メインイベント【王座戦時間無制限一本勝負】※内容変更の可能性有り
高久高久
第1話
――遂にこの日が来た。
やっと巡ってきた王座戦のチャンス。これを逃せば、次は何時になるかは解らない。
学生プロレス。第三者からすれば
だがもうすぐ就活やらなんやらで引退も近い。その前に、王者になりたかった。俺がやってきた事は無駄では無かったと、意味が欲しかった。
相手は連続防衛記録を更新した絶対王者。不足は無い。コンディションもテンションも万全、勝ち筋も見えた――筈だった。
『えー、本日
王座戦、流れました。
『そして対戦相手は――』
対角線コーナーに、小さい長方形の箱が置かれる。
『両国国技館名物――焼き鳥となります!』
対戦相手が、人ですらなくなりました。
『さぁそんなこんなで遂に始まってしまいましたメインイベント! お互いゴングが鳴っても動きません!』
呆然としていたら始まったよおい。え、これ本当にやるの?
『急遽決まったシングルマッチとなりますが、王者は一体どうしたのでしょうか?』
『入った情報によりますと、交際していた女性がいたそうなんですが』
『その女性とは実は交際の事実は無いようで、それを指摘した結果背中を3カ所程刺されてドクターストップとなったそうです』
『その女性は『目が合った=告白と同じ』と言い張っているそうですね』
何それ怖い。
『しかし王者の安否が気になりますね』
『自分の足で病院に行き、その後その彼女に献身的に看病されているそうです。今現在片時もベッドから離れない、とか』
それ監禁されてない?
『この話が来たのはつい3日前、王者本人から電話を頂きました。だから私はこう言ったんですよ……『試合は気にするな。代役はちゃんと探すから』とね』
いや通報してあげて。きっとそれ助け求めてる電話だから。今からでも間に合う……かは解らないけど。
『さて、そんな王者の代役となった焼き鳥選手ですが、また凄い選手を連れてきましたね?』
『はい。代役の話を聞いて私も奴しかいない、と思い一昨日偶々両国行ったので買ってきました』
『さてそんな両国国技館名物焼き鳥選手ですが、モモ肉3本つくね2本で700円というお値段になりますが』
『都内でも買える場所はあるらしいですが、今回はちゃんと国技館で買ってきました。興行チケット込みで後で経費で落とすつもりです』
『国技館では興行が無いと買えませんからね』
今その話いる?
『この焼き鳥は両国国技館の地下に存在するという焼き鳥工場で作られている、と過去某番組で紹介されていました』
『某『へぇ』の番組です。2本足で立つ鶏は『地に手を着かない』為、相撲ではゲン担ぎで重宝されています。またそこでも紹介されていない情報ですが、両国国技館名物焼き鳥は某プロレス団体でベルトを獲得しています。しかも2度程。そんなプロの団体でタイトルを
知ってる。あの団体のあのベルト、脚立とかが王者の時代もあったよな。
『さてそんな暫定王者焼き鳥選手に対して、挑戦者全く動けませんね』
『焼き鳥選手は流石王者。どっしり構えて挑戦者を受け入れる様が画になります』
そういや試合だったねこれ。後俺『挑戦者』呼ばわりされてるけど、これタイトルマッチになってない?
『しかし既に3分が経過しようとしています。このままでは……』
『はい、この試合は5分一本勝負。時間切れ引き分けとなると規定により王座移動は行われず焼き鳥選手が王者に――』
「させるかゴラァ!」
『おっと挑戦者動いた!』
『まるで今初めて5分一本勝負を知った動きですね!』
今初めて知ったわ!
『しかし残り時間は少ない! 焼き鳥選手とどう戦うか!?』
『打撃や投げなど食べ物を粗末に扱うのは厳禁。挑戦者のプロレス脳が試されます』
ハードル上げるんじゃねぇよ!
――確か焼き鳥があの試合で負けた時は……
『おっと挑戦者、焼き鳥選手を開封しています。マスクマンのマスクを剥ぐに近い行為ですが?』
『レフェリーも止める様子がありませんね。本試合が初レフェリーな為、まだまだ動きに粗があります』
『
『焼き鳥選手冷静です。一昨日買ってからそのままですからね』
『さぁ挑戦者……おっと!? 1本串を手に取りました!』
『あれはモモ肉ですね』
『モモ肉を挑戦者――食べたぁーッ!』
『一口です! 一気に食べきりましたよ!』
『残った串を――挑戦者へし折ったぁーッ!』
『真っ二つに折れています! 挑戦者、非情な面を出してきました!』
『会場からは挑戦者の非情な行為にブーイングの嵐! 焼き鳥コ-ルが鳴り止みません!』
ノリ良すぎだろ観客『残り時間1分!』ってもうかよ!? このままちんたらしてたら間に合わねぇ!
『挑戦者後が無い――おっと!? 今度は残り4本全て手に取り――食べたぁーッ!』
『一気食いです! 確かに挑戦者にはこれしか手はありませんが、これは諸刃の剣です!』
『おっと挑戦者、動きが止まりました! 苦しんでます!』
『喉に詰まらせましたね。2度目の王座獲得の時もこれで決まりました』
『挑戦者完全に動きが止まり――レフェリー止めたぁ! 焼き鳥選手逆転勝利!』
『挑戦者後少しの所でしたが、惜しかったですね』
――薄れゆく意識の中、俺は青春が終わるのを感じていた。
後日、王者(焼き鳥じゃない方)が「何か……ゴメン」と謝罪に来た。
俺はその謝罪を受け入れた。彼の腕に抱きついている女の子に
後
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