6章 激戦
俺とルルが、うるさい程に口喧嘩をしていると、レイリにこっぴどく叱られ、大人しく先へ進んでいると五層に到達した。
「ようやく半分か、思ったよりキツイな」
「いっそのこと、この鉱石に賭けて戻っちゃう?」
レイリの悪い誘いに俺は、
「良いと思うけどよー、それが目的の鉱石じゃなかったらどうするつもりだ?」
「そ、それは....」
「だろ?なら先に進もうぜ」
先に進むしかない。十層まで残り半分もあると思うとかなり辛い。そして、この先、どのモンスターと遭遇するのかも心配である。
「なあ、レイリ?」
「ん?どうしたの?」
「レイリはこの辺りのモンスターについては何も知らないのか?」
「そうね....、町には特にモンスターは出てこないから、私はあまり知らないかな」
「やっぱりか、少しくらい知っておけば色々と助かっていたかもしれないと思ったんだけど」
情報収集でもできないかと思い、話しかけながら先を進んでいると、
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、なんかよくわからないけど、嫌な予感がする」
「それは何で感じたの?」
「俺の勘かな」
「勘なのー!?」
「いや、俺の勘は意外と当たるもんなんだよ」
「そんなものだとしても、頼ることはできないよー」
レイリから言わせれば、それは当然の事だと思う。でも、実際、俺は本当に勘が冴えていると思っている。現実においても事あるごとにどうでもいい勘が当たっていた。それくらいなら、幸運に恵まれてもいいと少しは思っているが....。
でも、俺はどこかでこの勘を信じていて、今も信じている。だから、警戒していた。
すると、
「うわっ!!」
「何が飛んできた?」
「針??」
針のような鋭いものが急に飛んできて、慌ててのけぞった。
何かいる。
そう思い、俺の進む先をはっきり確認したかったため、鉱山の明かりを照らすための松明を手に取り、目を凝らしていると、何かが前にいるのが見えた。
「何か飛んでる?」
また針らしきものが飛んできた。
「うぉっと」
また少し驚いて手元にあった盾で弾こうとしたが、一本が足に刺さってしまった。その瞬間、
ふら....。
急に気分が悪くなり、歩くのも辛くなってきた。
その様子を見て、
「大丈夫!?」
慌ててレイリが体を支えてくれた。
「すまん、もしかすると毒かもしれない」
「待って!解毒するから!」
レイリが俺の解毒をしてくれている間にアリーシャとルルが敵の相手をしていた。
見たところ、敵はコウモリのようなモンスターで、一体ではなく、数えきれないほどいることがようやくわかった。
「ファイヤーボーゲン!」
アリーシャが少し前に使った技を活かそうとしたが、ほとんど避けられてしまった。
「どうしよう....」
まだ自身の習得した技の効果を把握しておらず、慌てて本を読み始める。
一方のルルはというと....。
「んー」
何を考えているかはよくわからないが、凄く必死に考えているように見えた。
「ねえ!!ルルも何かしてよ!」
「ごめん!ちょっと待って!」
やがて、アリーシャが何も攻撃しないルルに少し苛立ってしまったか、普段より大きな声で呼びかけていた。しかし、その間もルルは悩んでいた。
そして、さらに時間が経ち....。
「アリ姉!本っ当にごめん、準備できたから、一旦、下がってていいよ!」
「さすがにそうする....」
ルルに何か考えがまとまったか、ようやく行動し始めた。
思えば、あの三人は姉妹だったな。てっきり仲の良い友達のように接していたが、改めて認識し直した。
ルルはどうやらどの技を発動しようか長い時間、悩んでいたみたいだ。真っ先に敵の相手をする形が整うと、本を勢い良く開き始めた。
「パワーフォース!」
「スライダルアリア!」
「ウィンドシュート!」
ルルは初めて技を使うにも関わらず、三つの技を同時に発動し、重ねがけまでやってみせた。
初めてとは思えない事をやり遂げたルルは、発動した技を活かして、俺達の前にいたコウモリの大半を蹴散らした。
「ルル、凄いな!」
レイリに解毒してもらい、体がある程度自由に動かせるようになってすぐに、ルルが起こした行動が気になってしまい、声をかけた。
「うーん、そう?」
正直に褒めると、さすがに照れた。
「同時に何個も技を使えることを知っていたのか?」
「いや、知らなかったよ。でも、急いで倒しておいた方が良かったし、試しにやってみただけ」
「なるほどなー」
ルルのおかげで、攻撃や防御に少し幅が広がった気がする。
これは本当にルルには感謝だな。
すると、
「ギィェェェー!!」
俺達が進む先の方から、恐ろしい叫び声が聞こえた。
「まだ残ってたのか?」
そう呟いて俺達は少し前進してみると、先程、ルルが倒してくれたコウモリと見た目は同じだが、その大きさが四倍か五倍ほどあった。おそらく、こいつが親玉なのだろう。
そいつと顔を合わせるとすぐに、敵が攻撃をしかけようとしてきた。
「ショウ、あなたはシールドを張って、なるだけ攻撃を防ぐようにお願い!」
