失敗

バブみ道日丿宮組

お題:儚い任務 制限時間:15分

失敗

 ーー任務達成。

 

 それはおそらく偉大なことだろう。

 世界を塗り替えることだってできるかもしれないし、楽しいという感情を生み出すきっかけになったかもしれない。

 それも今はない。悲しみも怒りも湧いてこない。

 ただ……虚無感が全身を巡ってる。


 ーーお前は失敗したんだ。


 彼女の遺体を見るという現実が失敗に塗り替える。

 一番生きてて欲しい人が死んで、一番死んで欲しい人が生きる。

 殺しておけばよかった。

 逮捕せずに、息の根を止めるべきだった。

 あいつが最後に笑ってたのは、おそらくこういうことなんだろう。

 お前が任務を成功したとしても、大事な何かを失う失敗になってると。

「……」

 遺体はキレイだった。

 殺されたというのがわからないくらいに、損傷がなかった。

 死因は窒息死だという。

 それでも苦しんだ様子はないとのことだ。

 安楽死。

 そういうやり方かもしれない。

 苦しんでなければいいということじゃない。

 人殺しは犯罪だ。

 それを捕まえるのが探偵の俺の仕事だった。

 家族を持つというのは、弱点を得ること。わかってて、結婚した。

 自分だけはそうならないと、胸に何度も聞かせてた。

 痕跡だって、重点を入れて消した。

 それでもやはりボロが出た。

 

 ーー守れなかった。


 これからどうすればいいのだろうか。

 任務を受けるか、やめるのか。

 守る義務ももうないだろう。

 後を追ってもいいかもしれないが、それは敵が望んだ結果に近い。

 絶望しろといってるんだ。そのままになってはいけない。

 これが悲しみというやつなのか。

「……はぁ」

 なかなかに厳しいものだな。

 誰かに変わって欲しい。いや、彼女の代わりに誰かが死んで欲しい。

 病院を出ると、足取りは軽かった。

 決意が固まったのもあるが、失うものがなくなったことが大きいかも知れない。

 捕まえた敵がいるところは知ってる。話をすれば、中に入れてもらうことはできるだろう。

 そこからは知らない。行ってから考える。

 もしかしたら、殺すかもしれない。

 それはそれでいいかもしれない。

 今度こそ、任務を失敗しないためにーーそう歩みを進ませた。

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失敗 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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