第24話 再戦の行方(Ⅰ)

 ▽▲▽


 時間が過ぎ去るのは、早いもので。

 気が付けば、ボクが仕込んだ練習試合当日を迎えた。

 ーー迎えた、んだが。


「やべぇな、先輩たちと連絡つかねぇよ!」


 スマホの時計を見て、焦った声を出す普代くん。

 それもそのはず。

 現在は、試合当日で開始もう10分前だ。

 それなのに、試合会場となる学院の武道館にはボクとキノ、そして普代くんの三人のみ。

 いや、相手校はちゃんと来ているから総勢は七人ほどではあるが。

 取り合えず武道館の裏手に集まって、どうするか考えることに。


「いやぁ、マジか」


 くだんの先輩ふたりも来ていなければ、紫波雪風とその腰ぎんちゃくも来ていない。

 解放せざるを得ない状況を作ればリリーズすると踏んだが、そんなことはなかったようだ。

 ぶっちゃけ、最悪の展開である。

 あの悪役令嬢、何を考えてやがる?

 直前までの二日間、徹底して剣道部に顔だそうとしたのを妨害したのを根に持っているのか?

 そこはかとなく教職員を誘導して用事押し付けたり、教室のチョークをバキバキに折ったり日誌の日付をわざとずらして間違えて書きやすくして日直の仕事をわざと増やしたり。

 なるべく犯人がボクであるとわからないように、間接的に攻めたんだけど。

 何故か彼女、よくないことが起こると全部取り合えずボクのせいを疑うところがあるからな。

 なんかことあるごとにーー。


「おのれ遠野花鈴!!」


 ーーって叫んでいたらしいけど、勘弁してほしい。

 なんで全部ボクと決めつけるのか、風評被害も甚だしい。

 まぁ、実際ボクがやったんだけど。

 そうやって叫ぶなら、証拠を掴んでからにしてほしいね。


「どうしよう、リンちゃん! なんかいい案ある?」


「いや、どうって言われてもなぁ」


 そんないきなり言われても、できることとできないことがある。

 強いて浮かんだ案といえば。

 そう思ってポケットから、小さな袋を数枚取り出してふたりに見せる。


「じゃあ、この強力な下剤を奴らのドリンクに混入させて不戦勝狙ってみる?」


「怖っ! え、なんでぱっと外道戦術思い浮かぶんだよ! なんでそんなの持ってあるいてるんだよ! 怖いわお前!」


「それ以外なら、武道館に爆弾を設置したって怪文書を学院理事に送って有耶無耶にする? 文章ならもう作ってあるから、あとは送信すればいいだけだけど」


「もういいよ! もう黙れよ! お前怖すぎるわ!」


 なんか普代くんにドン引きされた。

 解せぬ、こちとら君たちの為に発案したというのに。

 ボクと彼がぎゃあぎゃあ言い合っていると、突然キノが声を上げた。


「ふたり共! 見てあっち!」


 そう言って彼女が指をさす方をボクたちがそろって見てみると、武道館へ続く渡り廊下を四人分の人影が歩いてこちらに向かってきていた。

 四人組の正体はーー。


「お待たせしましたわ!!」


 紫波雪風とその腰ぎんちゃく。

 ーーとそのふたりに肩を貸してもらいながら歩く、例の先輩ふたりの姿だった。


「これで試合は大丈夫ですわね!」


「いや、無理だろ」


 何故か試合前なのに、例の先輩たちは満身創痍だった。

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