星廻る輩 ☆拾 


「ラブ先輩! ピース先輩!」

不破ふわ先輩も……」


 三人のもとにやって来たのは、愛生あき和希かずき要一よういちの生徒会メンバーだった。竜之介が言っていた学園に向かったという降魔科生ごうまかせいから連絡が行き、駆けつけてくれたのだろう。


 白い虎が愛生のほうに行く。足元にり寄ってきたその虎の頭を、愛生がよしよしと撫でた。どうやら彼女の保有する式鬼しきのようだ。


雷獣らいじゅうが出たと聞いたが――」


 言いかけた要一だったが、三人の憔悴しょうすいしきった様子を見て言葉を切った。


 ここに向かっている途中、大きな竜巻が起き、天をいたのを見た。そして、あちこちで稲光をさせていたのが、一ヵ所に集中するようになっていた。しばらくして、ゴロゴロと鳴り響いていた雷轟らいごうと、暗雲を走っていた稲光が突如として治まった。


 それらと目の前の一年生の状態から察するに――。


「まさか、お前たちが雷獣を……?」

「は、はい……」


 おずおずと梨々花が肯定すると、要一は唖然あぜんとした。


「い、一体どうやって……」


 問い詰めかける要一を遮るように別方向から声が上がる。


「要一、とりあえずそんなことはあとだ」

「ラブの言うとおりだね。元凶が調伏ちょうぶくされたとはいえ、市街はこの有様。まずはこの状況をどうにかしないと」

「む……、たしかにそうだな」


 要一が気を引き締め直すと、愛生がやおら視線を自身の右肩に向けた。


「ってなわけで、無事合流できたぜ、会長」

『そのようね』


 いつの間にか、愛生の肩口に白いねずみがいた。白い虎と同じ雰囲気を感じるため、こちらも愛生の式鬼なのだろう。


 今ちらりと聞こえた声は、玲子のものだ。どうやらあの鼠は、遠隔えんかくでのやり取りができるらしい。


 辺りに充満している妖気のせいで電波状況が不安定なため、スマホのような携帯端末が当てにならない今、式鬼を使ったやり取りのほうが確実性がある。


「そっちに変わりは?」

『今のところないわ。引き続き警戒に当たるから、愛生たちは』

「ああ、こっちはこっちでなんとかするさ」

『ええ、頼んだわよ』


 そこで会話が途切れる。やり取りを終えたらしい。すると、鼠の姿がすっと消えた。


「ほう、先の一件から少しは学んだようだな」


 氷輪がぴしりと尻尾を振って言うと、その言葉の意味を瞬時に理解した要一が頷く。


「はい、万一のことがありますので」


 先月、嘉神学園を襲った百鬼夜行事件。降魔科生が出払っているところを狙ったかのように起きたあの一件は、いまだに原因究明には至っていない。


 そんな状態で、再び学園に同じことが起こらないとも限らない。ゆえに、生徒会は役割を分担して、ここに駆けつけたメンバー以外は学園に残り、異変が生じないか警戒に当たっているのだった。


「当然よな。同じ過ちを繰り返すようであれば、降魔士への志を早々に諦めたほうがまだ賢明だ」


 この間、梨々花と竜之介は唖然としていた。生徒会の先輩たちは響の式神に動じる気配など微塵みじんもなく、それどころか平然と会話をしているのだ。


 それだけでも驚きなのに、氷輪のこの上なく偉そうな物言いを聞いてさらにぎょっとした。自分たちとは実力がけた違いの生徒会役員にそんな口を利くなんて、と二人して若干顔を青ざめさせている。


