第26話 口説かれたってお断り
全生徒交流会ダンスパーティーとは、この学園で学ぶ全生徒が交流を深めて仲良くしましょう。的なものだ。
学生のパーティーなので基本は制服着用となっているが、ほとんどの生徒がドレスやタキシードを着る。制服のままでは自分の家はドレスを買うことも出来ない貧乏です。と言ってるようなものだと解釈されてしまうそうだ。
学園が始まった当初はみんな制服だったらしいが誰かがドレスを着て自慢しだしたのが始まりでだんだんと変わっていったらしい。歴史って恐ろしい。
あと顔出しNGの人は仮面着用も許されている。つまり王子だとわかっていても仮面をつけてれば誰かわからないただの生徒として接しても大丈夫という暗黙の了解的な項目である。全生徒対象と言っても王族相手じゃ気を使うし、パーティーくらい王子も気楽に楽しむための配慮のようだ。
それとパートナーは必ず異性であること。パーティーの前日までに相手に申し込んで了承を得ること。という決まりもある。
パートナーがいない場合のみ自身の執事や侍女を連れてもよいがその場合は他の生徒に自分は誰にも誘われなかったと宣言しているようなものなので恥ずかしいことらしい。
そんなダンスパーティーまで数日を残したある日、なんとなく予想はしていたが私は呼び出しを受けていた。
校舎の裏の人目の無い木陰を指定されてそこに行くと、ドS王子が待っていたのだが……。
「待っていたよ、俺のアイリ。ここなら邪魔もいない。さぁ、君の涙を見せておくれ。ダンスのパートナーはもちろん俺だろう?」
木に寄りかかりなんかポーズを決めていて、やっぱり気持ち悪かった。
「ごめんなさい」
「なぜだ、俺をパートナーにしとかないとまたあの筋肉に迫られるぞ?」
それも嫌だが、こっちも嫌だ。
「私より、婚約者を誘いなさいよ……」
ルーちゃんと言う婚約者がいるのに、堂々と他の女の子を誘うその根性がまず嫌だ。
「ルチアなんか関係ない。俺はアイリを愛しているんだ」
そういえば、ゲームでもこんな場面あったわ。親の決めた婚約者なんかより、君を愛してるって断言しちゃう俺って格好いいだろ?みたいな感じで言ってきて、ヒロインが感激しちゃうシーン。
しかし今の私はドS王子の攻略もしてないし、好感度もまったく上げてないのに、なぜこんなに絡まれるのかさっぱりわからない。
「ハッキリ言わせていただければ、私は第1王子の事などなんとも思っていません」
むしろ嫌いです。と含みを持たせて断言したのだが、ドS王子はニヤリと笑うと、突然私に壁ドンをかましてきたのだ。以前セバスチャンに壁ドンされた時は萌えに萌えて悶えたが、このドS王子の壁ドンは不快でしかなかった。
「俺を焦らしてから泣かされたいってことだろう?悪い子だ」
そして私の顎をつまもうと指を伸ばした。が、
「はい、そこまでです」
空からセバスチャンが降ってきてドS王子を踏み潰した。ドS王子は地面にちょっと埋まっていたが、ピクピク痙攣してるのでたぶん生きているはずだ。
「口説きタイム5分が終了しました。あと壁ドンもかなりアウトなのに、触ろうとしたのでお仕置き追加です。
ルチア様どうぞ」
セバスチャンがそう言うと反対側の木陰からにっこりルーちゃんが鞭を持って現れた。
「王子様?指定の位置からアイリちゃんに近づかない、決して触らない、断られたら即諦める。この約束を守るから5分だけアイリちゃんをパートナーに誘わせてくれとあなたがおっしゃられたのにすべて違反いたしましたわね?
……お仕置きの覚悟はよろしくて?」
笑顔のルーちゃんの後ろに般若が見えた気がしたのは気のせいじゃないと思う。
なんと双子王子は、自分たちの婚約者候補であるルーちゃん本人直に「アイリをパートナーに誘いたいからチャンスをください!」とお願いしてきたのだそうだ。ルーちゃんも呆れ果てセバスチャンに相談してきた結果、先程の条件でならと口説きタイムがもうけられたのだが……。
「自分からした約束すら守れないこのゴミ屑王子!このまま花壇の肥料におなりなさい!!」
「ぎゃ――――っ!」
※自主規制
ドS王子は花壇に生埋めになりました。
このあとドM王子も口説きタイムに挑戦したが、失敗してお仕置き追加されたことは言うまでもない。
さらには色黒王子にも呼び出しをされたのだが(あんなに木っ端微塵にしたはずなのになぜまだ口説きに来るのか意味がわからない)、セバスチャンと一緒に現れた私を見るなり真っ赤な顔で前屈みになった。それを見たセバスチャンが私の肩に触れながら、
「まだ刺激が足りませんか?」
と笑顔で言うと、色黒王子は訳のわからないことを叫びながら前屈みで器用に走って逃げていったのだ。
「おっ、大人――――§¢#∞$@¢っ?!」
うん、気持ち悪い。とりあえずこれでダンスパーティーのイベントフラグは今度こそ完全にへし折った!
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