第7話 【元魔王の雑談部屋】

 うむ、ネットというのは面白いのである。幼い頃から日本語を勉強した甲斐があったというものだ。


 色々と情報は得れるし、web小説というのを読み放題な上に掲示板というのもある。


 特に最近、興味が惹かれているのが掲示板だ。


 色々と意見交換も出来るし、アドバイスもしてもらえるという優れ物である。


 我も掲示板でスレ立てしようと思う。


 顔は見えなくとも、これであれば怖がられる事もない。それに友が出来るやもしれん。


 それに何事も挑戦である。


 さて、このボタンを押して──


 題名は【元魔王の雑談部屋】にしておこう。


 説明文は必要であろうな……魔王時代に日本から来た勇者に聞いた話では異世界にいるとか書いても誰も信じてくれぬ上に馬鹿にされてしまうと言っていた気がする。


 なので──


『スレ主の言う事は真実なので、そのつもりで返事を願う』


 ──よし、これで良いであろう。


 このまま初コメントであるッ!



 1:元魔王

 我は元魔王である


 2:黄昏のニート

 はは〜(平伏)


 3:迷える暇人

 魔王じゃなくて、元魔王なんだw


 4:名無しの勇者

 ふっ、中々の威圧だな! 俺は勇者だ! 討伐してやろうッ!


(おぉ、早速反応が返ってきた!? これは期待出来そうではないか! 日本人というのは優しいのだな)


 5:元魔王

 返事、感謝する。実は悩みがあってな……


 6:迷える暇人

 ふむふむ、迷える元魔王よ。答えるが良い


 7:黄昏のニート

 ふっ、俺の出番か。伊達に家でこもってないぜ? 知識だけは豊富だ! 任せろッ!


 8:名無しの勇者

 そんで、悩みって?


(けっこう親切な奴らだな……さて、どう書いたら良いものか……簡潔に書くか……)


 9:元魔王

 気が付けばweb小説の世界にこのネット検索という能力と呪い付きで転生させられたのだ。お陰で大変苦労しておるのだ


 10:黄昏のニート

 ふむふむ、呪いって?


 11:迷える暇人

 >>10 だな。それ気になるわ


 12:名無しの勇者

 傾聴


 13:元魔王

 うむ、神々に能力を1/100にさせられて、嫌われる呪いを受けた。その対価にネット検索という能力を貰ったのだ。それでここに書き込んでおる


 14:迷える暇人

 役に立たない能力貰ったな……


 15:黄昏のニート

 >>14 いや、案外チートかもしれんぞ?


 16:名無しの勇者

 web小説の世界と書いていたが、それの題名は?


 17:元魔王

 ネット検索はこうやって皆の意見が貰えるから便利である。それに原作も読めるから攻略しやすいぞ?

 確か『勇者に憧れた結果』とかいう奴だな


 18:黄昏のニート

 あの駄作か……何故かランキングから落ちない、わけのわからん作品だな


 19:迷える暇人

 して、元魔王は誰に転生したのだ?


 20:名無しの勇者

 王太子か? それとも脇役か?


(やはり有名な作品なのだな)


 21:元魔王

 アークだ


 22:黄昏のニート

 え? 不遇キャラの1人じゃん……最悪じゃね?


 23:迷える暇人

 >>22 いや、スレ主は元魔王だ。神々が能力を1/100で転生させなければ調和が取れないという事は弱体化してても強いはず。きっとフラグはへし折る。なんせ元魔王だからな


(迷える暇人……こやつわかっておるな)


 24:名無しの勇者

 アークか……破滅確定だな。俺がそちらに行ければいいのだが……


 25:元魔王

 まだ、物語が始まる前の段階なのだが、ソアラを助けたぞ?


 26:迷える暇人

 詳しく


 27:黄昏のニート

 何があった?!


 28:名無しの勇者

 ソアラは悲惨な末路の1人だったはずだからな……それで何があった?


 29:元魔王

 簡単言うと、傷を治した


 30:名無しの勇者

 よくやった。褒めてやる。さすが元魔王だ。これでソアラの破滅フラグは回避したも同然だな


 31:黄昏のニート

 マジかよ。さすが元魔王。いや、『さすまお』だな!


 32:迷える暇人

 これからも破滅フラグを折りまくってくれよ!


 33:元魔王

 うむ。我はこれからも物語が始まるまでに破滅フラグをへし折るのである。というか本題に入っていいか?


 34:黄昏のニート

 あれ? 本題まだだったんだ。どうぞ


 35:迷える暇人

 けっこう大事な話っぽかったけど、本題じゃなかったんだ


 36:名無しの勇者

 言ってみろ


 37:元魔王

 呪いのせいで友がおらんのだ……


 38:名無しの勇者

 あー、呪いの『畏怖』は確か恐怖感、嫌悪感、不快感を与えるんだったな。成長補正あるしこれからも頑張れ

 それと俺が友になろう。勇者ではあるが、元魔王であっても俺は気にはせん


 39:黄昏のニート

 まぁ、ネットだけの付き合いだけど、良ければ


 40:迷える暇人

 寂しくなったらまたここへ来い


(我、友ゲットであるッ!)