「アハハ、手厳しいですね」

「ま、さすがにアタシらもそこまでバカじゃないってことさ」


 氷輪の言葉を受けて、和希と愛生は苦笑いで応じただけだ。その生徒会のあっけらかんとした対応に理解が追いつかず、梨々花と竜之介は目を白黒させている。


 そんな彼らに構わず、愛生と和希は顔を見合わせた。


「さーて、ここからどうすっかねぇ」

「ラブが式鬼を放っているとはいえ、ここでゆっくりしてるわけにもいかないからね」

「それもそうだが、こいつらを安全な場所に連れていくことも考えなければ」


 要一が響たちを横目で見ながら言う。その言葉を聞いて、はっと竜之介が声を上げた。


「お、俺はまだやれます!」

「んー? おーおー、威勢いせいがいいじゃねーか。けどな――」


 ふいににやりと笑った愛生が、ぱちんと指を鳴らす。


寅嶋とらじまぁ!」


 すると、愛生の足元にいた虎が、突然竜之介におどりかかった。


「……っ!?」


 咄嗟のことに、竜之介は動けない。息を呑んで固まった彼の横をすり抜け、虎は竜之介の背後に迫っていた妖異を鋭利な爪を持つ前脚で引き裂いた。


 いつの間にか、妖異が忍び寄ってきていたらしい。それを愛生の式鬼が倒したのだ。


「やる気だけは認めるが、これに反応できねーようじゃあ、連れてくわけにはいかないんだわ」


 至極しごく正論だ。こんな為体ていたらくでは、ただ足を引っ張るだけになってしまう。


 竜之介が悔しそうに目を伏せた。悄然しょうぜんと落とされた肩を、要一がぽんと叩く。


「雷獣ほどの妖異とやり合ったあとだ、落ち込むことはない。あとは俺たちに任せて、お前たちは休んでいろ」


 そうして生徒会役員たちが打ち合わせを始める。


 それらを少し離れたところから傍観ぼうかんしつつ、響はふーっと息を吐いた。やれやれ、やっと休める。これ以上は自分が動く必要はないようだし、あとは生徒会の先輩たちがなんとかしてくれるだろう。


 市街中を横行しているらしい妖異たち。広い土地でそれをしらみ潰しに調伏していくのは簡単なことではない。


 しかも、何匹と倒したところで、妖気に誘われて妖異は集まってくる一方。そのうち雲が晴れ、日の光が差せば陽気で妖異の数も減るだろうが、それもすぐにとはいかないはずだ。


 雲は少しずつだが薄くなっていってはいる。とはいえ、この調子では一時間はまずかかるだろう。


 この状況を手っ取り早く解決する方法は――。


 そんなことを他人事のようにぼんやりと思っていた。


 しかし、そんな風に考えていたのは響だけではなかった。


「現状打破には、邪気を一掃する必要があるな」


 氷輪の目が響をまっすぐに見つめている。その視線の意味するところを察し、響は嫌そうに顔をゆがめた。


「は? いやいやムリムリ。こんだけの邪気払うのにどんだけ力使うと思ってんの? こっちはもうくったくたのへっとへとなんだっての」

「しかし、そうでもせねばこの状況をくつがえすことなどできぬぞ」

「だとしても絶っっっ対やだ。ってか、そんなのわたしの仕事じゃな――」


 そのとき、響の腰辺りが震えだした。バイブ音がかすかに聞こえる。


 断続的に繰り返す振動に嫌な予感を覚えつつも、取り出したスマホを見る。


 通話画面が浮かぶそこに表示されている名前を見て、響は己の予感の当たりを確信したと同時に今日一番の嫌そうな表情を浮かべた。


 響はちらと周りを見る。生徒会メンバーは話し合っているし、梨々花と竜之介もこちらを見ていない。


 再び視線を落とす。正直、出たくない。出たくないのだがしかし、その意思に反して指が勝手に通話ボタンへと伸びる。出ないほうがよほどまずい状況になるということが、身体に刻み込まれているのだ。


