8本目の剣

 山の森の林にて

 お菓子でできた家一つ

 骸が彷徨う家二つ

 隠れるように家三つ

 迷家きたりて集うは誰か?

 これが彼に言う"お菓子の村"ってね。


「ここから山になるのか。」

「ええ。地図を見るに山の山間に剣はあるそうです。」

「そういや、知ってる?この山の噂。」

「なんだ?ここにくるのはアーサーもはじめてだろう?」

「いや。初めてなんだけどさ。兵士長がきたことあってこんな噂があったらしいよ。」

 ある日兄弟が狩りをしにこの山の森の林を訪れました。

 兄は森で、弟は林で獲物を狩ったそう。

 兄弟は森と林の中間で合流する約束でした。

 しかし、弟は林の奥でお菓子でできた村を見つけました。弟はその村の家のお菓子を持てるだけ持ち兄のもとへ急ぎました。

 しかし、兄はいつまで経っても表れません。

 そのうち天気が悪くなり弟は兄より先に山を降りることにしたのです。

 が、弟は見慣れたはずの山で迷ってしまいました。

 弟の道の先に小屋がありました。

 そこで雨宿りをしよう。

 そんなことを考えて小屋に入ります。

 ギィーギィー。

 真っ暗な小屋の中椅子が揺れる音が響きました

『すいません。雨宿りをさせてください。』

 弟は音のする方へ声をかけました。

 ギィーギィー。

 答えは返ってきませんでした。

 雨に濡れて寒いので暖炉に火をつけました。

 ギィーギィー。

 椅子の音がすぐ後ろで聞こえるのに気づき振り向くとそこにはーーー

 ーーー兄の死体が座っていました。

「って話。この話はこれで終わりじゃなくて弟が外に出たら近くに村があってそれが怪しい村だったりとかするらしいけど長いから省略。」

「ほう?それがこの山か?面白い!俺に任せろ!」

 アームドパルトはそれを告げると走って山を駆け上がっていった。

「アームドパルト...惜しい人をなくしました。ナム。」

 おれはしんでないぞーーー!!!

 おれはしんでーーー!!

 おれはーーー!

 おれーーー

「やまびこですね。さて、いきますか。」

 地図を見ながら進んでいくと。

 村?いや、3軒しかないから村とは...。

「アーサー。この村の人に聞くのも手ですよ」

 コンコン。ギィー。

「なんだい?見ない顔だね。迷子かい。」

「いえ。このあたりに剣の刺さってる場所はありませんか?教えていただきたいのですが。」

「そうさね。ここは森の入り口。剣は確か...森と林の間の大木に刺さってたさ。林は南に下った所だね。」

 おばあさんにお礼をいい林へと向かった。

「南はこっちで。下った先っと。」

 森を抜けた先林のある場所。

 丁度森と林の間。

「ありませんね。少し下ってみましょうか。丁度川があるのでこれを目印にしましょう。」

 サラサラと森を流れる川。

 少し下った先だろうか。大木がそびえていた。

 剣ももちろん。さて。

「貴様名は!?じゃあ、ディグレスで!」

 アーサーは剣を引き抜いた。

 細身の綺麗な剣。ディグレス。

 アーサーはディグレスを鞘にしまうとパーシバルと森へ引き返した。

 カー。カー。カー。カー。

 すっかり日は暮れて夕焼けに染まっていた。

「アーサー。今日はこの辺で野営しましょう。夜の山、ひいては森や林は危険だと。」

「おかしいです。わたしの目算ではさっきの村に今頃ついてるはずなのですが。」

 おや?あそこに小屋が見えます。

 アーサー達は小屋に入りました。

「アーサーが話した噂では死体があるはずですが。ないですね。ないに越したことはないですが。」

 小屋の暖炉はさっきまで人がいたかのように燃えていた。

「今日はここでお泊まりですね。」

 アーサーがウキウキと声を弾ませた。

 はぁー。とパーシバルがため息をついた頃。

 時は遡りアームドパルトは。

「はっはー!この分だとこの山のてっぺんはもうすぐか。」

 しかし登れど登れど先は続く。

「はぁ。はぁ。しかし少しは休憩しなくては」

 と、丁度いいところに小屋が2つ。

 丁度いい。この小屋でやすむか。

 ギィー。ばたん。

 寒い。汗が滲んで鎧が暑い。

 アームドパルトは鎧を脱ぐと、もう片方の小屋へ行った。

「ほう。暖炉があるな。薪もある。使われてないようだが手入れはされてるらしいな。」

 暖炉に火をつけてベットへ腰掛けた。

 ーーーしばらく火にあたっていた。

「いや、暑いわ!」

 火を消すのも忘れもう片方の小屋へ避難した。

 と、その途中。看板が立っていた。

『お菓子の家。この先。』

 かすれて読みにくいがお菓子の家と書いてある

「ふっ。お菓子より肉だ。小屋に備蓄が有ればいいがな。」

 アームドパルトは運良くもう一つの小屋は食糧庫だったので満腹になり寝た。

 これがアームドパルトの行動。

 さてアーサーに戻ろう。

「パーシバル。もしかしてこの缶詰が夕食ですか?」

「ええ。今回は山ということで日持ちする物を選びました。」

「少ない。」

「それはアームドに言ってください。彼が無計画に食べなければもっと沢山残ってました。アームドは片っ端から開けて残すのでタチが悪い。」

「うへー。」

 幸い三つくらい食べれたのでどうにかなった。

 寝る!バタン!グーグー。

 夜もふけたころ。

「むにゃ。お腹空きました。むぅー。」

 山は食材の宝庫だと聞いた。

 なら探しに行こう!

