。
僕たちだけで共有していい話ではなさそうだったので、アマリアズとリゼさんも呼んで、イウボラに話をしてもらうことにしたのだ。
天使の情報はまだ少ない。
なので少しでも集まっている情報は共有しておいた方がいい。
ということでイウボラの話を聞くため、一室に集まった。
で……なんだけど……。
リゼさんはイウボラの姿を見た瞬間、盛大に笑い転げた。
「あっはははははははは!! あはははははは!! イッイウボッあはははははなにそれ!! 饅頭なんだけど! 饅頭!!」
「貴様ァこの野郎がぁ……」
「饅頭ー!」
「ぶち殺すぞ!!!!」
姿や元の性格を知ってる分、こんな面白い姿になってしまったイウボラにツボッてしまった様だ。
ここまで盛大に笑っている姿を見ると、こちらまでつられてしまいそうだった。
でもここで笑ったら絶対怒られる。
我慢我慢……。
「……」
「……アマリアズ大丈夫?」
「キッツ……っクククク……」
笑わないでね?
標的にされたらまた話進まなくなるんだから。
ウチカゲお爺ちゃんが叫び散らしているイウボラを摘まみ、蝋燭が置かれていない燭台の上に乗せる。
「鏡餅だぁー! あはははははは!」
「マジで殺すぞお前!!」
「どちらかといえば仏飯器ですがな」
「それなー!!」
「なっなんだそれは……いやでも馬鹿にしてるのは分かるぞ!!」
それからもリゼさんの茶化しが続き、イウボラはそれにキレ続けた。
やっぱり話進まないなぁ。
アマリアズもなんとなく慣れて来たようで、笑いを堪えることはしなくなった。
まぁここまで何回も続けばね……。
でもいい加減話は進めて欲しいな。
ウチカゲお爺ちゃんを見て促すと、小さく頷いてくれた。
「リゼ殿もその辺に」
「あー可笑しい……。笑ったわぁ~」
「いつかぶち殺してやるからな……」
「貴方じゃ私に勝てないわよ~」
「ぐぬぬぬぬ……」
「ではイウボラ。お前が戦った天使について教えよ」
「……はぁ、わぁったよ」
まだ言い足りないのだろうが、それを何とか飲み込んだ。
一度咳払いをしてから、イウボラは戦った天使についての情報を共有する。
「……簡単に言えば不死身に近い奴だった。何度死んでもいつの間にか蘇る。だが最後は復活しなかった」
「死体の確認は?」
「しようと思ったところで次の天使にやられたんだよ。その前に本体を分裂しといてよかったぜ。分身に置いてきた力を本体に流すのに手間取って飛べなくなったんだよな」
「あの気配の正体がそれか。ずいぶん無理矢理力を引っ張り戻したようだな」
「その反動でこの有様だがな。二日もすれば戻ると思うが」
えっと?
天使のが不死身に近い力を持ってたってのは分かったけど……。
今はなんの話してるんだこれ……。
「アマリアズ、分かった?」
「分身から本体への力の引継ぎでしょ? 多分あいつの能力の一つに分身ってのがあるんだけど、力を保持するために分身に結構な力を置いとかないと戦えないんだと思う。だからあの本体はめちゃ弱い」
「……ん?」
「えーっとつまり」
アマリアズは少し考えた後、すぐに口を開く。
「操り人形みたいな感じだよね。戦う人形は体全部使わないと戦えないけど、術者は操る糸だけ動かせばいい。あいつの場合分身が人形で、本体が操る人」
「ああーなるほど?」
「分身には九割の力を入れておかないと脆くて戦えないんだと思う。で、多分分身がやられて本体は逃げた。分身に入れた九割の力を本体に引き戻す作業を今やってる感じだと思うよ」
分かりやすーい。
じゃあイウボラは本体に力を戻してる最中、疲れてあそこで倒れてたのねー。
で、進化するような違和感は、イウボラが無理矢理な形で本体に力を戻していたから……と。
まぁあんな小さな饅頭が一気に力を溜めていったら怖いよね。
そりゃ違和感にもなるよ。
で……死なない天使かぁ……。
「他に何かないか」
「天使の名前はアルテッツ。大天使が一人とかなんとか言ってたぞ。使ってきた技はそう強くない。光の針みたいなのを伸ばしたりする程度だな。あと防御面には優れていなさそうだった。格闘術はそこそこだったが」
「死なない技能に力を持っていかれているんだろうな」
技能が強い分身体能力は低いのかぁ。
まぁそう言うこともあるよね。
「……」
「? アマリアズ大丈夫?」
「ちょ、ちょっと宥漸君……」
アマリアズが口元を隠して、僕にだけ聞こえるように耳打ちしてきた。
「今アルテッツって言った……?」
「……? 言ったと思うけど」
「それ私が作り出した最初の天使の内の一人だわ……」
「……は?」
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