『雷獣を倒したのね』


 通話に出た瞬間、開口一番の言葉がそれだった。


 なぜそれを、と聞くのは野暮やぼだ。この人はなんでも知っている。このタイミングで電話をかけてきたことがなによりの証左しょうさだった。


「はぁ、まぁ、そうですね」

『だけど邪気がまだ漂っている。違うかしら?』

「違わない、ですけど……」

『なら、響。邪気を祓いなさい』

「……は?」


 言葉の意味を量りかね――否、脳が理解することを拒んで思考が停止する。硬直した響へ、声は畳みかけるように言葉が繋げられる。


『そこに行きつけのお店があるの。知ってるでしょう? そこに何かあったら困るわ。だから、祓ってきて』


 そんなちょっとコンビニで公共料金払ってきてみたいに言われても。


『――ああ、それと』


 つっこむ間もなく、声は続く。


『気づいているかしら。妖異が、あなたのもとに集まりかけているってことに』

「……っ!」


 途端、さっと血の気が引き、響は息を呑んだ。通話口の向こう側で微かに笑う気配がした。


『ね、響。どうする?』


 声音が明らかに楽しんでいる。相変わらずの趣味の悪さと、底意地の悪さ。毎度毎度のことながら、本当にどうかしている。


 そんなことを言われたら、答えはひとつしかないではないか。


「やり、ます……」

『ふふ、いい子ね。それでこそ私の響。それじゃあ、よろしく頼むわね』


 通話が切れる。響は腕をだらりと下げ、肩を落とした。


 会話を聞いていたわけではないが、あるじの表情からすべてを察した氷輪が口角を上げた。


「あ~~~~~もぉおおおおお……!」


 腹の底から響くような低い声を出し、がりがりと頭を掻き回す。


 最悪だ、面倒ごとを押しつけられてしまった。あのドブネズミめ。調伏したにも関わらず、本当に厄介な置き土産を残してくれたな。


「ど、どうしたの?」


 突然響の様子が変わったことに驚いて、梨々花が心配そうに見てくる。


 ――気づいているかしら。妖異が、あなたのもとに集まりかけているってことに


 己にかけている隠形おんぎょうの術はかろうじて解けてはいないが、効力を失いつつあるのは事実。


 このままでは、輝血かがちの気配に誘われて、妖異が一斉に押し寄せてくるのも時間の問題。


 それに響の事情はあくまでダメ押し。というか、ただの嫌がらせだ。


 お気に入りの店が妖異の被害にあったら困るからさっさと妖気を祓え、というのが本命。


 それがまごうことなき私情であっても、その命令に響は逆らえない。


 ならば、ここで隠形の術をかけ直すよりは、妖気祓いに力を注いだほうが賢明だ。本当に響には残っている力に余裕がないのである。


 へとへとで、もう一歩も動きたくないぐらいくたくただが、それでもやるしかない。


 響は深く長いこの世の終わりのような重苦しい息を吐き出すと、嘉神生たちにくるりと背を向けて走り出した。


「あ、おい!」

「ちょっと、如月さん!? どこ行くの!?」


 呼び止める声を聞き流し、響と、それに並走する氷輪は公園を出た。


「氷輪! この街の中心ってどこ!」

「今いる場所がちょうど中ほどに位置している。さほど遠くではないぞ。幸いだったな」

「何がっ! どこがっ!」


 半ギレで切り返す。何が幸いだ。こんな事態になった時点で不幸以外の何ものでもないのだ。


 もはやヤケクソになっている響は、先導する氷輪のあとについてひた走る。






「ふむ、この辺りか」


 そう言われて響が足を止めたのは、走って五分ほど、一般道路だった。普通に車二台がすれ違えるほどの幅はあるものの、大通りではないため元々交通量が少ないのだろう。見渡せる範囲では車の影はない。


