#52 千葉のニックネーム



 そろそろ下に降りて準備始めるか、とワラシと1階に降りる。



「手分けしてやる?それとも一緒に1つづつ片づけてくか?」


「一緒がいい」


「おっけ。じゃあ野菜切るのから行くか」


「いぇすマァム」


 どうやら「いぇすマァム」と返事するのがワラシのマイブームらしい。


 まずは二人ともエプロンを身に着けて、昨日買って来た食材を仕分けしながら、洗う物はシンクへ、直ぐに必要ない物は冷蔵庫へ、その他の物は食卓に、という感じで分別する。


 次に、二人で野菜を洗いながら皮むき。

 ワラシは包丁で器用に剥いて行く。

 俺は不慣れだからピーラーで剥いて行く。


 量が多いから、皮むきだけでも結構時間かかる。


 途中で母さんも手伝ってくれて、漸く全部の皮むきを終了。


 今度は順番にカットしていく。

 こっちの方が楽で、サクサク進んで終了。




 冷たい麦茶で一服した後、今度は首にタオル巻いて庭の準備開始。




 父さんがタープを出してくれたので、父さんに手伝って貰い設置。

 他に、アウトドア用のテーブルやイスを組み立てて、防火用の水をバケツで用意。


 後はメインの、長さ60センチ幅30センチのサイズのコンロに大小の備長炭を風通しが良い感じに雑に並べる。


 着火剤を3か所程に差し込み、準備完了。

 火を点けるのは、八田さんと千葉が来てからにしよう。



 ワラシが台所から冷たいコーラをグラスで2つ用意して持ってきてくれたので、早速タープの下でイスに座って塩梅を確認しながら休憩。



「こういうお庭のパーティー初めて」


「そうなのか。ウチは父さんがこういうの好きだからな。昔からちょくちょくやってるんだよ。 これからは毎回ワラシも誘うな」


「うん、うれしい。 アウトドアは準備から楽しむものなんだね。買い物も食材の下準備もテントとかコンロの設置もこういうのが楽しいんだね」


「そうだなぁ。因みに片付けも入るからな。 お腹一杯になった後の片付けは、中々メンドーだぞ」


「なるほど。飛ぶ鳥跡を濁さずだね」


「微妙に違う気もするが、そうだな」



 準備が終わったので二人で寛いでいると、八田さんと千葉がやってきた。



「八田さんも千葉も、いらっしゃい」


「おはよー!へーもう準備出来てる!」


「おはよ」


「二人とも、そんな恰好だと、汚れて大変だぞ?」



 八田さんは上も下も露出多めでいつもの様に夏らしいおしゃれな格好だ。


 千葉は、スカートの丈が長めでノースリーブのワンピースに髪型は1年の時部活で良く目にした両サイド三つ編みで、如何にも落ち着いたイメージの千葉っぽい。



「だいじょーぶだいじょーぶ!私たち着替え持ってきてるから」


「おしゃれの為だからって面倒なことするんだな。 ワラシなんか家からこの格好で来たぞ」


「家を一歩出た時から私のパーティーは始まっている」


「とりあえず着替える?」


「うん。お部屋貸して」


「了解。俺の部屋使って。荷物もそこに置いてくれればいいから。 着替えてる間に俺達は火おこすか」



 千葉は、ここまではニコニコしてるが、ほぼ発言が無い。

 まぁ八田さんが喋り過ぎて、口挟めないのかもしれんが。



 着火して炭に移る様に竹筒でフーフーやってる間、ワラシと母さんが台所から食材を運びだす。



 八田さんと千葉が着替え終わって降りて来たから、食材運ぶのを手伝って貰う。


 八田さんは、頭にキャップ被って、デニムのショートパンツに「ポーション、ガブ飲みスタイル」と書かれたTシャツ。 お金喰う戦闘スタイルだな。

 千葉は、頭には麦わら帽子で、ピチっとした膝丈のGパンに七分袖のチェックのシャツ。


 二人ともお尻がプリプリしてて、ついつい気なって目で追ってしまう。



「二人とも、汗かくし日焼けもするから、首にタオル巻いた方がいいよ。 なかったらウチの貸すから」


「あー貸してほしい。アキちゃんも?」


「うん」


「おっけ取って来る。 ワラシ、火、見とって」


「いぇすマァム」



 洗面所から持ってきたハンドタオルを二人に渡し、そこで考えた。



「千葉のコト、千葉って呼ぶの、なんか違う気がするな。しかも俺がエラソーな感じだし」


「え?わたし?」


「うん。呼び方変えるか」


「それなら糞ビッチ2gうぐぅ」


 遠慮なく毒吐こうとするワラシの口をすかさず封じる。

 だが、ワラシは口に当てられた俺の手をペロペロ舐め始めた。


「そうだねー、アキちゃんでいいんじゃない? 私はそう呼ぶようにしたよ?」


「アキちゃんねぇ・・・チバアキ・・・チバキ・・・バッキ。おっけ、バッキーに決定。これからは”バッキー”って呼ぶわ。拒否権なしな」


「えぇー・・・」


「バッキーって伸ばすの? それともバッキで止めるの?」


「伸ばした方が言いやすいから、伸ばしてバッキー」


「なんか微妙にダサいね」


「そこが狙い。じゃあこれからよろしくな!バッキー!」


「うう、よろしく・・・」


「ケンピくんの手、ちょっとしょっぱい」


「っていうか、私は? ずっと”さん”付けなんだけど!心の友に他人行儀過ぎない? ケンピにワラシにバッキーって来たんだから、私には凄く可愛いニックネーム欲しいなぁ」


「ワガママだなぁ」


「シズカちゃん、ワガママ言うなら糞ビッチ3号に戻すよ? もしくはジャイ子」


「いや、俺的にはフル勃起八田っていうのがいいと思うぞ」


「ねぇ今の聞いたアキちゃん! 私いつもこんな風にいじめられてるんだよ!こんなに可愛い美少女捕まえて信じらんないよネ!」


「ぷぷぷ」



 千葉改め、バッキーがたまらず口を押えて楽しそうに笑い出した。

 1年の時、部活で良く見た姿だな。


 ようやく、バッキーもこの場の空気に馴染み始めたようだ。




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