#50 八田さんは残念美少女、ワラシは平常運転



 バーベキューの前日。



 朝からワラシと八田さんがウチに来て、いつもの様に宿題を進める。


 この頃になると、俺とワラシは宿題がほとんど終わり、後は防犯ポスターの作成と読書感想文だけになっていて、宿題と言っても感想文を書いてるだけで、元々俺もワラシも読書する方だし、宿題の為に改めて読む訳でもなく、今まで読んだ本から選んで書くだけだった。


 因みに八田さんも、宿題貯めこんで居る訳では無いけど、俺たちより結構遅れてる。


 俺はその理由を知っている。


 八田さん、俺たちと勉強する時、ずっと喋ってるんだもん。

 俺もワラシも喋らない訳じゃないけど、宿題とか勉強してる時はお互い邪魔しないように静かに集中してるし。

 なのに、八田さんはお喋り大好きなのか、喋ってばっか。シズカって名前なのにな。

 だから俺たちと勉強してると、宿題も進み具合が悪い。


 俺たちと居るからお喋りしたくなるんじゃないの?一人で勉強してた方のが捗るんじゃないの?って思って、「俺たちと遊ぶのは良いけど、午前中は家で一人で勉強して、午後から遊びに来るとかにすればいいのに」って一度言ってみたけど、「ケンピくん冷たい!心の友だと思ってたのに!そう思ってたのは私だけなの!?」って大げさに文句言われた。


 そもそも、八田さん友達多そうだし、俺たち以外とも遊べば良いのに、どうも今年の夏休みは俺たち以外とはほとんど遊んで居ないらしい。



 話を戻して、午前中宿題を進めて、お昼に母さんとワラシが作った冷やし中華食べて、午後からは母さんの車に乗って買い出し。



 近所のスーパーに行って、俺がカートを押す係。

 ワラシと八田さんと母さんの3人が色々カートに放り込んでいく。

 シュージは速攻でお菓子コーナーへ消えた。


 牛肉、豚肉、鶏肉、厚切りベーコン、キャベツ、ピーマン、さつまいも、トウモロコシ、ウインナー、ウインナー、ウインナー、ウインナー


 って、ウインナー多いな!? 


 さっきからワラシがウインナーのコーナーから動こうとせず、形や大きさを吟味しながら好みのウインナーをカートへ入れていく。


「ワラシ、ウインナーの何がお前をそんなにも惹き付けて止まないんだ?」


「ウインナーはオスの象徴を彷彿とさせるから」


 そんな会話をしていると、カートにキュウリが放り込まれた。


「八田さん、キュウリ入れるのは良いが、八田さん以外多分誰も食べないからな」


「だいじょーぶだいじょーぶ!私がケンピくんに美味しく食べさせてあげるから!」


 するとワラシが負けじとエリンギを放り込んだ。


「俺はキノコ類もダメだからな。ワラシ一人で食べろよ」


「エリンギもオスの象徴を彷彿と」



 結局、多すぎるウインナーも嫌いなキュウリやエリンギも、俺が元の場所へ戻した。


 他にも、ジュースやお菓子やアイスも選んでレジに並ぶ。

 順番待ちしている間、雑談しながら時間を潰す。

 因みに母さんは俺に財布を預けて、一足先にシュージとフードコートで待っている。



「シズカちゃん知ってる?トウモロコシの生命力」


「え?トウモロコシ?」


「うん、トウモロコシの生命力」


「ナニそれ?」


「トウモロコシはね凄いんだよ。生命力が強すぎて食べてもお腹の中で消化されずに翌日その姿を残したままウンチと一緒に出て来るんだよ」


「ワラシ、その話をココでするのは止めるんだ。それにいくら友達認定している八田さんと言えども、その話題はまだ早すぎる。八田さんにはハードルが高すぎるだろ?」


「そうかな?あ、でも今度写メ見せてあげるね、コーンが入ったウンチの。ぐふふふ」


「だから止めるんだ、ワラシ」



 今日のワラシ、なんだかテンション高くて浮かれてるみたいだ。

 ある意味平常運転だけども。


「そう言えば、私も糸こんにゃくで同じことあったよ? すき焼きで食べた糸こんにゃくが次の日の朝、ウンチと一緒に出てきたの」


「どうしたっ八田シズカお前もか!? ドン引きすると思ったのに何故話を広げようとするんだ!?」


「え?だってウンチの話でしょ? 流石に私は写メは撮らないけど、似たような経験くらいあるし」



 どうやら、ワラシだけではなく八田さんも浮かれているようだ。


 俺だって男子だぞ?

 男子の前であけすけに自分のウンコの話する女子とか、ちょっとばかり頭イカレてんじゃないの?

 それとも俺に対して友達としてそこまで心を開いてくれてるのか?

 心開き過ぎて、次は肛門でも開くつもりか?


 おっと、俺まで毒されているじゃーないか。



「八田さん。 君は綺麗だしクラス委員もするくらいの優等生で、君に憧れてる男子ってきっと沢山いるだろう。性格も良いし、まだ付き合い短いけど俺達にだって優しいし困った時は助けてくれるし」


「きゅ、急にどうしたの!? 私、ケンピくんに告白でもされちゃうの!?まだ心の準備出来てないよぉ」


「いや、それは無いから。 ただ、1つだけ八田さんに伝えたいことがあるんだ」


「え?なんだろ・・・ちょっと怖くなってきたんだけど」


「美少女のくせにウンチウンチ言ってて超台無し! 糸こんにゃくとかリアルに想像しちゃうからヤメレ!この残念美少女!!!」


「えーでも本当なんだよ?糸こんにゃくがウンチに混ざってたの」


「ふむふむ、確かに糸こんにゃく入りも興味を惹かれますね。3人で試してみましょうか? 実際に後で糸こんにゃく食べて明日の朝どうなるか。ぐふふふ」


 やんややんやと二人ともウンコの話題から離れようとしないので、ワラシと八田さんを順番に両手でほっぺツネって縦縦横横してから引っ張って強制的に黙らせた。



 会計を済ませてダンボールとエコバックに買い込んだ食材を詰め込んでから、フードコートへ行き母さん達と合流して、ソフトクリーム買って休憩。


 ワラシが抹茶で八田さんがバニラ、俺はチョコ。


「みんなでお買い物楽しいけど、疲れちゃったね」


「ええ、私もウインナー吟味するのに集中し過ぎて疲れました。こんなにも真剣にウインナーと向き合うのは初めてです」


「俺は二人の相手するのが一番疲れたよ。二人とも浮かれすぎ」



 ちょっぴり疲れた俺たちは、ソフトクリームを一口づつ交換しあい、ワラシだけでなく八田さんとも関節キスをしてしまったが、八田さんが全く意識していない様子だったから、俺もそのことに敢えて触れなかった。









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