第16話 領主との謁見(前編)
次の日、俺は冒険者ギルドに行き、ギルドマスターのゲイルと一緒に領主宅に向かった。
『なあ、ギルマス。領主様って一体どう言う方なのかな?』
『ザクソン領の領主ライオネット=ザクソン伯爵は、今の国王が即位した時に農水大臣としてこの国の農水業を仕切っていた人物でベルマーク王国全体の食料事情を解決した人だ。他の国と違って食料価格が他国より低い為、この国は安定していると言っていい。ライオネット様は人を見る目をお持ちの方で、俺をこのザクソンのギルドマスターにしたのも彼の助力によるものだ。』
『そうなんだ....。しかし、今、食料価格が高くなっているのは何故かな? 最近、子猫亭のミケールさんとか他の商会を聞くと仕入れに苦労しているって聞いているぞ?』
『現在、レイオネット様夫妻は病に倒れられていてなあ。長男のギルモア様が代理でしているのだが....ある商会と王都から監査官と手を組んでいる見たいなのだよ? 王都のギルドマスターからの情報だ...まあ、色々ある訳だ。おっと、着いたぞ』
ゲイルと話が終る頃には領主宅に到着した。
入り口の護衛にゲイルが話をして中に入ることが出来たので俺達は侍女に謁見室へ案内されて、今、謁見室のソファーに座って待っていた。
5分後に3人の人物が入って来た。
『待たせたな? 私がザクソンの領主代理のギルモア=ザクソンだ。隣にいるのが私の参謀である政務官のジャーク=ワールダーク殿で、もう一人は財務を任せているゲメッツ商会の会頭ゲース=ガメッツだ』
『初めまして私はジャーク=ワルダークと言います。王都からギルモア様を助ける為に来ました』
『儂はゲース=ガメッツと言う。ザクソンの財政管理を任されている』
『私は冒険者ギルドのマスターでゲイルと言います。今日は隣にいるユートがCランクに昇格したので領主様に承認をお願いに来ました』
『ユートです。よろしくお願いします』
ガメッツ商会だと!
こいつが......子猫亭を潰そうとしている奴か....。
『君がユートだったね? 色々と噂は聞いているよ? 承認の件ね...答えは....ノーだ! 逆に君にはある疑いが持っているからな?』
ギルモアが俺の昇格の承認をノーと言い放った。
ゲイルはその言葉を聞いて問いただした。
『何故なのですか! 説明をして欲しいです!』
『ジャーク監査官の調査によると君はガメッツ商会を潰そうとした疑いと君がある人物からの依頼で禁制薬を手に入れて渡した事が原因で私の両親が危篤状況になっているのだ。だから、君を逮捕してザクソンの法律による裁判をかける事になったのだよ?』
『俺が誰の依頼で禁制薬を手に入れたのですか?』
『それは、其処にいる冒険者ギルドのマスターのゲイルだ』
『何だって! 冗談はそれぐらいにしたらどうなのですか?』
ゲイルが反論するとジャークが割って入って
『証拠はある。ガメッツ殿』
『そうでありますぞ? このユートはミケールの子猫亭を勝手に改装して開店した。それが人気になったのだが、子猫亭の客の情報によると料理に薬が入って気分が良くなり、宿泊後、財布の中身が無くなったと儂の所に来ているのだ』
『俺は、冒険者ギルドにて指定依頼を受けていたのだが?』
『それは、私ギルドマスターにも報告が入っている』
俺達は説明したがギルモアには伝わらず、返って追い打ちをかけて行く。
『それはゲイルがユートに指示したのであろう? 調べは解っているはずだ』
何でそうなるのだ???
俺はこっそりとギルモアら3人の『人物鑑定』をすると理由が分かったのだ。
こいつ等、グルで俺達を犯人して逃げようとしているのだな?
しかも、ギブソンの両親の危篤状況はこいつらが原因だな?
このジャークって監査員、まさか....あの種族だったのか!
