第5話 ゲームの強制力は侮れない
とっもだっちひゃっくにんでーきるかなぁー
誰か褒めてください!私はこの3ヶ月頑張りました!
出来れば同い年またはひとつ違いで、将来一緒に学園(この世界では15歳になったら子供は学園に通わなくてはいけない法律がある)に通えるようになりたいな。と領地の端から端まで出会いを求めて歩き回り、しまいには一軒づつお宅訪問までしましたよ!突然領主の1人娘(美少女)がやって来て同い年の子供はいねーかーとまるでナマハゲ(必死)のように訪ねていく様子はかなりシュールだったらしく、領地の皆様はどん引きでした。
でもどん引きしながらも丁寧に教えてくれました。みんな優しいね!そして、私は領地にある家を全て聞いて回ったのです!
その結果はぁーーーー
はい、ぼっち確定。
まず、領地に子供があまりいなかった。そして数える程しかいない子供たちのその7割が赤ちゃん。産まれたてホヤホヤから1歳くらいのバブバブベイビーズ。うん、若い夫婦が多かったからね。
赤ちゃんかわいいよ、バブーキャッキャッだったよ。「大きくなったらぜひ遊んであげて下さいませね」とか社交辞令言われたよ。さすがにバブーキャッキャッとお友達になって一緒に学園に…とは無理だ。
でもあんまり可愛かったから、いないいないばーとかして遊んできた。めちゃくちゃ可愛かったよ。もう胸きゅんだよ。早く将来産まれるはずの弟(まだ数年先)産まれないかなーとか思ったよ。
そして残り3割。大きかったよ。10歳越える子供バカリズムだったからすぐ学園に行っちゃうし、私が学園に行く頃にはとっくに卒業して大人になってるだろうよ。学園に行くのは3年間だし、ほとんどの人が卒業後から就職して町(王様の城があるところ)で暮らすから結局領地には小さい子供かお年寄りが残るのだ。
つまり、3ヶ月かけて、領地に友達ぜろ。このままではぼっち確定。
「く……っ!」
これはもしやゲームの強制力というやつなのか?!なにがなんでもひとりぼっちのかわいそうな美少女にしたいわけかコノヤロー!
ちなみに両親は毎朝「友達を作りに行ってきます!」と外に出て行き、夕方にしょんぼりして帰宅する我が子を複雑な顔で見守っていた。
ある時お母様がしょんぼり(内心では次の計画をどうするか悩んでいる)する私にこう言った。
「あのね、町の近くにお母様のお気に入りの秘密の場所があるのよ。一緒に行ってみましょう。きっと元気が出るわ」
せっかく母が娘を心配して言ってくれてるのだし、ポジティブにいこう!作戦の為にも笑顔で了承する。「楽しみですぅ!」とキャッキャッウフフする娘を見て、同じ髪色に青い瞳の子持ちには見えない美しい母がそれはもう可憐に微笑んだ。
その秘密の場所とは領地と町の境目にあり、子供の足でも歩いていこうと思えば歩いていける。
秘密の……花園。
そう、あの、オープニングムービーに登場した花園だったのだ。
私は思わず立ち尽くす。そこは母親のお気に入りの秘密の場所で、お母様は子供の頃1人で遊んでいた時にここでお父様と出会ったのだそうだ。
「この花園は妖精に愛されてるって噂があるくらいいつもとても美しいのよ。アイリにも素敵な出会いがあるかもよ?」
ええ、お母様。この花園は妖精どころか妖精王に監視されております。マジでストーカーですよ。これが、ゲームの強制力か……!
母は「ここに通えば運命の出会いがあるかもっ」なんて、乙女チックにウィンクする。オープニングムービーで私がこの花園に妖精王に目をつけられる程に通っていた理由が今改めてわかった。なぜ王城がある町としがない領地の境目にこんな場所があるのか。
一本道を曲がっただけで森になるとかおかしいだろうがよ!製作者出てこいやっ!しかし母の優しさを無下にも出来ず、母が木陰で休んでいる間に探検することにした。
出来ればここには近寄りたく無かったがそういうわけにもいかなくなったので、とりあえずこの戦場を捜索することにしたのだ。隠れ場所とか、罠を仕掛けられればいざというときに役立つかもしれないからね!王子がどのへんから湧いて出るのかわかれば落とし穴(出来ればもう出てこられなくなるくらい深いの)を仕掛けて目が合う前に埋めるのに!
そうやってキョロキョロしてると、なんと私はさっそく運命の出会いをしてしまった。
「……っ」
樫木だろうか、その木陰に小さな人影。その人物は手のひらにリスを乗せ、木の実をあげていた。金色の長い髪は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、紫色の瞳は宝石のように美しい。その微笑みはまるで地上の天使!
左眼の下にある泣き黒子が幼いながらもキュートセクシー!この子、見覚えがある。そうだ、この子は……!
私がじっと見ているとその子がはっと気づき、慌てて逃げようとする。
「ま、待って!驚かしてごめんなさい!私はアイリって言うの!あなたがとっても素敵だったからつい見とれててっ」
その子はワタワタといいわけをする私を見て足を止め、クスッと笑った。(か、可愛い~っ!)すると私に向き直り、それはもう天使の微笑みでこう言ったのだ。
「わたくしの方こそ申し訳ありません。わたくしはルチアと申します」
ルチア。ルチア・ノアベルト。
そう、この天使のような女の子はヒロインのライバル。ツンデレ悪役令嬢なのだ!
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