 膝に手をつき、ぜぇぜぇと肩で息をする響は今にも倒れそうだった。


「響よ、そのような為体で邪気を祓うことなどできるのか?」

「……っさいな……もう、ほんとに、限界、なんだってば……っ」

「もうひと踏ん張りだ。そら、くやってしまえ」

「く……、他人事だからって、好き勝手、言ってくれるな……」

「文句を言う元気があるのならば問題なかろう」


 ぞんざいな物言いに対する反論を、響はすんでのところで飲み込んだ。いちいち言い返しているほうが余計疲れる。


 まったく、今日も一日中ゴロゴロと優雅な休日を過ごそうと思っていたのに、街に連れ出されてからが運の尽き。散々な一日になってしまった。


「もうこれで、最後だ……」


 響がふらふらと進みだす。氷輪はその場に留まり、じっとその背を見つめる。


 と、そのとき、氷輪の耳が物音を捉え、ぴくりと動いた。


 悠然と首を巡らせれば、梨々花と竜之介がこちらへ駆け寄ってくる姿が目に入った。


「なんだ、なんじらも来たのか」


 すぐそばまで来て立ち止まった二人を見て、氷輪がついと目を細める。梨々花が胸に手を当てて呼吸を整えつつ答えた。


「だ、だって、心配で……」


 響が駆け出してしまっておろおろしていたときに、ここはいいからお前らは響のあとを追え、と愛生に言われたので、二人はすぐに追ってきたのだ。


「あいつ、一体何するつもりなんだ……?」


 道路の中央で立ち尽くしたまま動かない響を見て、竜之介が怪訝けげんそうに呟く。氷輪がぴしりと尾を振った。


「汝らはそこで見ておれ。――そして、しかとその目に焼きつけよ」


 厳然げんぜんとした口調に、二人は思わずごくりと固唾かたずを飲み込み、少し離れた場所にいる転科生を眺めた。


 二人が来ていることを響は知らない。それに気づかないほど、集中力を高めていた。


 目を閉じ、呼吸を整える。そして、精神を一点に集中させた。気が己の身体を巡っていくのをイメージし、隅々まで行き渡らせる。


 そうして、すっとまぶたを上げた響はおもむろに行動を起こす。


「――りん


 左足を半歩前に出し、唱える。


ぴょうとうしゃ


 次いで、右足を一歩前に踏み出し、そして左足を半歩引き付けて右足と並ばせる。後ろ足が前足を越すことのない、まるで片足を引きずっているかのような奇妙な歩法だ。


 そして、今度は右足を半歩前へ出す、といったように先ほどの手順を繰り返していく。


かいじんれつ


 気を静めて、一歩進むごとに一言唱えながら、ゆっくりと確実にアスファルトを踏んでいく。


ぜん――ぎょう!」

 そして、最後の一歩で地を踏みしめた瞬間、霊力が爆発した。


 響の足跡が光を放ち、とある形を浮かび上がらせる。


 あの奇妙な歩法『禹歩うほ』によって形作られた、それすなわち――九星の北斗。


 北斗から放たれた光がひとつとなって円柱を成し、天を衝く。


 光の柱の中央ですそや髪をはためかせながら、響は胸の前で両手を組み合わせて陽気の招来を請う印を結んだ。


つつしんで勧請かんじょうたてまつるは産土神うぶすながみ。この地によどみしけがれを祓いたまい、清めたまえ!」


 そして、解いた右手で刀印とういんを作る。


邪気じゃき祓滅ふつめつ―――!」


 叫んで、刀印を真横へ薙ぎ払った。


 瞬間、さらなる清冽せいれつな霊気が大地から噴出する。響を中心として波紋のように広がったそれは、やがて街全体に行き渡り、妖気を浄化させていく。


 そしてあれほど垂れこめていた暗雲から晴れ間が覗き、そこから陽光が差した。徐々に青い部分を広げていった空が、地上を明るく照らし出す。


 響が発動した術が暗雲を蹴散けちらし、辺り――市街全体に漂っていた妖気を一斉に払拭ふっしょくしたのだ。






「な、なにが起こったの……?」

「まさか、妖気を全部祓ったってのか?」


 一部始終を見ていた梨々花と竜之介は呆然ぼうぜんと立ち尽くしていた。信じられない光景を目にし、続く言葉が出てこない。


 二人が我に返ったのは、響の膝ががくんと落ちてくずおれたときだった。


「如月さん!?」


 慌てて駆け寄った二人は、響の様子を確認する。響は目を閉じてぐったりとしていた。