『と言うわけでお前達を逮捕する! 騎士団長! この2人を逮捕しろ!』
ギルモアが騎士団長に命令をした時、謁見室の外から声が聴こえてくる。
『誰が誰を逮捕にするのか? 我が息子ギルモアよ?』
驚くギルモア。
謁見室に入って来たのは........。
『父上!』
『『えええええええ!』』
ジャークとガメッツは驚いた顔でその声の人物、ザクソン領主ライオネット=ザクソンを見た。
『どうかしたのか? ギルモアよ? 私は元気になったぞ? そこの冒険者ギルドマスターのゲイルの手配で私達夫婦の呪いが解除されたのでな? なあハリソン?』
『その通りでございます。旦那様。ゲイル様から頂いた薬のおかげで旦那様方の呪いが解けました』
『何ですって! それでは一体、父上と母上に入れたのは誰ですか?』
ギルモアがライオネットに食いつくとハリソンが割って入って来た。
『その件は私の方から説明致します。昨日の夜、子猫亭に盗賊が侵入したと報告がありまして、近衛騎士団長が現場に行きました。其処には全身痺れている盗賊が15名とその場で寝ている盗賊が10名を発見しました。それはユート様の防犯機能が機能したと言う事で良いのですね?』
「はい、子猫亭の外壁を登ろうとした時に発動する麻痺魔道具と武器や魔法で攻撃すると発動する睡眠魔道具が機能したと思います」
『それで、その後に騎士団の牢獄で審問した所、意外な結果が出て来たのです。
それは.....其処にいるガメッツ商会からの依頼だと証言を得ました』
『儂は何もいらないぞ! その盗賊が嘘をついているのじゃあ!』
『いいえ、嘘はついていませんよ? 理由は簡単。この魔道具を使ったのです』
そう言ってハリソンは机の上に石板みたいな物を置いた。
『この石板に手を触れていただけませんか? 此処にいる全員、お願いできますか?』
『俺が最初に手に触れよう』
俺は最初に石板に手を触れると石板の色が白く光った。
次にゲイルも石板に手に触れると俺と同じ白く光った。
『次はガメッツ商会の会頭様、お願いします』
『こんな物で何をするのか? まあいいわ』
ぶつぶつ言いながら石板に手を触れると青く光った。
ビルモアとジャークも石板に手を触れると同じく青く光った。
それを見ていたライオネットとハリソンは何かを確信した顔で頷いた。
『父上、私達は青く光っていて、あいつらは白く光ったのだが? ......分かった! そう言う事か? この石板は「嘘がわかる魔道具」だな? 青く光ると無実で白く光ると有罪だったのか? ならばこいつらが有罪だと決まったぞ!』
『ギルモア様、これが「嘘が解る魔道具」ですが、内容が全く違いますぞ? 寧ろ逆なのです。白く光っている事は無罪で、色が変わったのは嘘をついているのですよ? それも黒は殺人を犯した事がある事、灰色は殺人がどうかわからないである事で、青いのは......賄賂で自分の利益をしている人なのです。つまり、貴方達はこのザクソンで私腹を肥やしていると言う事です。ちなみに捕まえた盗賊は全て黒で殺人を犯しているという事です。更に質問している内容によって変化するのでとても役に立てますよ? 参考にガメッツ商会から依頼されたって聞いたら、全員白く光りましたからね?』
『儂は....しらん! そんな奴らは知らん!』
『そうでしたら、「盗賊達に依頼したのは貴方ですね」って石板に触って下さいな? 騎士団長様、お願いします』
ハリソンの指示により騎士団長がガメッツの手を無理やり手に取って石板に触れされた....結果は緑に光ったのでハリソンは続けて説明に入る。
『緑....と言う事は指示したのは貴方だと分かりました。旦那様、どう致しますか?』
『騎士団長、ガメッツを捕縛しろ! それとギルモアとジャークと言ったか話はまだあるぞ? ハリソン、話を続けろ』
『はい、わかりました。先ずはギルモア様から.....実は1か月前に旦那様と奥様は既に回復していました。私に今の街の状況を確認していた所、色々分かった事があります。一つ目は以前より税金率が大幅に上がっている事です。旦那様が倒られる前は生産職と販売職に対しては売上額の10%を税としていただいています。その他一般の領民は税を取っていません。つまり売っている商品に税を付けて販売しているのです。それが倒られた後でギルモア様が勝手に税率を30%まで引き上げ、尚且つ一般の領民にも15%の税を課したのです。そのお陰で借金をしている人が9割にも達しているのです。お金を借りている人全員はガメッツ商会から借りたと聞いています。借用書も預かっていますよ? 借金を返せない人はガメッツ商会から鉱山作業をさせて借金を返済させているのです。家族で若い女性は、ギルモア様の性の相手をさせられたそうなのです。これも全て調べていますよ?』
次々と出て来る悪事の数々.....。
『ガメッツ商会から集めた金額は全てジャーク様が7割、ギルモア様へ2割、ガメッツ商会へ1割を受け取っている事が解りました』
『私は何も知らない....このガメッツが勝手にした事だ!』
『そうですよ? 我もいただいていませんぞ?』
言い訳するギルモアとジャークの二人。
それを見た俺はライオネットに確信した事を聞いた。
「領主様、ひとつ聞いてもいいですか?」
『許す、言ってみろ』
「はい、このザクソンを含みベルマーク王国には魔族はいるのですか?」
『いいや、ベルマーク王国には魔族はいないはずだ。魔族がいるとしたら隣の国『ベルガイア王国』しかいないはずだ。何せあの国の宰相が魔族であると分かっているからな?』
「そうでしたか? ならばそこにいるジャーク監査官はベルガイア王国から来たって事ですよね?」
『何故。ユートよ、そう言う事を言うのだ?』
「わかりますよ? 俺の『人物鑑定』を使ったら分かるので。ジャーク監査官、貴方は魔族ですよね? バレているからな? 隠蔽操作しても無駄だよ? 理由は簡単だよ、俺の『人物鑑定』は相手が隠蔽操作しても関係なく見破る事が出来るので」
俺はそう言ってジャーク監査官に向って話すのであった。
~作者より~
次回後編になります
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