バーニングバード
高山小石
今度こそ……!
国王からの秘密の依頼を受け、俺たち盗賊三人組の『イチバンボシ』は長い間、あちこちの国を渡り歩いていた。
「やっとね」
「えぇ」
「今度こそ本物だ!」
「それ、毎回いってるわよね」
「そうでも思わないとやってられませんからね」
「わかってんなら、いちいちツッコむなよ」
不老不死を望む欲深な国王の指図通りに動くのはシャクだったが、労役から開放され、気の合う仲間との旅は楽しいモンだ。
信憑性の高い噂があると聞けば、西へ東へ。
ガセネタも多くて、いまだに本命へとたどり着くことが出来ないが、今度こそ!
「アタシは絶対カワイイ人魚だと思ってたんだけどなぁ」
「なかなか匂いが強烈な半魚人でしたよね。あんなものを最初に食べた人こそ勇者ですよ。僕は繊細な聖杯だとばかり」
「アレ高く売れて良かったじゃねぇか。普段づかいには華美過ぎるがなぁ」
「その割に、どうやって持ったらカッコイイか研究してたわよね」
「おまっ。ばらすなよっ」
俺たちが思っていたより不老不死は人気があるらしく、『人魚の肉を食べたら不老不死に』『聖杯を使うと望みが叶う』などなど。
噂自体も一筋縄ではいかない。
そんな噂のある場所におもむいては、ひとつひとつ確かめるのが俺たちだ。
で、今回の目的はといえば『火の鳥』だ。不死鳥と言われる火の鳥の羽が不老不死に効くらしい。
「それにしても生け捕りじゃなくて良かったよな」
「いくらなんでも、アタシたちにそこまで求めないでしょ」
「僕らは本職の冒険者じゃありませんからね」
「違いねぇ。さぁて、羽を探すぞ!」
俺たちゃ盗賊、ガッツリ戦えない。
強い魔物を倒した時に稀に現れるという報酬品や、魔物そのものなんて、望まれても叶えられない。
だからこの『火の鳥』とも戦わない。横からかすめ取るのだ。
ダベっていたのは、巣から火の鳥がいなくなるのを待っていたからで、今ようやく飛び立つ姿を確認できた。
入り組んだ岩場を、特徴的な羽が落ちてないか、あちこち見てまわる。
「ないわねぇ」
「ないですね」
「あ! ……これは」
俺たちは、なにかの拍子に、岩場にはさまったまま死んだらしい火の鳥を見つけた。
「かわいそう」
「せめて弔ってあげましょう」
「悪いが、羽はむしらせてくれよ」
俺たちは、火の鳥の死体を手にして、巣の近くから離れた、土のある場所まで戻った。
旅続きの間にすっかり手慣れた動作で羽をむしり、その間におこした火に死体を入れる。
そうしないと、不死者として蘇ることがあるからだ。
「いい匂いだな」
「アタシも思ってたけど言わなかったのに」
「一口くらい、いいですよね?」
俺たちは、たまらず、一口かじっていた。
「おいしい!」
「美味!」
「うめぇ!」
跡形もなく食べ尽くした俺たちが年を取らなくなったのに気づいたのは、それからずいぶん経ってからだった。
バーニングバード 高山小石 @takayama_koishi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます