春夏秋冬
紗織《さおり》
春夏秋冬
新しい出会いは、本人も気が付かないうちに、他の別れを生み出している事もあるのですね・・・
春の女神は、美しい。
花が咲き誇る庭園で、ハープを奏でながら、春の訪れを祝う歌を歌っていた。
その歌声に惹かれて庭園にやってきたのは、夏の青年。
まだ少年のあどけなさを残しつつ、父から譲られた夏の王位を継いたばかり。
就任の挨拶に訪れた春の宮殿で、青年は春の女神に出会ってしまった。
そして夏の青年は、春の女神に恋をした。
燃えるような思いを抱きつつ、自分の周りに夏の暑さを広げていった。
秋の乙女は悲しんだ。
幼馴染の夏の青年が、春の女神の歌声の虜になった姿を見て。
秋の乙女は、夏の青年の後ろ姿を見つめていた。
夏の青年の心が、自分から離れて行ってしまうのを感じながら・・・
彼女が悲しみのため息をつくと、秋の乙女の周りは、その冷たい風に吹かれて葉の色を変え、やがて散っていった。
秋の乙女の悲しい横顔を見て、守ってあげたいと思ったのは、冬将軍。
冬将軍は、自分の心身を鍛えていたので強靭な心を持っていた。
それ故に、自分には無い傷ついた姿の秋の乙女の事を、誰よりも心配していたのだった。
秋の乙女のため息で散ってしまった葉を隠す為に、彼は自分のマントをサッと振った。
冬将軍のマントからは、美しい雪が舞った。
こうして冬将軍は、辺り一面を雪景色に変えていった。
冬将軍のたくましい姿に、心を奪われたのが春の女神。
強靭な肉体を持つ冬将軍を思い浮かべるだけで、春の女神は胸がドキドキとしていた。
季節の移り変わりは、片思い。
前の季節に思いを寄せる次の季節が、その後ろ姿を追いかけているのです。
追いかけて、追いかけて、季節はグルグルと回っているのです。
春夏秋冬 紗織《さおり》 @SaoriH
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