2章 仲間に助けられて過去に決着
#16 不穏な兆し
月曜日の朝、学校に行くと、石垣は教室ではいつも通りにしてくれていた。
正直、石垣のことはちょっと心配だったんだよな。
悪気は無いけど、バラしたり人前で揶揄ったりするんじゃないかって。
でも、多分だけど、石垣だってワラシがどういう子(人見知りで目立ちたくないって思ってる)かはある程度は知ってるだろうから、そのことへの配慮はしてくれたんだろうと思った。
ワラシの方も、相変わらずいつも通りで、目立たない様にこっそり俺に手を振ってくれたりしてて、俺も不自然にならない様に挨拶をしていた。
そして、自分の席に着くと、後ろから背中をツンツンされた。
お馴染み、宮森さんだ。
「ん?なに?」
「おはよ。 なんか今日は機嫌悪くない?」
むむ
昨日の石垣の話(宮森さんは俺に構って欲しいから絡んでくる説)の影響か、無意識に警戒するのが態度にでてしまったのだろうか。
「そんなこと無いと思うよ。
「え?ケンピくん、スィーツとか好きなの?」
「あ、いま、ブサイクがスィーツとか、マジでキモイとか思っただろ? 顔にそう書いてあるよ?」
「いや、そんなことひとっ言も言ってないじゃん!被害妄想酷すぎ!」
「ふっ、被害妄想だって? 俺がいままで「ブサイク」だの「キモイ」だのどれだけの言葉の凶器で切りつけられてきたのか、教えてあげようか? 被害妄想とかそんな甘っちょろい言葉で片づけられるなんて、心外なんだけど?」
「うわぁ、メンドクセー。そういうトコじゃないの?キモイって言われちゃうの」
「余計なお世話だな。 自分がキモイのなんて、今更言われなくても分かってますよって話だし」
俺はこの不毛な会話を続けたくなかったので、いつものように前を向いて腕を組み、目を瞑った。
俺は瞑想しながら、ワラシとの仲をハグの次に進めるにはどうすれば良いかを考え始めた。
多分ワラシは、俺がキスしようとしても拒否しないだろう。
ワラシの俺への愛情は本物だ。
いくらブサイクで卑屈な俺でも、これだけは自信を持って言える。
じゃぁ何がダメかと言うと、俺の方だろう。
キスする勇気とか、雰囲気作りとか、タイミングを読む力とか、そういう能力を全く持ち合わせてない。
前にワラシがシステムメッセージの真似するギャグをしてた時に、キスのスキルを取得することを聞いてみたことがあった。
あの時は、「ソノシツモンニハオコタエデキマセン」って答えて貰えなかった。
ギャグに併せてのその場のノリみたいなので、あの時はワラシも恥ずかしくて答えられなかったんだろうけど、今思うと意外と的を得ている様に思える。
俺がキスをするスキルを身に付けるのは、物凄くハードルが高く感じる。
ワラシが言うコウカンドをちょっと上げたくらいで俺はそういうことに対する勇気とかそう簡単に持てるようになれるとは思えない。
モテない男はヘタレだからいつまで経ってもモテないってヤツだろうな。
それに、俺がヘタっている間に、ワラシの方からキスしてくれちゃいそうな気もする。
実際に、初めてハグしたのもワラシからだったし。
そういえば、告白もワラシからだったな。
ワラシって、人見知りで大人しくて根暗なキャラのクセに、凄い行動力を隠し持ってたよな。
俺は、女の子に告白とか絶対無理だったし。
1年の時、告白したつもり無いのに、勝手にそういう風に受け取られた挙句、大騒ぎされて悪者扱いで謝罪まで要求されたことあったからな。あれ以来、女子に好意を向けるの避けてたし、好意持ってるって勘違いされないように、自分のことブサイクブサイクって自虐で言い続けて「俺みたいなブサイク、あなたのことを好きになったりしませんので安心してくださいね」ってアピール続けて来たんだし。
そんなことを瞑想しながら考えていると、耳に「ふぅ~」と息掛けられて、心臓が止まるかと思うほどビックリした。
息吹きかけて来た犯人は、やはり宮森さんだった。
「ねぇ、聞いてる?」
「むむ?なんの話だ? 俺はいま日課の瞑想中だから、宮森さんの話は何も聞いてなかったぞ」
「だから、アキちゃんの話だって!」
「アキちゃん? 誰それ?」
「千葉アキちゃん! 1年の時にケンピくんが告った子!」
「千葉? 悪いが千葉の話題は勘弁してくれ。 それと俺は千葉に告ったつもりは無い。 あの時もそう主張したが、逆に嘘かよ!って悪者にされたけど、そもそも告白してないのに勝手に嘘つき呼ばわりで一方的に俺だけ悪者にされて、俺にとったら千葉は疫病神でしか無いからな、胸糞悪い。 俺の前で千葉の話題はNGだと思ってくれ。以上、終わり」
「あ、もう!」
その後、俺は宮森さんから話しかけられても、ウンともスンとも反応しないようにした。
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