「わ、わかった!」
今、目の前にいるのはわずか一体のみ。しかし、大きさが予想外でどうしたら倒せるのか想像がつかない。
そうしていると、ルルが前に出てきた。どうやら、先程、大半を倒した事に自信を持ったらしい。
「よし!やってやるよ!」
ルルが張り切っている。
「パワーフォース!」
「スライダルア....げほっげほっ」
「おい!大丈夫か?」
「よくわかんないけど、急に体が重くなったし物凄くしんどくなってきた....」
「何が起こったのかよくわからないけど、ここで限界になってしまうのは良くないから、しばらく休んどけよ」
「うん、ありがとう」
何がどうしてそうなったのかはよくわからないが、過度の技の重ねがけはもしかすると良くないのかもしれない。とにかく、ルルを除く三人でこの敵をどうにか凌ぐしかない。
ゲームで経験した事から、どうにか倒し方を見つけるしかない。
「これで倒せるかわからないけどやってみるか....」
本を見て、どうするべきか困っているアリーシャとレイリに声をかける。
「レイリ、アリーシャ。少し考えがあるんだけど今から言うことに従ってほしいけどいい?」
「ん?気になる....」
「お!困ってたから助かるー!」
レイリとアリーシャに考えた作戦を伝えることにした。
「勝てそうなの?」
「あいつに何が有効なのかすら全くわからない。だから、正直、賭けでもあるんだ」
「えー!」
「知ってたらこんな苦戦しないだろうよ」
「確かに。やってみるしかないね。」
お互いに納得したか、三人が攻撃する準備をした。
「レイリ、アリーシャ、準備はいい?」
「いいよ!」
「いつでも大丈夫!」
「じゃあ行くぞ!!」
そう言うと、俺が二人の先頭に立つ。
そして、
「ファイヤーボーゲン!」
続いてアリーシャが引きつけるように、炎の矢を放つ。すると、今まで大人しかったコウモリが攻撃されたせいか、アリーシャに目をつけた。そして、突撃してくる。
「思い通りにさせてたまるか!」
「タウントシールド!!」
俺に引きつけながら技で作った壁を利用し、突撃を防ぐ。そして、大声を上げる。
「レイリ!準備はできてるかー?」
そう言われると、小声で、
「ブレードエチャル」
何かを仕掛けて、
「できてるよー!いつでも大丈夫!」
「よし!アリーシャ、頼む!」
「わかった」
アリーシャに声をかけたほぼ同時に、
「アタッシュチェーン」
落ち着いて、技を発動すると、コウモリの真下付近から四本の鎖が出てコウモリを縛りつけた。ここまでは順調である。
後は最後だけだ!
「レイリー!いいぞー」
「待ってましたー!」
威勢の良い声を上げると、俺を乗り越えて、コウモリの足元までやってくる。
「ファイヤーエクスカッター!」
そう言うと、初めから持っていたナイフを事前に刃先を長くして、その刃に炎が纏わりつく。そして、勢い良く一太刀でコウモリを斬った。
「どうよ?」
今までにないくらいの決め顔でコウモリを見ると、黒く霧散していった。
「ありがとう!レイリ、助かった!」
「さすが、お姉ちゃん!」
「い、いやー。そこまで褒められるほどでもないじゃん」
「そう言ってドヤ顔してたくせに」
「そ、それは....」
そう言っていると、
「倒せたの?」
しばらく休んでいたルルが声をかけてきた。
「倒したよ。だから心配しないで」
「うん、わかった」
今までの中で一番大きな戦いでさすがに疲れたので、一息付いて再出発することにした。
この戦いのおかげで、皆に技の使い方がある程度身に付き、それから先のモンスターは苦戦することなく、倒していった。
クモのようなそこまで大きくない奴や、クマのように俺達より大きいモンスターもすんなりと倒していった。あるモンスターを除いて。
「はあはあ」
「なあ、コイツどうするよ。いい加減、倒さないともう疲れが....」
「そんなの言われなくても、皆そうだよ!どうにか攻撃できる状態を作らないと!」
今、俺らは九層で突如、遭遇した巨大オオカミに追われていた。でも、思いのほか速く、技も上手く当たらず、こうして逃げていた。そうすると、
「こんな時に....」
俺達は巨大オオカミに追われながら、なんと目的の十層に到達した。
「コイツがいる中で鉱石は採れない!ここで倒してからにするぞ!」
「うん!」
「もちろん!」
いつの間にか、俺達が完全に指揮を取っていた。レイリもルルも素直になってしまっている。
そんな事を思っていると、敵の方から火球を放ってきた。
「皆、避けろ!」
と言ったはずだが、
ガギーン。
何か弾いた音がした。
「おいおい、避けたが良かったのに」
「え?皆、避けてたよ?」
「嘘言わないでくれ。音もしてたんだぞ?」
「いや、私達の後ろからしたよ」
「え?」
そう言われて後ろを振り向くと、巨大で、見るからに頑丈そうな巨人がいた。
「待て待て!ヤバいって!こんなのどうするのー!?」
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