冷めた恋

新米chan

第1話『はじまりと出会い』

向こう岸にはネオンの街

波止場の倉庫近くで一人立ち尽くす姿


「ハッハッハッハッっ」と笑っているのかと思ったら涙が止まらない。そんな彼女の手には血痕が着いていた。


パトカーのサイレンと共にその場に倒れた彼女。

「お嬢、しっかりして下さい」と呼ぶ声すら気付く事はなかった。目を覚ますと白い天井に薄黄色のカーテンからそよ風が入るとラベンダーの香りがこの部屋を惑わす。


「ここ、どこ?」と起き上がり周りを見渡すと血痕が着いたコートや鞄が置いてあった。そして彼女は窓へと目を向け青い空を眺めていた。


「目が覚めたか?」と声のする方に振り向くと幹部を数人連れた父親だった。

「お前には苦労かけたな、悪かった」と組長というよりは優しい父親の表情をしていた。彼女は「お父さん」と久しぶりに呼んだ。


すると幹部の1人の電話が鳴る。

「組長、奴が命を絶ったようです」と報告していたが、彼女は誰の事だかすぐに分かった。

「柊……っ」と名前を呼んだ瞬間、彼との出会いや過ごしてきた日々が走馬灯のようにフラッシュバックした。


【過去】

「お母さんっ!」と小さな子どもの声にも振り向かず、男と去っていく後ろ姿に叫び続けた。

出ていった母親に苛立つ父親に耐えきれず、いつも秘密基地として使っていた小屋に向かうと酒の一升瓶を飲みながらもすでに酔っている男がいた。

「誰?」と声をかけると柊は彼女に気づき微笑むとフラフラしながら近づき、キスをした。

「ちょっと、何すんのよ?」とすぐに離れ後ずさりした。

「キスくらい減るもんじゃねぇし、いいだろ?」とまた酒を飲みながらふらつく。

「本当、くだらない……」その言葉で一瞬にして目付きが変わった。

「うるせぇ」とその場で押し倒された。

「ちょっとっ!」と抵抗するもやはり男には勝てはしない。動こうとすると力が強くなるから抵抗をやめた。「一人にしないでくれ、俺から離れないでくれ」とそのまま覆いかぶさり弱音を吐く。凛はそんな柊の背中に腕を回した。これが彼との出会いだった。

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