 41:元魔王

 ありがとう。我、感涙!

 あ、書き忘れてたけどソアラ助けたら婚約者になったのである


 42:黄昏のニート

 破滅しろ


 43:迷える暇人

 >>42 同意


 44:名無しの勇者

 俺がそっちに行けないのが悔やまれる。行ければ俺の押し入れに眠ってる聖剣をぶっ刺すんだがな……


(日本にも聖剣があるのか……)


 45:元魔王

 でも、凄く病んでてな……闇が深い気がするのだ。そのうち刺される気が……。これが手紙の内容なのだが──



 我は一通の手紙の一部を書き込む。


 46:名無しの勇者

 ……そういえばかなり病んでるキャラだったな。


 47:迷える暇人

 ご愁傷様


 48:黄昏のニート

 許してやるよ……リアルのヤンデレとか怖すぎて同情しかねぇよ……


(やはり、ヤンデレという奴なのか……)


 48:元魔王

 うむ、さすがの我も身の危険を感じるのである。

 またここでアドバイスを求めて良いか?


 49:黄昏のニート

 うむ


 50:迷える暇人

 俺達はもう友だろう? 遠慮するな


 51:名無しの勇者

 いつでも来い


 52:元魔王

 ありがとう!

 あ、そういえば人って殺しても問題ないか? 任務で殺す事もありそうなんだが


 53:迷える暇人

 いや、人殺しはダメだろ──って、異世界だったな


 54:黄昏のニート

 殺しのライセンスがあれば良き


 55:名無しの勇者

 異世界だろ? 犯罪者みたいな奴はヤれ。弱き者を助けろ。それが国防を担うアークの務めだったはずだ


 56:元魔王

 うむ、そうする事にする

 今日は助かったのである。ミラが起こしに来そうなのでこれにて!

 また来る


 57:黄昏のニート

 ミラと言えば妹だな。さらばだ友よ


 58:迷える暇人

 また会おう


 59:名無しの勇者

 困ればいつでも来い。我らは



 我はネットの画面を閉じる。


 最後の言葉が気になるな……か……ありがたい事ではあるだが──


 こいつら仕事や学校はどうしておるのだ?



「お兄ちゃん〜朝だよ〜。あれ何か嬉しそうだね?」


「うむ、婚約者の次は友が出来た」


「……お兄ちゃん、薬はやったらダメなのですよ?」


 ……誰だ、我が妹にこんな事を教えた奴は……。



 無性に普通に生活を送りたくなったのである……。


 その為にも我に関係しそうな破滅フラグはへし折る為に訓練するか……それに日本の知識を使って武器や魔道具を作るのも悪くないな。





 ──元魔王がログアウトした後、別スレにて──



 1:迷える暇人

 なぁ、『元魔王の雑談部屋』の奴って本当だと思うか?


 2:黄昏のニート

 一瞬、web小説のネタでも書いてるのかと思ったけど、やけに設定がこってね? それか頭がイカれてる?


 3:名無しの勇者

 確かに。

 元魔王が本当に転生しているのであればと仮定するとハードモードではあるがな


 4:迷える暇人

 とりあえず、しばらく暇はしなさそうだな。


 5:黄昏のニート

 だな。また来たらアドバイスでもしやろうぜ


 6:名無しの勇者

 うむ、引き篭もりの我らにも何か出来る事はあるやもしれんしな


 7:導き手

 何か面白い事でもあったの?


 8:黄昏のニート

 おっ、どこ行ってたんだよ。あったあった


 9:迷える暇人

【元魔王の雑談部屋】を探して見てこい。それでわかる


 10:名無しの勇者

 うむ、お前も次回来ると良い


 11:導き手

 見てきた……これマジなの? いくら何でも話がぶっ飛びすぎ……お前ら役者だな……


 12:迷える暇人

 スレ主が『スレ主の言う事は真実なので、そのつもりで返事を願う』と書いているからな


 13:黄昏のニート

 けっこう必死さは伝わってきたぞ?


 14:名無しの勇者

 そうだな。もし本当であるなら、破滅しかないからな。何より友が欲しいというのは本当のような気がしたな


 15:導き手

 なら、次は私も参加するか……困ってる人がいればせめてネット内でも助ける──それが私達の役目だ!

 元魔王とやらが真実と言うのであればとことん付き合ってやろう!


 16:迷える暇人

 だな!


 17:黄昏のニート

 同意


 18:名無しの勇者

 ならばここに『元魔王の四天王』を結成する!



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