第8話 ”にわか”なりのゲーム攻略(Ⅰ)

 ▽▲▽


 朝。

 HRホームルームが始まるよりだいぶ前。

 まだ人は疎らな教室で、ボクは自分の席に座って手帳を広げた。


「さて、どうしようか」


 そう呟いて、手帳に書き記していた情報を元に頭の中を整理する。

 むろんそれは、この世界のことであり、主人公キノをどう誘導しどのエンディングに導くかという問題に対する考察だ。

 現在ボクが確認した攻略対象登場人物は四人。

 何故なんてそんなあやふやな表現をしているのかというと、ボク自身が知っているゲーム情報が少なすぎることが原因だ。

 結局のところボクは時々妹がやっているのを見ていただけで、ゲームの全容は知らない。

 正直なところ、攻略対象の人数だって知らなかったのだ。

 だからこそこの世界での、この学院での情報収集に力を入れえた訳で。


「ーーまぁ、結果的にちゃんと攻略対象は特定できたからいいんだけど」


 攻略対象の発見は、実は意外と簡単だった。

 何故ならば、彼らは総じてすさまじくからだ。

 例えば、普代剣将。

 ボクたちと同じ学年で、剣道部に所属しているスポーツマンーー。

 って聞いていたけどさ!


 あのV系バンドマンみたいな髪色と髪型何!?

 顔面偏差値が明らかにアイドルより高いし、声がすごいアニメっぽい。

 ーーいやまぁ、声に関してはボクも言えた義理はないんだけどさ。


 なんというか、見た目からして周囲から浮きまくっていた。

 それなのに、他の生徒や教師がその辺に言及する場面はない。

 普通あんな髪型してたら運動部入れないでしょ。

 いや、もっと言ったら受験通るかも怪しいし、今もなんで生活指導に引っかかんないんだよって。

 

 そんな人物が剣将かれ含めて四人も見つかったら、そりゃ攻略キャラだろうなって思う。


 そして、主人公キノには最終的に彼らの誰かとくっついてハッピーエンドに向かってほしいんだけど、それには今の状況でどうさせるのがベストなのか。

 ーーそれは、状態にすることだ。

 現状まだ不確定要素が多すぎる。

 攻略を誰かひとりに絞ってしまった場合、万が一そのルートが潰えてしまったときの替えが利かなくなってしまう可能性がある。

 だからこそ、キノには今は全ての攻略対象に接点を持ってもらい、同時に攻略を進めてもらう。

 そして、色々熟考したり不安要素を排除したうえで、最後にその中で最も安全性の高そうなルートに入ってもらう。

 これが現状のボクが取れる最善策といえよう。


 だからこそ手始めに、キノには全攻略対象と接点を持ってもらうのが最優先。

 先日得た情報によると、現在普代剣将の所属する剣道部に問題が発生しているそうだ。


「ーーだから手始めに、キノをその問題に巻き込むか」


 手帳から顔を上げて、教室に備え付けてある時計を見る。

 キノがこの教室に着くまでは、まだほんの少し時間があった。

 それまでの時間、ボクはどう彼女をこのプランに引きずりこむかを静かに試案しつづけることにした。

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