転生したら破滅フラグしかない悪役貴族だったので、へし折ったらデレたキャラ達に好かれた件について

トロ

第1話

 眩しい──


 次第に目が光に慣れていくと両親らしき者と、使用人らしき者達が数人いた。


 どうやらに成功したようだ。


 我の前世は魔王だ。


 と言っても、この世界の魔王ではない。


 ──だ。


 とても威厳のある魔王であった。


 なにせ──


 邪魔する者を滅ぼして世界を統一した後は1000年程統治したのだから。


 我は最強だった。


 魔眼も全て習得し、魔術と武術は極めたからな。


 神々でさえ、我には勝てなかった。


 ただ、そんな我にも悩みがあった。


 誰もが崇め、恐れ──に接してくれぬ事だ。


 恋人は愚か、友すら出来なかった。部下はたくさんいたが孤独だった。


 というか、結婚ぐらいしたかったのが正直な気持ちではある。


 奴隷ハーレムも考えたが、怖がる姿を見ると冷めてしまった。


 ただ、仕事に忙殺され、退屈に時間が過ぎ去っていく中、ふと妙案を思い付き、そのまま行動した。



 我は『神域』に乗り込み、神々に提案したのだ。


 この世界ではなく、他の世界に転生させろと。


 誰も我を知らなければ友ぐらいは出来るはずだ。


 転生自体は魔術で出来ない事はないが、異世界に渡るのは非常に困難だった。何故なら神々が最大戦力で揃って邪魔をするからだ。


 こんな状態では異世界に渡ったうえに転生するのは非現実的であった。



 そして、話し合った結果──神々は我に条件を提示した。


 それは──


『能力の制限』


 ──だった。


 これは我の能力を約1/100にするというものだった。

 これは我が歯向かう事が出来なくなるであろう事を計算しての提示だと一瞬で理解した。


 だが、馬鹿みたいな仕事量と退屈な日常から離れる事が出来たうえに、友や恋人が出来るのであれば問題なかろうと了承した。


 そして、こちらからも条件を提示した。


 それは──


『お前らの召喚した異世界人の知識をよこせ』


 ──と。


 命乞いをした勇者には慈悲を与えて生かしたのだが、その知識が我の知らない事ばかりで非常に興味深い物だった。


 退屈な人生の中で興味が出た事の一つであろう。


 こちらの条件は簡単に飲まれ、神々との会合は終わった。


 心残りと言えば、長年我に付き従ってくれた部下ぐらいだろう。

 全員優秀な奴らだった。別れの際は全員が涙を流してくれた。


 そして我は転生した。



 まぁ、そんな訳で、現在我は人族の赤子で誕生したばかりだ。


 人族であれば寿命も短いし、そこまで強くなれん。


 神々の意図が透けて見える。


 だが、それでも構わなかった。


 今世では前世で出来なかった──友を作ったり、恋人を作りたいと思っている。



 しかし──


 産まれた直後なのだが、何故か周りの様子がおかしい。


 メイドや執事がいる事から貴族や裕福な家系に産まれた事は理解したが、両親を含め──明らかに我を見てをしている。


「産まれたばかりだというのに凄まじい威圧だな……それと嫌悪感、不快感が酷い」


 1人の男性が我をマジマジと見てくる。おそらく父親であろう。


 それよりも、嫌悪感? 赤子は可愛い物だと認識しているが?


「貴方……この子はいったい……」


 我を産んだ母親が不安そうに父親に聞いている。


「調べてみよう……『鑑定』──スキルは何も無しか……こ、これは……呪い……だと? しかも『神々の足枷』!? ──この子に国防を担うのは無理かもしれんな……」


 国防という言葉から貴族であり、国を守る重要なポジションである事が予測出来る。


 気になるのは呪いという言葉だ。『神々の足枷』? 確かに神々から制限を受けてはいるが呪いなのか?



