1章④
セシルの
それは相談し始めたサティスさんとラディさんも同じらしい。
1番簡単に考えるなら『〝爪痕の主〟が単なる動物』という可能性もゼロとは言わない。それならもしかしたら魔物に恐怖を覚えて『逃げた』ということもあり得る。…が、これほど大きなはっきりとした爪痕を残すような動物は普通の熊くらい。熊が〝木の上に〟これほどの量の爪痕を残す意味が分からない。
分からないことが量産される想定になってしまうだけで現実味がなさすぎるだろう。
そしてその想定を除外して〝魔物〟だとすると、途端に候補がいなくなる。
縄張りに入って来たのに争わないなら考えられる理由は『共生』だろうけど、フォレストベアと共生関係にある魔物なんて〝いない〟というのがサティスさんとラディさんの認識だ。
それを聞いてセシルは「んんん?」と思案気。
「何か気になるのか?」と問えば「いえ、何かを……何かを忘れてる気が…」と困った顔になる。
結局セシルはその内容を思い出せないままだが時間は有限。
分かれて周辺調査に動く。
調査する対象は〝爪痕の主〟そのものはもちろん、この縄張りらしき爪痕がどこまで〝広がっているのか〟ということもだった。
そのため見つかった爪痕から左右に2班に分かれて調べる。
俺とセシルが分かれるべきなのだろうけど、セシルが婚約者のいる未婚女性ということもあって、ラディさんと騎士全員+霊獣イルチームが結成される。
それが決まった(ラディさんの独断)瞬間、「ちょっと待てっ!それは私が邪魔者以外の何者でもないだろう!?」とサティスさんがラディさんに食ってかかった。結局話し合いの末に騎士1人がこちらに移動し、俺、セシル、サティスさん、騎士(モイティバさん)の4人チームになる。
…ちなみにこの騎士選出、揉め…たような揉めてないような不思議(?)な終わり方だったよ。
最初は単なる
サティスさんはララクト伯爵家の次期当主。
普通に考えてその護衛なら名誉ある仕事として取り合いとならないように、突発的な場合に限り、命令系統に問題がない場合は籤引きで決めるのが通例となっているという。
なんでも先代ララクト伯爵のやり方なんだって。普段接する機会の少ない騎士ともコミュニケーションをとるためらしい。
そんな中での辞退―他の騎士が「ホタム、何かあったのか?!」と慌てている。
(…まぁ、普通に考えて上司の前でやることではないな)
実際サティスさんがちょっと落ち込んでいる気もしなくはない。
―が次の瞬間、その雰囲気が一転する。
「すみません…ですが――――つい先日彼女と別れた私には………」とホタムが落ち込んだのだ。
「「「「「へ?」」」」」
これにはみんな目が点になる。
そして他の騎士が気づいた。
「………モイティバさん、サティス様の護衛お任せしても? ……ここにいる騎士はモイティバさん以外、皆―独り身です…」
あとでモイティバさんに聞いた話、たまたま今回
ホタムさんが最近別れたというのもモイティバさんは知っていたらしい。
多分だが、紅一点なセシルが婚約者のいる未婚女性という点でチーム編成が考慮された為に、そういうデリケートな点が浮き彫りになってしまったのではないか、とのこと。
ホタムさん以外の騎士も別に気にしていなかったことが、別れたばかりのホタムさんの呟きでちょっとしたお通夜に変わっていた…。
なんでも最近忙しく、出会いがないそうな。
………なんかとっっっても原因に身に覚えがある気がする。
サティスさんに目を向ければ―「…そうだな。今度未婚のメイドたちとの食事会でも開くか。あとはこういう時に連れてくる騎士の選定にもバランスを取るようにしよう。」とのこと。
騎士の出会い問題が分かったのは良かったけど…全部俺が原因に関わっている気がして申し訳なかった。
ちなみにサティスさん主催の食事会後、今回同行していた騎士たちは皆お相手ができたとさ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
更新お休みしてすみませんでした!
プロットはまだ完成していませんが、更新頑張っていきます!
次回更新は4月23日(水)の8時予定です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます