#13 男の子の恋愛観 パート1



 ワラシと恋人になってからというもの、俺の頭の中はワラシのことでいっぱいだった。



 つい最近まで自分に恋人が出来るとは考えても居なかったし、1年の時に色々あって、特別に好きになる子も居なかった。


 周りの同級生たちの間で、誰々がどの子と付き合いだしたとかそういう話を聞いては、羨ましいと思ったり、自分もいつか彼女が出来て周りから羨ましがられる様な恋愛をしたいと、どこか漠然と考えていた。


 しかし同時に、自分のような容姿の劣った男と恋人になってくれるような物好きも居ないよな、と戦う前から諦めても居た。



 だから、ワラシに告白されたことや、ワラシが話してくれた俺を好きになった理由とか、本当に嬉しかったし、もうそれだけでワラシのことを尊敬するレベルで好きになってたんだと思う。



 そして、ここ数日毎日の様にワラシと二人での時間を過ごしていると、今まで知らなかったワラシの可愛いところとか健気なところ、面白いところを知り、今までワラシに抱いていた「地味で大人しい暗い子」というイメージとは全く違う「お喋り好きで照れ屋さんで甘えん坊で、シモネタやウンチネタが好きな面白い奴」というイメージになっていて、そのイメージは俺にとってはマイナスでは無く、ワラシの魅力として映っていた。



 だけど同時に、ワラシのことを周りのみんなが俺と同じようには見てくれないだろうな、という不安もあった。


 俺にとってワラシはとても魅力的な女の子でも、他の男子から見たら相変わらず地味で根暗な女子で、多分いま俺がワラシと付き合っていると話しても、俺の周りの友達はきっと馬鹿にしたりするんじゃないかと考えてしまう自分が居て、そんなこと考える自分に自己嫌悪したりしていて、そのことでワラシに対して申し訳ない気持ちも抱いていた。






 ワラシがウチに来た翌日の日曜日、友達の石垣と真中がウチに遊びに来ると連絡があった。 この日は、ワラシと約束はして無かったので石垣たちが来るのをOKした。


 石垣も真中も小学校の頃からの友達で、ワラシと付き合う前は一緒に帰ったり休みの日に誰かの家に集まってはゲームとかしてよく遊ぶ仲だった。



 石垣は、口癖のように「彼女欲しい」と事あるごとに言っているような奴だったけど、俺と同じく容姿が宜しくないので、今のところ彼女が出来る気配は無かった。


 逆に真中は、1年の時に彼女が出来て今でもその子と続いてて、俺たちの間では一目置かれていた。


 因みに、石垣とは2年の今も同じクラスで、真中は違うクラスだった。



 この日俺は、二人が遊びに来ることを聞いて、1つの決心をしていた。



 俺にカノジョが出来たこと。

 その相手がワラシであることを二人に打ち明けるのだ。


 二人とも同じ小学校だったから、ワラシのことは知っている。

 でもこれまで俺たちの間で、ワラシのことが話題に上るようなことは無かった。






 10時過ぎに先に真中がやってきた。


 俺の部屋で二人で対戦ゲームを始めると、ゲームをしながら真中に色々と質問をしてみた。



「休みなのにカノジョと遊びに行ったりしなくていいの?」


「へ? 珍しいね、ケンピがカノジョのこと聞いて来るの」


「そうか? でもちょっと気になってはいたかな。真中がカノジョと二人でいるときとか何してるのかとかどんな会話してるのかとか」


「へぇ~、とうとうケンピもカノジョ作る気になったとか?」


「う~ん、どうかな。 で、実際どうなの? カノジョと会ってる時とか楽しいの?」


「普通かな。 最初は楽しかったけど、最近はちょっとそうでも無いかも。なんか義務みたいな感じ?」


「義務なの?」


「うん。 何ていうか、カノジョのことは好きなんだけど、いつも一緒に居たいとは思わないんだよね。でもほったらかしにしたり冷たくしたりすると別れるとか言われちゃいそうで、それは嫌じゃん? だから別れたくないからデートしたりチャットしたりしてる感じ?」


「なるほど、だから義務みたいに感じるのか。 でもそれって、真中がモテるからそういう考えになるんだろうな。 俺とか石垣だと絶対そういう発想にはならないと思う」


「そうかな?」


「俺なんて、ただでさえブサイクでキモイって言われてるからな。そんな奴に恋人になってくれる人居たら、もう四六時中尻尾振って言う事聞いちゃいそう」


「えー、ケンピはそんなことないだろう。 ケンピって超マイペースだから女の子相手でもフラフラしないでずっと自分のペースで居そうだし」



 真中とちょっとした本音トークをしていると、遅れて石垣もやってきた。



「石垣!とうとうケンピもカノジョ欲しくなったらしいぞ!」


「マジか!? 誰か好きな子でも出来たんか? 花岡とか?それとも八田? あ!もしかして宮森か???」


 花岡さんは、俺や石垣と同じクラスだが学年中でも有名な美少女だ。

 八田さんも綺麗な子で、俺たちのクラスのクラス委員をやっている優等生で人気のある子だ。

 宮森さんは、俺の後ろの席の暴力女だ。



「宮森って誰だっけ?」


「ケンピの後ろの席の女で最近ケンピと宮森、仲良さげなんだよ。なんか怪しいと思ってたんだよな。ここんとこ一緒に帰ろうって誘っても、用事があるとか言って先に帰っちゃうし。な?ケンピ」


「あのな、宮森さんだけは無い。 アイツは短気ですぐ暴力振るってくるからな」


「いやいやいや、お前がそうでも宮森はわからんだろ? それに宮森ってケンピにしかあんな風に絡んでないぞ?宮森はケンピに構って欲しんだよ」


「へぇ~、やっぱケンピって結構紳士なとこあるしな。見てる子はちゃんと見てるってことか」


「マジ勘弁してくれ。そんな風に言われたら、明日から宮森さんの顔が見れんくなる」


「ははは、まぁ安心しろ。 ケンピより俺のが先にカノジョ作るし!」



 石垣が根拠の無い自信満々の宣言をしているが、コレはワラシのことを話すチャンスかもしれない。



「実はさ・・・今日二人に話そうと思ってたんだけど、俺もう相手居る・・・」



「「はぁ!?」」



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