「如月さん……っ 如月さんってば!」

「案ずるな。力を使い果たし、意識を失っておるだけのこと」


 背後からかけられた声に振り向けば、響の式神が近寄ってきていた。言われてからよく見てみると、響は規則正しい呼吸をしている。本当にただ眠っているだけのようだ。


「これが、汝らがあなどっていた響の力だ」


 梨々花と竜之介が息を呑む。そんな彼らに、氷輪はさらに言葉を続けた。


此度こたびの調伏、響ひとりでもやってのけたであろう」


 二人は言葉を失い、目を閉じている響を呆然と見下ろした。


「この我を式神へとくだした術者であるのだから、この程度は当然のことだがな」


 ふっと鼻を鳴らし、尻尾をぱたりと振る氷輪の口端が微かに上がっていることには、誰も気がつかなかった。


 そのあとしばらくして生徒会メンバーがやってきたり、状況説明などが始まったりと場が慌ただしくなった。


「――――……」


 そんな人間たちをよそに、氷輪は目をすがめた。


 此度の件、雷獣が生み出した暗雲と雷のせいで電波が悪く、降魔士への連絡が遅れた。


 一週間前、嘉神学園に百鬼夜行が襲撃してきたときと同じだ。あのときも、妖異が生じさせた瘴気しょうきのせいで外界との通信が絶たれていたと聞く。


 前回のことといい今回のことといい、いささか都合が良すぎはしないだろうか。


 雷獣出現自体は、そう珍しいことではない。雷獣は雷雲に乗り、たまに人里にやってきては被害をもたらすといったことは、昔からあることだ。元がそういう妖異なのだから。


 とはいえ、こんなことがこうも続けざまに起こるかと聞かれると、すんなりとは頷けない。


 果たして、これらは単なる偶然か。


「…………」


 どうにもきな臭い。


 なんとも言えない引っかかりを覚えながらも、白澤は疲れ切った色を滲ませて眠る主の顔をじっと見つめるのだった。



   ▼   ▼



「――ええ。では、お願いね」


 口元に当てていた刀印を解き、土御門つちみかど深晴みはるは空いた窓の外に目をやった。


 吹き込んでくる微風が色素の薄い長い髪と、肘にかけたオーバーサイズのストールを静かに揺らす。


「上出来よ。さすがは私の教え子。あとでうんと褒めてあげなくちゃ、ね」


 愛おしそうに呟いた彼女の瞼の裏に浮かんだのは、自分の持つ技術を注ぎ込んだ唯一の弟子の姿。


 目を見張るほどの美貌びぼうに添えられた微笑は、しかし見た者をきっと戦慄せんりつさせるだろう。


「ご褒美に、このぐらいのことはしておいてあげる」


 深晴の目がうっそりと細められた。


「だって、まだそのときではないもの」


 ねぇ、響。


 しっとりとした呟きは、そよと流れる風に紛れて消えていった。



   ▼    ▼



 雷獣の襲撃により、香弥こうや市街はそれなりの被害を受けた。


 落雷によって、街の至る所の電線が焼き切れ、建築物やアスファルトなどが部分的に破損したところが何十ヶ所もある。


 ただし被害自体はその程度で、死者の報告はなし。怪我人は多少出たが、どれも逃げる際に転んで擦りむいたといったものばかり。雷獣がもたらした雷による負傷者はゼロだった。


 嘉神学園降魔科一年生三名の活躍により、見事雷獣が調伏されたおかげで、なんとか最小限の被害に留められたのだ。


 雷獣が残した妖気につられて、寄り集まってきていた十数体の妖異もあとから駆けつけた嘉神学園生徒会および降魔士の手によってこれをすべて撃退。


 というのも、途中で生じた凄まじい霊力の波動によって、暗雲と妖気の残滓ざんしが一斉に払拭されたおかげで、妖異が一気に弱体化し、逃げ帰ろうとしていたところを叩いて難なく倒すことができたからだった。


 今は事後処理のため、降魔士が市街の調査を行っている。破損箇所等は早急に復興作業が進められるとのこと。


 そして、今回の雷獣襲来事件について、降魔士が作成した報告書の一文にはこう記述されていた。



〝嘉神学園生徒会数名が妖気を一掃し、事態終息に大きく貢献した〟と――。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る