お家で焼き鳥パーティー
郷野すみれ
焼き鳥
「今日は焼き鳥パーティーだ!」
「買いすぎじゃない?」
二人で焼き鳥専門店で大量に購入した焼き鳥を見て、拓実に突っ込まれる。
「そんなことないよ? 案外食べられるんだから。呑みながら食べるよー?」
私はパックから焼き鳥を出して、オーブントースターと魚焼きグリルをフル活用して、温め直す。電子レンジでもいいのだが、気分的な問題だ。あと、大量なのでいっぺんに温められない。
焼き鳥は作れないこともないのだが、手間を考えると買ってくる方がいい。
表面がプツプツとわき、肉汁がぽたりと垂れる。
「温まったかな。良さそう。準備はいい?」
「飲み物準備できたよ」
私は大皿に焼き鳥を並べ、ダイニングに持っていく。
「じゃあ、かんぱーい!」
それぞれのグラスをコツンと合わせて乾杯する。
「んー、ぷはー。美味しい!」
「それ、ビールじゃないんだよなあ……」
「何か言った?」
拓実はビールを飲んでいるが、お酒に弱い私は弱めのチューハイだ。一缶開けたら、オレンジジュースを飲む。
もも、むね、ねぎま、かわ、つくねなどの種類をたくさんと、塩とタレがあるものは両方買ってきたので、かなりの本数になる。
「うん、うまい」
「ふわあ……。口の中で鶏さんが溢れてくる」
「それはそれでシュールな光景」
私は頬を膨らませる。
「比喩です!」
「わかってるよ」
拓実は笑って私の膨らんだ頬を突く。プシューと空気が抜けた。
「ねぎま食べないの?」
「ネギ嫌い」
「へえー、子供舌だね。おいしいのに」
私がさっきの仕返しにからかうと、ふと拓実は真面目な顔になった。一瞬の間。急に顔を近づけてきたので、思わず私はぎゅっと目を瞑る。
唇の端に舌の感触を感じた。
離れていったので、私は目を開ける。顔が熱い。ニヤッと笑っている拓実が目の前にいる。
「な、何……⁈」
「タレがついてたから取ったんだよ。これでも子供?」
「そういう意味じゃない!!! 酔ってる?」
「酔ってても酔ってなくてもこれくらいのことはするでしょ」
たしかに。妙に納得してしまった。通常運転だ、そうだった。
私は話を逸らすために焼き鳥の串に手を伸ばす。
「かわを食べようかな〜。かわってコラーゲンがたっぷりらしいよ」
「そんなの食べなくたって、美玲ちゃん肌綺麗なのに」
そう言って、頬をするりと撫でられた。
「甘いので、しょっぱい塩ダレを食べたい」
お家で焼き鳥パーティー 郷野すみれ @satono_sumire
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます