万象眼ノ討滅士
せのしすい
第1話 自分語り
この世界には、神と言う超常の存在は勿論、妖魔,魔性,怪異に鬼や精霊,妖精や未確認の生命体、更にはこの星の外から来た存在も含め、世間一般の人達は知り得もしない者達が実在している。
当然、其れらに対処する専門の人達も古くから存在する。
古くは、魔法,魔術,呪術に法術,氣や念,超能力や異能に霊力等、言い方は色々あるが。それらの超常的な力を用いて、人々に害意を向ける存在に相対して来た。
所謂、退魔士と言う奴だ。退魔士と言う存在は、普通の人々の中から突然変異的に現れた超人だったり、人に友好的な神から力を授かったり、異種族との混血により生まれたりと、経緯は様々だが古くから人々を守って来た者達だ。
如何してそんな事を語っているのかと言うと。それは昨日私が、明日から中学生になるのを機に、討滅士としてデビューしたからだ。
討滅士とは、言い方は違うが退魔士の事だ。私の家では、退魔士活動をする一族の者は、古来より討滅士を名乗る事を義務付けられている。何故、退魔士では無く討滅士なのかは、一族の祖がそう定めたと言われているだけで、詳しい事を私は何も知らない。
とにかく
そうだった。まだ、私の名前を名乗っていなかったね。
私の名前は
髪の色は、日本人としては珍しくもない黒、女子では短い方かな。左目は濃い紫色の瞳、右目は紫色を帯びたハイライトが射す、金色の瞳のオッドアイと少し変わっているけど、瞳の色自体は今の日本人にもそれなりにいる色味だね。
身長は153cm、希望としては160cm欲しいと思ってるんだ。私は中一だからまだまだ伸びるはず。背が高いお父さんの血筋に期待します。
私のスタイルについて、お父さん曰く。家の家系の女性は、皆スタイルが良くて、私は間違いなく其方の血が出ていると話してくれた。ここは一つ、身長の方もお願いします。
肌の色が白いのも、お父さんの家系の女性は皆そうなので、これはもう私の身長が伸びるのは間違いないでしょう。でもお母さん、今の私より背が低いんだよね……。
私が自分の見た目の事を話したのは、お父さんとお母さんの一族の話をするためだ。
今はお父さんもお母さんも、お母さんの家の秋素戔宮を名乗っているけど、お父さんの旧姓は
そして、私も生まれてから一週間は、
じゃあ何で、私と両親が秋素戔宮を名乗っているのかと言うと、不本意ながら私が原因なんだよね。あ、勿論、秋素戔宮を名乗るのが嫌って訳じゃないんだよ? ただ、お父さんは、伯父様に物凄くしごかれた言うから、ちょっと申し訳なくてね?
それで、如何して私は今、秋素戔宮なのかと言うと。私が生まれる前、お母さんの周りで起こり始めた事が原因なんだよね。
何が起こったのかと言うと。私がお母さんのお腹にいた時、お母さんの周りから嫌味を言う人達が居なくなった。勿論、物理的に居なくなったんじゃなくて、嫌味を言ってた人達は皆人が変わってしまった様に、良い人になってしまったんだ。
それだけじゃなく、お母さんの周りでは、意地悪な人が急に泣いて謝って来たり、犯罪を犯そうとしていた人や実際に罪を犯した人が、急に心変わりして警察に自首したりと、ほんとに色々起こった見たい。流石にお母さんも、これは可笑しいって思い始めていたんだ。それでも、まだ偶然の域で片付けられたんだけど。
お母さんが、私の出産の為に入院していた時、決定的な事が起こった。病院と言えば、人の生き死にが日常的に行われ、それに引き寄せられる怪異も多くいる。それはその病院も例外では無く、日常的に不可思議な事が起こって居たのだけど、お母さんが入院した事でパタリと無くなる。
お母さんは、秋素戔宮本家のご令嬢だった事も有って、当然怪異が何の前触れもなく消える事など無いと知っているし、自分にそんな力がない事も把握していた。
だから、「あ、これ私の赤ちゃんの力だ」って分かったそうだよ。何せその力は、秋素戔宮家に伝わる特別な異能として、お母さんも小さな頃から身近に感じていたモノだからだ。寧ろ当たり前過ぎて、気が付くが遅くなったらしいけどね。
案の定、生まれて来た私は秋素戔宮家に伝わる異能、
兎に角、観浄眼を持って私が生まれた事で、急遽母の実家である秋素戔宮本家に連絡を入れる事になったんだ。
実はこの時、お父さんの実家の方にも連絡を入れて、対処しようとしてた見たい。
でも、確かに隠神って言うお父さんの家は、本家は秋素戔宮よりも古い由緒正しい霊鬼の家系で、頼りになるのだけど。お父さんは傍流も傍流で殆ど普通の人と変わらないし、本家に連絡どころか力のある分家筋にすら連絡が着かず、隠神家に頼るのを断念したらしい。コネが無かったんだよ~。
ちなみに、隠神の姓を持つ人は結構いる。勿論、一般の人達が殆どだけどね。
で、秋素戔宮本家の元ご令嬢と言う、お母さんの超強力なコネのお陰で、入院先の病院から秋素戔宮本家に連れて来れた私は、直ぐにお母さんの兄で秋素戔宮家123代目当主である、秋素戔宮 政斗伯父様に見て貰う事になった。
改めて伯父様に見て貰うと、私の秋素戔宮家に、良く見られる濃い紫色の左目に、秋素戔宮に伝わる異能、観浄眼の力が有る事が分かったんだ。
観浄眼は、観るという概念と、浄化という概念の二つが合わさり、異能として現れた物で、実際に目で見る必要が無く。観浄眼の持ち主が認識したモノを、問答無用で浄化する強力な異能だ。この浄化の力は対象を選ばず、何でも浄化してしまい非常に危険だ。何せ浄化という概念は、最終的には対象を消し去ってしまうから。
分かると思うけど。何の処置もせずに放置するには、観浄眼は凄く危険なんだよね。特に私の観浄眼は、今まで一族の者が発現したどの観浄眼よりも強力で、先祖返りだと言われている。秋素戔宮の祖は、素戔嗚尊らしいけど眉唾だよね。
この観浄眼を現在持っているのは、かつて秋素戔宮の当主として活躍し、超越者へと至り人の生を終えた後、神となった秋素戔宮三守護神の方々と、私だけである。
観浄眼の制御訓練は、三守護神の方々に頼まなければいけない事と。
本家としても、久々に生まれた観浄眼の秋素戔宮家の子として、是非とも手元に於いて置きたい。
そこで、お母さんは元々本家の人間だし、お父さんを秋素戔宮家の養子にすれば良いと、伯父様の「お前俺の息子になれ」の一言で、お父さんは秋素戔宮本家の一員に迎えられた。こうして、晴れて私は両親共々一緒に、秋素戔宮本家にご厄介になる事が確定したのでした。
観浄眼の制御訓練のため、私は秋素戔宮家三守護神に、引き合わされる事になる。
勿論、私は全く覚えて無いよ、赤ちゃんだしね。
秋素戔宮家三守護神のお三方の一柱目は、現状秋素戔宮最古の祭神で、第48代当主秋素戔宮
このお三方が、秋素戔宮家三守護神で、私が生まれてから5年間、両親とは別に親の様に面倒を見てくれた神様達だ。特に珠玉お姉様は私に付きっ切りで、お三方の間では珠玉お姉様が私の担当だった見たいだね。
それで、このお三方が私を観て、私にはお父さんの家系、霊鬼の力も持っているって事が分かったんだ。要するに私は、二重の意味で先祖返りだったと言う訳だね。
そもそも隠神家とは、大自然の意思を持った霊的エネルギーが、実体を持って顕現した事が隠神家の始まりなんだ。
隠神家の祖精霊の性質は、荒ぶる大自然の化身とも言うべき物で、自然とその猛威を治めて貰うよう、当然祈る者が現れる。隠神家の祖精霊は、そんな人々の前に、度々人に近い姿で現れる事から、自然と鬼と呼ばれる様になり、人々の畏れと信仰から、やがて本当に鬼としての性質を得て、霊鬼と云う存在に昇華する。
あとは自然の流れで、霊鬼となった祖精霊と信者の間に子が生まれ、今の隠神家へ続いて行く。そして今では、祖精霊たる霊鬼は、その存在を更なる高見である神へと昇華し、隠神家の祭神と成り、今に至ると言う訳なんだよ。
まあ、何が言いたのかと云うと。荒ぶる大自然の化身である霊鬼の力が私には宿っていて、それが秋素戔宮に伝わる観浄眼と合わさって、もう一つの異能が突然変異的に生まれたんだよ。
それが、私の金色の右目宿る異能の力、万象眼と言う訳なんだよね。
この万象眼、私が自分の意思で出来るのは、今の所スイッチのオンオフだけ。オンにして出来る事も、文字通り観たモノの全てを見ると云う事だけなんだ。もっと分かり易く言うと。万象眼で人を観たら、その人の人生の始まりから終わりまでの詳細を、強制的に知る事になるって感じかな。正直、人は見たくないね。吐いちゃうし。
物については、道具ならまだしも、自然物を観ると意識が飛んでしまうからキツイね。しかも、この万象眼の観る力は、本来の力の補助的な力でしかないと言うのが、なんとも言い難いよね。
一応いざと云う時の為、珠玉お姉様を始めとする我が家の守護神様達の前で、万象眼を制御する訓練をしているけど。訓練が出来る理由も、神様達相手なら万象眼も全てが見える訳じゃなくて、一部が見えるだけで済むからなんだよね。ちなみに、万象眼の観る力で一部しか見えないのは、私自身と神様達だけだよ。
正直、万象眼の観る力はキツイので、私は万象眼を基本的に使うつもりは無いね。
とまあ、こんな感じで色々と在る私は、力の制御と扱い方を学ぶため、秋素戔宮の討滅士としての訓練も、同時に施されて往く事になったんだ。
そして、昨日討滅士として初陣を飾ったと言う訳なんだ。
私としては、「別に入学式の前日じゃなくても良いのに」って思うんだけどね。
お陰で眠れなかったし、これから入学式に行くんだよ?
ふぁ~~~、ふぅ、眠い……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます