赤髪の優等生、覚醒しました!?
香 祐馬
第1話 始まりは...ここでした
今の時刻は、丑三つ時。
外の世界は、静寂と暗闇に包まれていた。
今日に限っては、風もなく、草木の揺れる音もない。虫の鳴き声も聞こえず、どこか怖気が立つほどの不気味な静寂だった。
丑三つ時は、古来より鬼門とされ、鬼や霊がはこびる時間と言われているが、現代の日本ではあまり気にされていない。昔と比べ、妖怪などの類を信じない人間が大多数になっているからだ。
だからこそ、今この時間でも活動する人間が普通にいるわけで...。
今も、中肉中背の中年男性が、懐中電灯を片手に建物内を見回りをしていた。
この建物は、この地域では有名な高等学校である。
だが、進学校として有名なのではない。
ガラの悪さで有名なのだ。
高校の名前もちょうどいい感じで『公立
よって、生徒が夜な夜な学校に侵入してたむろし馬鹿騒ぎするのも、この学校では日常茶飯事だ。
そのため、近隣住民から苦情がくるので、仕方なく数時間ごとに見回りをする夜番の先生がいる。
今日も当直の教員が、慣れた様子で見回りをしていた。
屋上から順番に見回りをし、最後の一階に差し掛かる。
その時、無音だった廊下に音が響き出した。
ぴちゃん.... ぴちゃん.....ぴちゃん.....
「ん?どこかの蛇口が漏れてんのか?
全く、気になるじゃないか。どこだ?」
一つ一つ教室を確認し、水回りがあるところは慎重に見ていく。
トイレの個室も全て確認していったが、特に水漏れをしている様子はなかった。
しかし、奥に進むにつれ、音がだんだん大きくなっていくので、気のせいではない。
「後は....、そこを曲がったところにある、階段下の倉庫だが?
あそこには水場はないはずだが...。
んー...、おかしいなぁ。」
男は、お尻をポリポリ書きながら、角を曲がり、倉庫の扉を開いた。
ガチャ....
見渡してみても、モップやほうき、ワックス缶があるだけだ。やはり水場はない。
しかし、倉庫の中は『ぴちょーん...ぴちょーん....』と大音量で響いている。
「な、なんなんだ.....?」
男が恐る恐る倉庫に入ると、ガシャンっと扉が勝手に閉まった。
「うおっ!風か!?なんで閉まった?」
驚きでびくりと体が跳ねさせた。
しかし、室内だから風なんてものはない。
外も、今日に限っては無風だ。
扉が勝手に閉まるなんてあり得ない。
バクバクとハヤる鼓動。
とりあえず、ふーっと息を吐き、無理やり心を落ち着かせた。
男は、ゆっくり慎重に足を進め、倉庫の真ん中に立ち止まるとゆっくり部屋を見渡す。
やはり、水場はない。なのに、そばから水が落ちる音が聞こえてくる。
音の発生源は、ここで間違いないようだ。
ぴちょーん、ぴちょーん
しばらく間延びするような水音が聞こえていたが、それがだんだんと速く激しい音に変わっていく。
ぴちゃん、ぴちゃん、ぴちゃん!
ぴちゃんっ!! ぴちゃんっ!! ぴちゃんっ!!!
だんだんと音が大きくなって迫ってくる。
右からも上からも...、部屋全体から頭に響く水の音が、絶え間なく聞こえ続ける。
びっちゃーっんっ!!!!!
最後に、盛大な水の音が聞こえ静寂が訪れた。
ブルリと、体が震える。
「何かがおかしい」と、ようやく気づいたが、恐怖でその場から動けない。
ずるずると床に崩れ落ち、耳を塞ぐが、嘲笑うかのようにまた直接頭に音が響く始末。
ブルブルと震えが止まらなくなり、変に体に力が入り硬直する。
そして、とうとう、ーーその男の恐怖の感情が振り切れる...。
『ぁあ゛あ゛あぁぁぁぁぁぁっ!!!』
夜の学校に、男の絶叫が響き渡った.....。
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