4.4.真実


 僕が四百年前に産まれた人間?

 ……それだと……お母さんも……四百年前の人間ってことになるけど……。


「そうだよ。だから彼女も“技能”を持ってる」

「え?」

「君は邪神が居なくなり、技能やステータスが消えた後に産まれた。だから君はステータスは持ってないけど、霊亀の息子っていう特別な存在だから技能が発現し続けてる。だけど君のお母さん、カルナさんは技能があった時代に産まれてるから、技能を持ってるしステータスもあるよ。知らなかったでしょ」


 得意げにそう言うアマリアズは、僕の驚く顔を見て楽しんでいる様だった。

 一方僕の頭は今こんがらがっている最中だ。


 え……と?

 まぁこれが本当の話だとして?

 お母さんが技能持ち?

 そういえばあの時僕とアマリアズに魔法使ってくれたけど、それが技能ってこと?

 でもでもでもでも、技能はこの世界から……。


 あっ、四百年前にお母さんがいたんだったら、技能を持っているのが普通なのか……?

 えぇ?

 ちょっと待ってよ……?


 お母さんが技能を持ってるってことは……四百年前にいたから。

 で……僕とお母さんを『応龍の決定』でこの時代に?

 う、ウチカゲお爺ちゃんと妙に仲がいいのは……四百年前に一緒に戦ったことがあるから??


「……………………アマリアズが言ってたことって、本当に……本当のこと?」

「そうだよ?」

「アマリアズが……元神様っていうのも?」

「お、信じてくれた?」

「い、いやだ……こんなちゃらちゃらしてんのが神様なんて嫌だ……」

「ぬおおおおい!!」


 ていうか神様は神様でも邪神の方でしょー!!

 え、ちょっと怖いんだけど!

 ……っていっても、いっつも助けられてたし、今は神様じゃないみたいだし、何なら多分僕の方が強いし……警戒するほどでもないか。


「今なんか失礼なこと考えてないかな!?」

「ううん、大丈夫だよー」

「な、なんだこの信じてもらえたけど信じてもらえない感じ! もやもやするんだけど!」


 なんかいつものアマリアズに戻った感じがする。

 まぁ……うん。

 お母さんが技能を持ってる理由が『応龍の決定』でこの時代に飛ばされたっていうのが、一番説得力あったなぁ……。

 それで信じる気になれたし。


 でもまだ分からないことがある。

 どうして僕とお母さんを……『応龍の決定』で四百年後に飛ばしたんだろう。

 もっと他の解決策とかあったんじゃないのかな。

 ああ、でも『応龍の決定』って代償があるんだっけ。

 それを回避するために……僕たちを飛ばしたのかな?


「その辺どうなの?」

「あー、私もその辺はよく知らないんだよねぇ。どうしてそういう決断をしたのかは、カルナさんにでも聞けば分かると思うよ。ま、今の話がまだ信じられなくても、ウチカゲお爺さんとカルナさんは四百年前を生きて来た人たちだから、話を聞けばいやでも信じられる。事実を話してくれれば、だけどね」

「そっかぁー……」


 うーん、まぁ当時を知ってる人がいるんだったら、その人に聞いた方が早いしね。

 本当のこと教えてくれるかどうかは分からないけど……。


 話は終わったとばかりにアマリアズは手を払い、周囲を見渡して小枝をかき集め始める。

 どうやらここで一夜を過ごすつもりのようだ。

 僕も焚火に必要な物を集める前に『爆拳』で軽く地面を掘っておく。

 あとはその辺にある石を集めてくるだけだ。


 あ……そういえば食べる物もないんだった。

 今から探して見つかるかなぁ……。


「……うん、切り替えよう。今は、なんとか捕まらないようにすること。うん」


 アマリアズの話はなかなか衝撃的ではあったが、今は切り替えていかなければならない。

 もうここまで来てしまったんだから、天使の脅威から逃げながら何とか解決方法を探していかなければならないのだ。

 話を引きずり続けてても良いことは一個もないだろう。


 解決できるときに、理解できるときに話を聞けばいい。

 だけどそれも、逃げ続けないとできないことだけどね……。

 あとは全部お母さんに教えてもらおう!

 それだったら絶対に信じられるしね。

 ……僕のお父さんが霊亀? っていうのは未だに信じられないけど……それも込みで聞こう。


 さてと、今問題なのは食料だ。

 今日を生きていくだけの糧がないと倒れてしまう。

 ……でもそういえば、僕あんまりお腹空いてないな……。

 なんでだろう。


 まぁいいや。

 僕は大丈夫でもアマリアズには必要だろうし。

 今から気配を辿って探せばいいか!


「よーし……」

「宥漸君、はいどうぞ」

「……んえ?」


 枝を集めて来たアマリアズが、僕におにぎりを手渡してくれた。

 どうしてここにそんなものが?

 疑問符を頭の上に並べていると、アマリアズがまた面白そうに笑いながら説明してくれた。


「君には内緒にしてたけど、魔道具袋を私も持ってるんだぁ~」

「ええ!? どこでそんな高価な物を!!」

「カンヌキさんに頼んだら貰えたけど」

「なん……だと……」


 あ、あのカンヌキめ……。

 僕にはくれなかったのか……!

 今度会ったら文句言っておこう。


 だけど魔道具袋があるんだったら、今回の旅はちょっと楽になりそうかな。

 となると、今回ばかりはカンヌキを許そう。

 でも僕も魔道具欲しい。


 とりあえずアマリアズが集めてくれた枝を組んで火を付ける。


「はぁー……」

「幸せが逃げるぞ~っと。さて、これからちょっと考えないとね」

「何を?」

「これからどうするか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る