 我はその後、そのまま他の部屋に運ばれたが──




 ──とても、暇だ。


 とりあえず、この世界でも我の力が使えるか確認しておく必要があるだろう。


 あの様子では捨てられてもおかしくはない。


 勇者曰く、故郷のラノベとやらには追放される物語が流行っておったそうだし、我もそうなるかもしれん。


 とりあえず魔術を使えるか試すか。


 まずは魔力が使えるか──だな。


 体内の魔力を動かしてみると微弱ではあるが──


 ──問題なく使える。


 そのまま今度は被害の出ない『点灯』の術式を展開すると、あっさり魔術は発動し、一つの光球が出来上がる。



 魔術が使えるのであれば捨てられても生きては行けるか……。


 他も確かめるか……だが、この体では武術は出来んからな……。


 他に出来る事は──


 そういえばが使えたな。


 我は『鑑定眼』を使えるかどうか試すと簡単に使えた。


 そして、そのまま自分を鑑定すると──


 名前:アーク・レイモンド

 スキル:無し

 異能:『魔王の心得』『魔眼』『ネット検索(日本限定)』

 呪い:『神々の足枷』『畏怖』


 ──と表情される。


 名前はアークか。


 前世では異能や祝福ギフトがあったが、この世界ではスキルというのものがあるようだ。


 父親は鑑定眼を持っているのかと思ったが、目の色は変わらなかった──つまり鑑定眼と類似するスキルを使用したのであろう。


 詳しく見ていくと──


 異能と表示された『魔王の心得』はどうやら我の扱える武術や魔術などが統合されているようだった。もっと種類あったはずなんだがな……。


『ネット検索(日本限定)』はこちらの条件で足された物だろう。確か勇者は日本という国から来たと言っていたな。


 しかし、知識を要望したはずなのにネット検索とはなんだ? まぁ、良い後で調べるか。


 後は──か……父親が言っていた事からは見えていた事が予想出来る。そうでなければ異能に触れないのはおかしいからな。



『神々の足枷』はどうやら神々が言ってた能力値の制限のようだ。


 気になるのは『畏怖』だ。

 詳細を表示させる。


『畏怖』:全ての者に対して嫌悪感を抱かれる。身体能力の成長に大幅補正がかかるが、スキルは習得出来ない。


 …………なるほど、これのせいで我は恐怖を抱かれていたわけか……。


 ふむ、これは神々からの嫌がらせか──


 もしくは──


 異世界への転生→『神々の足枷』

『ネット検索(日本限定)』→『畏怖』


 という交換条件のように思わないでもないが。


 どちらにせよ、これでは友も恋人も出来ないではないか……前世よりも境遇が酷いんだが?


 いつか神と出会ったらボコる事にしよう。


 この『畏怖』がどれぐらいの効果なのか確かめる必要があるな。


 せめて『神々の足枷』の効果を『畏怖』の成長補正で掻き消してくれれば良いが……。


 それよりも、赤子は暇だな……。


 何か暇潰しになるような物は──


『ネット検索(日本限定)』を使おうと意識すると目の前に画面が出現した。


 真ん中部分にの文字があるな。


 確か、日本という国には面白い物語がたくさんあると聞いている。


 それでも見ながら時間を潰すか……。


 確か勇者が好んで読んでいた物語はラノベとかいう奴だったな。無料で読めるのはweb小説と聞いている。


 検索画面に『web小説』と入力すると物語がずらっと羅列される。


 ランキングというのがあるか……ん?


『勇者に憧れた結果』


 ふむ、少し気になるな。他は長文タイトルなのにこれだけ短いタイトルなのも目を引く。


 しばらくこれでも読むか……。



 ────


 ────────


 ────────────


 物語を読み終わる──


 ふむ、勇者が魔王を倒すという普通の王道展開になるかと思われたが、国は滅びバットエンドを迎えるという読者を不快にさせる物語だったのである。


 こんな鬱展開しかない物語もあるのだな……読者は病んでる者が多いのだろうか?


 特にサイドストーリーは一癖も二癖もある結末であったな。


 やけにリアリティがある内容だ。


 しかし……脇役の踏み台である者の名前が我とだったのが引っかかる……。


 我と同じ名前の癖に散々虐められて不遇な人生を送り、最後は殺されるという不愉快極まりない内容であった。


 しかし、この者の詳細に──


 国の守護者の家系に産まれたアーク・レイモンドは人々から『畏怖』される呪いにより嫌われると、記載があったが──


 これ今の我と境遇同じでは?


 父親はを担っていると言っていた。つまり国を守る役割を担っているという事だろう。



 ……とりあえず情報を集めるか──






────

5話か6話まで読めば、刺さる人には刺さります。

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