1本目の剣

 キィー、キィー、

「むにゃむにゃ」

「アーサー!?」

「むにゃ・・・パーシバル?えっ?」

 ドシン!アーサーがブランコから落ちた音は単純明快だった。

「アーサー・・・。貴女は注意されたことが自分がやったことないことだったら実際にやってみる人だということをいま理解しました。」

「うーむ・・・いつの間に寝て・・・ここはどこ?アームドパルトたちは?」

 はぁ、と大きなため息を吐いてパーシバルは捲し立てた。

「またアームドパルトですか 今度は何を吹き込まれました?こうなった原因もアームドパルトですがアーサーには危ないことは・・・はあ、そもそもアームドパルトのような奴と次期王候補が仲良くやってるなんて・・・それで?今度はどんな小粋なジョークのタネを仕込まれたんですか?マジック?イタズラ?それかもしかして、」

 あまりに早口なので波に飲まれて全部吐いてしまうところだった。が、自分に身に覚えがない事を気付いてしまい、口を挟んでしまった。

「ちょっーとまってほしいんだけれど?私いま起きたばっかりで、さぁ。はぁ。」

「そうですね。まずスカートが丸見えです。」

「それ、そこからだと見えないってオチね?分かってます」

 アーサーは下を向こうとしたが、首が変な方向を向いていることに気づき慌てて起き上がった

「アーサー。それもアームドパルトが?アイツはアホですが、馬鹿ではないと。」

「そうですね。まさか自分がブランコから落ちてそのまま話し続けるとは想像の外ですね。すみませんでした」

 アーサーは服をぱたぱたと叩きつつパーシバルにフードの中もなど、世間話をしつつ城に入って行った。

 アーサーの服はスカート(ミニ)にノースリーブのジャケットにフードが付いたもの。そのしたに長袖のTシャツを着ていた。

 パーシバルの服も普段着のようだが興味ないので略。

 どこを見ても人がいない。それもそのはず。今日はなんとかの祭の最中らしい。それも100年目とかなんとか。(でもブランコから落ちた時はメイドがいたよ?凄くとおくに二、三人)

「ではアーサーは馬車に乗っていたと。しかも鎧をきて?」

「いや正確には鎧じゃないかも。パーシバルがきてた鎧はがっちり全身を覆ってたけど私がきてたのは軽くて覆ってる部分もノースリーブの鎧に小手・・・ガントレットっていうのかな?それにスカートだった。あっ今の服に似てるかも」

 なるほど。とパーシバルは少し考えた。

「ならいまの状況にも合致している。今日の祭は聖剣を引き抜く者を選出するためのもの。

 この祭でアーサーが聖剣を抜いたなら、その話は本当かもしれません。でも」

「なら行かないと!」

「・・・引き抜けなかったら?そもそも100年経った剣が原型を保っているとは思えません。それに」

「引き抜けないものを引き抜く。原型を保ってなくてもそれを使って伝説を成す。奇跡の体現。それがアーサーじゃなくてなんだっていうの?」

 アーサーの目はキラキラと輝き飛ぶ事を覚えた鳥のように空を見上げて語っていた。

 それはまさに彼の知るアーサーそのものだった

「貴女がそういう性格なのを忘れていました。

 しかし、今の言葉には王が見えました。

 貴女にどこまでもついていきましょうパーシバル。騎士の誓いをここに。」

 パーシバルはそう言い剣を鞘ごと地面に突き立て膝をついた。

「ええ。貴方の働きを褒美を持って敬いましょう。それなりに、ね。」

 アーサーはパーシバルの手を掴み起き上がらせた。

「それなりに、ですか。貴女のそれなりはどれ程のものか。楽しみにしていますよ。」

 アーサーの目にはもう空しか見えていない。

 丘の上の巨木に刺さった剣だけしか・・・。

 アーサーは走った。祭の屋台に目もくれず。

 くれてやる目などない。

 パーシバルの手を引き一直線に。

 それで切れてく手など放っておけ。

 けれども耳は敏感に。

 民の声だけは落としてはならぬ。王ならば。

 結局丘の上に着いたのは祭りの終わりに近かった。

 現王の声が響いた。

『この男も抜けなかった!これで全ての選定を終わる!100年抜けなかった聖剣はこれからも抜けることはないだろう!この国の平和が続くように!それでは祝おう!この国のへい』

「お待ちください!王よ!」

「パーシバルか?アーサーはどうした?あのお天馬娘いや、可愛い1人娘は。」

「キャっ。」

「なんだなんだ?」

「あいつを止めろ!衛兵は何をしている!」

 その時だった。民衆が一歩下がり、兵士たちは膝をつきこうべを垂れた。

 その中心に1人の少女の姿あり。

「皆下がれ。このアーサーが選定に挑む。」

「アレが時期国王アーサーか!」

「でも女の子じゃないか。女の子じゃ王にはなれないぞ。」

「何言ってるんだ!前例がないだけでなれないことなどないだろう!」

『皆の物!静まれ!あれこそが我が愛娘アーサーだ!もちろんアーサーは女ではある。しかしアーサーの剣技と才はすでに兵長すらも超えている!剣技と才二つを合わせればここにいる国最優の剣士、パーシバルとも競え合えると聞く!そこでどうだろう。選定を受けさせようと思うが違を唱える者はいるか!』

 王の言葉に皆は口を閉じた。

 その沈黙こそがアーサーの選定を認めていた。

 アーサーは聖剣の前まで行き息を吐いた。

 そして剣に手をかけ、一気に、スッと引き抜いて見せた。

 アーサーが剣を掲げると民衆から声援が巻き起こった。

 その剣は錆びてもおらず、崩れるどころか触れるとスパッと切れてしまいそうなほど夕陽を背に輝いていたという。

 その夕陽を朝陽だと言うものがいた。

 ーその者曰く。夕陽は終わりを告げるものだ。

 現王の政権の終わりを告げている。

 そしてそれは朝陽でもある。

 アーサーという眩い新芽の誕生を祝うものだ。

「アーサーよ。其方が今日からこの国の王、アーサー王だ。」

 その日の祭は民も王も飲み明かしたと言う。

 その祭りは三日三晩続き、王は1日でダウンし歳を感じ、本当に愛娘に王座を明け渡したという。

 その後王により継承がおこなわれた。

 王の証すなわち聖剣の鞘の継承だった。

「アーサーよ。これから其方が王だ。民の事を考え、いや堅苦しいのはやめだ。皆の者!アーサー王の誕生だ!さあ受け取るといい。聖剣の鞘だ。」

「はい。聖剣とその鞘。確かに継承いたします」

「アーサーよ。民とは国民にあらず。民とは人の営みを言うのだ。この陸地が続く限りが其方の守るべき民草だ。その両手で守れぬなら2人で守ればいい。2人でもダメなら100人で。

 100人でもダメなら1万人で。それでもダメな時は国民全員で挑む事を政治というのだ。分かったか?アーサー。」

「はい。つまり一人で出来ないイタズラは国がかりでやれ。ということですね。」

「アーサー王」

「よい。パーシバル、アーサーにとってイタズラとはそれほどに大きな事なのだろう。ワシも祭は好きだからな。」

「はっ(元王はそこまでアーサーのことを・・・)」

 アーサーが朝陽になるのはこれからかもしれない

 一本目の剣読了

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