最終話 これってハッピーエンドかもしれない

 皆さんこんにちは。冬休暇になり久々の実家でやたらお父様をうざく感じているアイリです。


「アイリぃぃぃ!お父様を嫌わないでおくれぇぇぇぇっ!」


 顔を見るなり土下座で足元にすがり付いてきて泣き叫んでる父親の姿にうざさMAXである。


「あの時はしょうがなかったんだ!あんな双子王子どもよりはマシだと思ってしまったんだ!異国は権力を持ってるし3年我慢すれば婚約止めれるから許しておくれぇぇぇっ!」


「おとーさま、うざいです」


 ちなみに泣きわめき土下座するお父様にきついひと言を浴びせながらグリグリと踏みつけているのは弟のウィリーである。


「セバスちゃん!お姉さまをすてちゃいやです」


 ウィリーはセバスチャンの服の裾を引っ張りながら半泣きで訴えているが、その前にウィリーがどこでそんな言葉を覚えたのかがお姉ちゃんは気になるんだけど。


「大丈夫ですよ、ウィリー様。あの犬をちゃんと躾いたしますので」


「わんちゃんをぎゃふんしてね!さんねんしたらぽいしておいかえしてね!」


「あら、ウィリー。セバスチャンに勝てるような男なんていないわよ」


「そうですね、おかーさま!」


「ちょっとそれ、本人を目の前にしてする会話なの?!もう少しオブラートに包もうよ!」


 我が家にニコラスが挨拶に来てましたが、ルーベンス家族は自由です。ニコラスはみんなの会話を聞いて脱力していた。


「我が家はセバスチャン至上主義なの」


 それでもニコラスのおかげでルーちゃんの事もなんとかなったし、大国からの嫌がらせも無くなったのでみんなニコラスに感謝はしている。

 だからちゃんともてなしているのだが……。


「わんちゃん、お姉さまを助けてくれてありがとうです!でもけっこんはゆるしませぇん!」


 ということなのだ。


「完全に弟くんに嫌われた……」


「ウィリーは特にセバスチャンが大好きなのよ」


 とりあえず両親にルーちゃんのことが無事解決したこと、ニコラスが人には言えないことをして助けてくれたことも報告した。


「アイリとルチアちゃんを助けてくれてありがとう!でも娘はやらぁん!」


「婚約了承したのに?!」


「絶対3年立ったら婚約破棄させてやるぅ!!それまで指一本触れさせんぞぉぉぉ!!」


 お父様とニコラスのそんな会話が延々と続いていた。一応とても感謝してるから追い出さないでいるらしい。


「通訳すると、ニコラス王子には心から感謝しているので、とりあえず友人としてゆっくりなさって下さい。と言っているわ」


「どこが?!」


 追い出してないからよ。としか言いようがない。



 さらに後日、ルーちゃんの家に遊びに行ったらルーちゃんの両親に土下座の勢いで謝られて必死に止めるはめになった。


「我が一族の女神であるアイリちゃんに、理由も話せず酷いことをしてしまい……!」


 ルーちゃんの両親も真実を知ってはいたがニコラスから口止めされていたらしくずっと耐え忍んでいたようだ。


「どんな償いをしても償いきれない!」


 とおじ様が号泣しだした。


「じゃあ、ひとつお願いがあるんですけど……」


 私がちょっとわがままな提案をすると、おじ様とおば様は「そんなことでよければ」と喜んで了承してくれた。









 そしてまたもやあっという間に時間は過ぎ、すぐ春になった。やはりセバスチャンとの仲はまったく進展していない。ルーちゃんが色々と協力しようとはしてくれが、ニコラスとの仮婚約がある以上あからさまな事ができないでいる。

 ……もうすぐセバスチャンとの契約が終わっちゃうのにぃ!ニコラスとの婚約を解消出来るまでの間に先にセバスチャンがいなくなってしまうかもしれない非常事態である。


「1年が終わっちゃったね」


 私とセバスチャンは2人で海辺にいた。ここはルーちゃんのプライベートビーチだ。

 あの時おじ様たちにお願いして1日貸してもらったのだ。もちろんルーちゃん本人も喜んで貸してくれた。セバスチャンと初デートした海辺に、また2人で来たかったから。


 え?ニコラスは邪魔しなかったのかって?最終手段で人魚とお散歩に行ってもらったよ?あんまりこの手段を使うと水槽を見るだけで警戒されそうだから本当に最終手段なのである。


「そうですね……本当にあっという間でした」


 あの、もう少しでファーストキスだったかもしれない場所で私はセバスチャンの目を見た。


「私の気持ちはあの時のままだけど、セバスチャン……いえ、吸血鬼様はどうですか?」


 一瞬風が吹き、セバスチャンの姿が吸血鬼様の姿へと変わった。紅い瞳が私を見つめる。


『……そうだな、やはりペットになる気も夫になる気もない』


 無表情でそう告げる吸血鬼様。なんだか悲しくなって私は吸血鬼様から目をそらした。


「そうですか……」


『だが』


 しかし吸血鬼様はそう言って、私の頬を手のひらで包むと視線を時分へと剥けさせたのだ。


『このまま離れる気もなくなった』


 予想外の言葉に私は目を見開いてしまう。


『ナイトはアイリから離れるのは嫌だと言っているし、人魚も犬もアイリの側から離れないのに、俺様だけ離れるなんてそんなこと許されるはずがないだろう。

 ……だから、契約は延長だ』


 そして、吸血鬼様の顔が近づいたかと思うとそっと触れるだけの優しいキスをされた。


「……っ!」


 顔が離れ、私が見たのは、昔スチルで見た優しい愛しい眼差しで微笑む吸血鬼様の姿。ずっと見たいと思ってた姿だった。


『執事兼恋人などいかがでしょうか?アイリ様』


 吸血鬼様の姿のまま執事のように片膝をつき、私の手をとったのだ。


「よ、よろしくお願いします……っ!」


 私は震える声でやっと返事をしたがファーストキスの夢とスチルの夢が叶ったのと、これからも一緒にいてもらえるという喜びとで興奮し過ぎて倒れてしまった。(ギリギリ鼻血は出していない)




 ***



『よく倒れますね……」


 私は瞬時にセバスチャンの姿に戻ると、砂の上に倒れる前にアイリ様を横抱きにして(極上のでれでれ顔で)気絶しているアイリ様々の額に唇を落とします。


「3年後、あの犬から奪い取ります。覚悟して下さいね、アイリ様?」


 


 不敵に微笑んだ執事は上機嫌で歩き出したのだった。




 最愛の推しである吸血鬼ラスボスを剥製にもペットにも夫にも出来なかったが、ハッピーエンドになったヒロインはやっぱりラスボスがお好きなのでした。




 終わり




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【完結】ヒロインはラスボスがお好き~ラスボス愛を貫くためにそのフラグへし折ります~ As-me.com @As-me

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