#03 ケンピの想いと不満
「ワラシ。お前が俺のことを好きで居てくれたことは良く分かった。 正直言って、凄く嬉しいぞ。 だがな、不満もある」
「不満・・・?」
「ああ、不満。 もしくは希望?」
「不満とか言われると凄く不安なんですけど。もしかしてやっぱり付き合うのナシとかそういう話ですか?まだ交際初日だからクーリングオフ間に合うとか考えてるんですか?」
「いや中2でクーリングオフとか良く知ってるな。ってそれより黙って聞けよ。クーリングオフはしないから」
「・・・・・」
黙って聞けよ、と言われてお口にチャックするジェスチャーをして本当に黙るワラシ。
「ワラシに告白されて嬉しかったよ。俺、カノジョ欲しかったけどブサイクで全然モテ無いし。 それにワラシは昔からの知り合いだから女子でも緊張しない方だし。 でも正直言って今までワラシのこと異性として意識したことなかったんだよ。今日告白されて初めて意識したんだよ」
俺はワラシの目を見て話す。
ワラシは不安で緊張しているのか唇が少しだけフルフル震えていた。
「で、ワラシを女の子だって意識してみて今感じてることが不満って話で」
いよいよ本題に入ろうとすると、ワラシは俺の左腕を両手で掴み、目がうるうると今にも泣きそうな顔をしていた。
「そんな顔するなよ、言い難くなるだろ? 別にワラシのこと馬鹿にしたり嫌ったりするつもりじゃないから。 ただ、下品なシモネタとかウンチの話は止めろって言いたいの。 あと女の子が自分のウンチの写メ撮るのも止めとけ」
ワラシは俺の腕を掴む手に力を込めて泣きそうな顔のまま、フルフルと顔を左右にふった。
「あ、もう喋っていいぞ」
「もうシモネタ言わない!ウンチの報告も止める!だから私のこと捨てないで!」
ワラシが店中に聞こえる大声で、俺に捨てないでと訴えた。
「声デカイ!そういうトコだぞ!」
教室だと声小さいのにこういう時に限ってデカい声出さないで欲しい。
案の定、お店の他のお客さんたちから「あいつらヤベーな」という奇異な眼差しを向けられているし。
「いちいちシモネタ言わないとかウンチとか言う必要ないだろ? ワラシは口から言葉出す前に一度一呼吸置いて考えろよ。 さっきから失言が多すぎるぞ?」
「ううう、善処します」
「あと、俺がワラシを捨てるとか無いから。 俺みたいなモテないブサイク、好きになってくれただけでも超感謝してるし」
「じゃあじゃあ、ケンピくんは好きでも無いのに感謝のお礼で私にOKしてくれたの?」
「う~ん、それは否定できないんだけど、否定したいっていうのが正直なとこかな。 ワラシのこと女の子として意識した途端、ワラシのこと魅力的に感じてるし、そもそも俺みたいなブサイクにはカノジョを選ぶ選択権が無いんだよな。ぶっちゃけそんな俺にはワラシが勿体ないくらいじゃないかな?」
「ホントに!?ホントにそう思ってるんですか!!!私、座敷童みたいだからワラシって呼ばれてるんですよ???いつもオドオドしててキモく無いですか?」
「それ言ったら、俺もブサイクでキモいだろ?って言うしかなくなるんだけど。別にキョドってようが良いじゃん。俺の前だと全然キョドってないし。むしろうるさいくらいだし」
「ケンピくんがさっきからイケメン発言のオンパレードで全然ブサイクじゃないんですが!益々胸がキュンキュンしちゃうんですが!もう下着びしょb「コラまたシモネタになってるぞ!!!」
「あぅぅぅごめんなさい・・・・」
「いつもよりテンション上がるの分かるけど、迂闊すぎるぞ? ていうか、普通の男だったらドン引きして逃げそうだな」
「ええ、きっとケンピくんだけです。私のヘビィなトークに付いて来られるのは」
「その誉め言葉全然嬉しくないぞ。 ワラシはドコへ向かおうとしてるんだ?」
「え?ケンピくんのお嫁さんですけど?さっきも言いましたよ」
なんだろう、この「嬉しい」って感じるギリギリのラインと、「うぜぇ」って感じるギリギリのラインを同時に攻めて来るの。
いつもはキョドってる地味子のくせに、実は凄い話術の持ち主なのか?
ワラシの人心掌握術に踊らされているのか、俺は。
「まぁいいや。そろそろ帰るか。 家まで送ってくよ」
「うふふ、やっぱりケンピくんは優しいね」
お店を出ると、俺たちはどちらからともなく自然と手を繋いだ。
お互い色々本音を出し合ったお陰なのか、はたまた昔からの知り合いだからだろうか、俺たちには遠慮や緊張っていうのが既に無くなっていた。
ブサイクと地味子のカップルだし周りから色々揶揄われそうだけど、なんだかんだでワラシと一緒だと楽しくなりそうだ。
初めてカノジョが出来たこの日の夜、寝る前に「おやすみ」のメッセージを送ったら、そこから話が止まらなくなり、深夜遅くまでワラシとチャットをしてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます