入学式 第2話

長い長い校長先生の話が終わると、校歌斉唱が始まった。

もちろん新入生の僕たちに、まともに歌えるはずがない。何人かが、元気良く口パクをする。しかし、彼らは歌えることがおかしいことに気付き、皆と同じようにボソボソと口を動かし始めた。そして、音の空白を補うために、体育館の後ろ側にいた三年生が大きな声を出して歌うこととなった。


(さすが三年生だなぁ)


 各々がそれぞれの声量で歌っているにも関わらず、全く乱れたように感じない。

この学校は吹奏楽部が強いと噂で聞いたが、一般の生徒も音楽ができるのであろうか。

僕はそんなことを考えていると、近くでそこそこの声量で歌っている人がいることに気が付いた。

三年生がこんな近くにいるはずもない。一体どんな人なんだろうと左の方を見てみると・・・


(・・・あ!あの子だぁぁ!!)


 そこにはさっき見たあの子がいた。窓からの光を白い肌が反射して輝いていた。

少し低い様な、それでいて少し高い様な声だった。紅の口からは次々とメロディーが紡がれていく。


(て、天使みたいだ)


 その姿に見惚れていると、いつの間にか校歌斉唱は終わっていた。指揮をしていた音楽の先生が一礼して壇上から降りていく。そして退場の合図が出された。


(同じクラスだったんだ・・・!よし、どうして新入生なのに歌えたのかをネタにして話しかけてみるぞ!)


 僕はそう固く決意すると、花道を歩き体育館の出口へと向かった。

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