ノン・ノンフィクション

珈色かぷち

第1話 「訃報」

佐東十也さとう とおや

僕には小学生の頃から仲がいい友人がいた。

家に軟禁されていた僕の、人生で初めての友達が彼だった。


笑い合い、時には喧嘩もしたし、長い付き合いだったものだ。


彼の名前は瀬谷梅良せや うめら




「あの。彼の行方を追っているんです」

尋ねたのは彼の友人の家だっ



「チャイムを何度鳴らしても出なくって。死んでしまったんじゃないかとずっと心配で」


「……」


その人は何故か黙り込む。何か言いづらい事でもあるかのように。




「彼にとってあなたが大切な友人であったことを考慮して、お話しますね。」

「彼は死にました。」






ノン・ノンフィクション

第1話「訃報」







僕は死体のような毎日を送っていた。

を知ってからというものの、頭の中が出埋め尽くされる。

どうしてもっと早く気付けなかったのか。

どうしてあの時、声を掛けてやらなかったのか。

どうして。

どうして。

ごめんなさい。


『君を救うために僕は生きたい』


そんな言葉を口にしたこともあったものだ。SNSで。彼に見えない場所で。

直接伝えられたら何か変わっていたんだろうか。

もっと声をかけてあげれば。

遠慮せずに。

思考が埋め尽くされる。


そして鳴り響くは学校のチャイム音。不登校コンプレックスの僕の大嫌いな音。

それはいつも歪んで聴こえた。

そして家ではヒステリックな母に毎日度なり叫ばれる。



ああ、そうか。

これが僕の死に時なのか。享年17歳。



計画を立てる。思考を巡らせる。どうやって死のうか。あの子はどうやって亡くなったのかな。何も僕は知らされていない。いつ死のうか。

結果、飛び降り自殺を選択した。電車の乗り方はわからない。家では母親が常に監視している。これしか無かった。

場所は近所の歩道橋。目視で7mはあるだろうか。


魂の安らげる場所へと。



待っててね、瀬谷くん。

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ノン・ノンフィクション 珈色かぷち @koirocaputi

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