転生したのでのんびり気ままに暮らしたい!〜異世界で最高の自給自足〜

猫野 丸(ねこの まる)

第1話 転生キット

「田中さぁ~ん」

「はぁい」

「そろそろ寝る時間ですよ~」

俺は田中 隆弘たなかたかひろ(82)。

もう死んでしまいそうなくらいヨボヨボだ。

昔は、よく転生小説や異世界マンガを読んでいた。

それゆえに転生に憧れていた。

今日もそんなことを思いながら目を閉じる。


「あなた、転生に憧れているんですか?出来ますよ。転生」

酷くかすれた声。

でもそんな上手い話があるなんて。

ここは夢の中なのだろうか?

「はい。転生に憧れています」

「でしたら、この『転生キット』を2つ差し上げましょう」

ここで夢?が覚める。


「夢だったのか?」

いや、夢ではない。

なぜなら横に転生キットがあるからだ。

転生したいなぁ。

そうだ。

転生キットを使おう。

まずは説明をしっかり読まなくては。

なになに。

『これは転生キットです。コップに粉末を入れ、水で溶かします。それを飲むと転生できます。転生先の言葉がわからない場合、転生先にあるボタンを押すと、翻訳できます。

※転生先は選べません、転生前には戻ることはできません、転生前の体は死んでしまいます、転生先に持って行きたい持ち物は、自分の体の横に置いておいて下さい。』

なるほど、やってみよう。

説明に書いてあるように、コップに粉末を入れ、水で溶かす。

それを飲む。

甘くて美味しい。いちご味だ。

そうだ、転生先にも、転生キットを持っていこう。こんないいもの、次いつ手に入れられるかわからないからね。

なんだか気分が良い。このまま寝てしまおう。



田中 隆弘(82)永眠。



っ。ここはどこだ?

そうだ転生したのか。

「Hé, lève-toi tôt, Alex.」

なんて言ってるんだろう。

そうだ、ボタン。

ボタンを押した。

『フランス語ですっ!』

言葉が自動翻訳される。

「こら。早く起きなさい、アレックス」

あの人がママか。

「はーいママ」

ママに呼ばれて下に行く。

「ほら、早くご飯食べちゃいなさい。あなたは王子なんだから」

え!俺、王子に転生しちゃったの⁉︎

なんかママ厳しそうだけど、王子の生活もいいかも。

「はぁーい」

今日の朝ごはんは、パンケーキ。

たっぷりメープルシロップがかかっていて美味しそうだ。

ナイフで切って、口に運ぶ。

「パンケーキ、美味しいねママ!」

「ええ、そうね」

何だこれは、美味しすぎる!

「甘い」と「ふかふか」が交互に来る。

こんな美味しいもの、すぐに食べ終わるに決まってる!

1分で完食。

「アレックス、食べ終わったら、稽古よ!」

剣道場に移動する。

「お!今日は早いね、アレックス君」

「ええ。当たり前よ!なんてったて私の子なんだから」

いつも遅刻してたのか!

「じゃあ、アレックス。ケール先生に教えて貰うのよ。」

「はぁーい!ママ」

「明日は6歳の誕生日。頑張って練習してね」


何時間練習したんだろう。

「ハアハア、そろそろ、ハアハア、休憩を、ハアハア、ください、先生」

「何言ってるんだ、アレックス。まだ1分も練習していないじゃないか」

つらい!1分も練習していないのにこの疲れ。

もうやめたい!


「ハアハア、やっと終わった」

自室に戻ろう。

俺は自室に戻った。

そうだ。

もう一度転生キットを使って転生しよう!

もう一度、コップに粉末を入れ、水で溶かす。

それを飲む。

そして、目を瞑る。



「ヤラマショウネギス大国」第1王子 アレックス(5) 永眠。



ここは…

ここが理想の転生先だ!

のんびりできそうなところ。

決めた!ここで暮らす!絶対、もう転生しない!

まあもう転生キットないんだけどね。

ボタンを押す。

「ここで楽しく暮らそー!」

大きな声で言った。

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