 川とは反対方向へ。

 アーサーは 暗くて わからない!

「むむむ。こまりました。おや?」

 暗い獣道に街灯が、ひぃーふぅー。

 どうやらこの先に何かあるらしい。

 ザッ。ザッ。

 ?。これは?

「お菓子?これはケーキ?それもデッカい奴」

 丁度お腹が空いていたので少しいただいた。

 グー。腹が鳴るなり法隆寺。

 さて、お腹いっぱいになったアーサーは小屋に戻り眠りについた。

 チュンチュン。

 暖炉の火も消え、寒さで目が覚める。

「アーサー。朝ご飯を食べましょう。」

「ふっふっふ。パーシバル。わたしは昨夜発見してしまったのです!お菓子作りのお菓子のおうち!をね。」

 はぁ。とため息2つ。そんなにため息ついてたら幸せのがしますです。

「アーサー。どこにあったのですか?案内していただけると。」

 コッチこっち。確かここに街灯が。

「ありませんね。街灯。」

 あれェー?おかしい。

「きっと勘違いです。それか寝ぼけたか。」

 よく見ると道が昨日とは違って見える。

 ということは寝ぼけたか?

「まぁいいや。パーシバル!朝ご飯ください」

「了解しました。」

 昨日と同じ缶詰をぱくり。

「さて。今日は山を降りるとしましょう。といっても一度登る必要が。」

「アームドパルトは...まあ大丈夫ですよね。」

 山の緩い渓谷にあたるこの場所。

 抜けるには一度渓谷を出る必要がある。

 つまり登る。それから下山。

「たしか川に沿って来たはずです。なので川を目指します。OK?」

「グゥー。お腹空きました。」

 川は西に進んだ先にあるはず。

 ザッ。ザッ。

「パーシバル?川というより滝です。」

「!。わかりました。ここは迷家。あの村の家が少なかったのは迷って帰ってこない者が多かったからです。」

 迷家。

 同じ家に同じ地形。その上木の高さがバラバラで太陽で方向を測ることのできない特殊な入り組んだ天然迷路。

「そっか。じゃあこういうのはどう?木に剣で印つけつつ進む。ってのは。」

「おそらく前の遭難者も同じ事を考えたはずです。...やはり。ここら辺の木だけ周りに比べてキズが多い。」

「まっすぐ歩く...のは木の高さで太陽が認識できないから無理。地図もあてにならないし。じゃあこういうのは?」

 はてさて一方アームドパルトは?

「むぅ。食料は充分確保できたが。しかし登ってるのか下りてるのか。感覚が麻痺するな。」

 と。家が見える。周りの木を切って家を建てたのか。

 コンコン。

「だれかいないか?」

「あいよ。なんだいあんちゃん。来る場所を間違えたみたいな格好をして。」

 たしかに山に鎧で登る阿呆は俺くらいか。

「いや、すまん。道を尋ねたい。」

 この辺りで1番デカくて剣の刺さった木。

「そこに行きたいのかい。ならあそこに見える道。それを道なりに進めば出られる。」

 お礼をいうと男は不機嫌そうに扉を閉めた。

 ザッ。

 道なりに1時間ほどだろうか?

 進んだ先はというと。

「入り口じゃないか...。」

 そう。アームドパルトは予期せず下山してしまったのだ。

 アーサーはある方法で下山していた。

「つまり真っ直ぐ進めれば下山出来るわけですよね?ならこれです。かいちゅーでんとーという物を使います。片方がそれで照らしもう片方が光を反射させつつ進みます。光が届かない所で交代。これを繰り返せば真っ直ぐには進めます。反射は剣で反射させましょうか。」

 ちなみにアーサー達とアームドパルトは別々の入り口にたどり着いたので城までお互い気づかなかったとか。


 ディグレスはチリとなり消えた。

 これの何処が伝説なのか。

 実はあの村が噂の出所で迷家に誘い込んで遊んでいるとか。

 実はアーサー達のあった人の中に殺人鬼が紛れていたとか。

 極め付けは"家畜がいないのに生活できてる"というものだったり。

 なにを伝説というのかは誰にもわかり得ないのかもしれない。


 8本目の剣読了。

 Thi・9本目の剣を初めますよろしいですか?









 魔眼名:食の魔眼

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る