兄妹の愛

尊(みこと)

第1話

「おにいちゃーん!」

「ん?どうした?」

いつも通りの日だった。





私とお兄ちゃんは保護施設にいる兄妹だ。

お母さんや、お父さんからの暴力。で、私達は保護施設に入った。

お兄ちゃんはとっても優しい。唯一、私のことを愛してくれる人だった。保護施設にいる子はたくさんいて、合計28人。みんなが兄妹みたいな状態だ。でも、私とお兄ちゃんだけは、ちゃんと兄妹。そう思っていた。



「お兄ちゃんって、今年18歳だよね?」

「うん。今年は卒業だな。」

この保護施設では、18歳が卒業ということで、この施設を出ていくことになる。

私は15歳。あと3年だった。


「お兄ちゃん!私が卒業したら、一緒に暮らそうね!」

「………あ、あぁ、…」

「どうしたの?お兄ちゃん?」

「いや、なんでもない。ほら。もうご飯の時間だ!」

そしてご飯を食べ終わった。

「ねえねえ!お兄ちゃん!」

「ごめん、遥奈はるなさんに呼ばれてて、」

「そっか、…」

遥奈さんはここの管理をしているお姉さん。


「はい。はい。仕方ないですよね、やっぱ、」

お兄ちゃんのそんな声が聞こえた。


そして数分後。

「お兄ちゃん、さっきは何があったの?」

「…なお……ごめんな……っ……」

お兄ちゃんは泣きながらそう話した。

「え?なに?どうしたの?」

「実はな、… 俺と真は兄妹じゃないんだ。、… 俺ははじめからそれを知っていた。あの、真が5歳のときから、… 真は可愛いからって父親が連れてきた捨て子。俺はあそこの夫婦の子供だった。それで、結果、。捨てられた。したら遥奈さんに拾ってもらえた。それで、実は戸籍でも、俺達は他人。保護施設から卒業したら、俺達は赤の他人なんだよ、… だから、もう、真とは、お兄ちゃんとか、言えなくなる。、…」

お兄ちゃんはうつむいていた。

「ねぇ、お兄ちゃん。私はそれがいい。」

「え?」

「私は、お兄ちゃんが大好きだし、それは、兄妹愛じゃなくて、恋愛としても。、 実はね、ここの施設に入ってきたとき、私いじめられてたじゃん。それ、めちゃくちゃ怖かった。でも、お兄ちゃんが助けてくれた。その時、お兄ちゃんへ恋が芽生えた。私も初恋だった。びっくりした。でもね、私は本当にお兄ちゃんが好きなんだなって、大好きなんだなって、愛してるんだなってつい最近気がついた。だから、私は兄妹という関係じゃなくて恋人っていう関係になりたい。」











「お兄ちゃん、いや、咲也さくやくん。私は咲也くんが大好きです。お願いします。付き合ってください。」

私は大きな力を振り絞った。兄妹だったら、繋がっていける。恋人だったら、とっても濃いか、透明か、ただそれだけ。

「ありがとう、真。ごめん、俺にはできない。俺は今まで真のお兄ちゃんだった。でも、それをいきなり恋には変えることはできない。」

「そっか、そうだよね、仕方ないよね、兄妹、でもないか、… ごめんね。」

「ごめんな、真。本当に、ごめんな、、」

「うん。…」

「ごめんな。ごめんな。本当に、ごめんな。…」

お兄ちゃんはそう、ごめんなを繰り返す。



「でもな、真。一つ。お前は生きてていいんだぞ。」



私はまだ、あの親のもとにいるとき、8歳ぐらいのとき。死ねと、たくさん言われた。あげく、自分で生きてないほうがいいって自殺しようとしたときもあった。

その時、お兄ちゃんだけは私のことを心配してくれたし、優しくしてくれた。多分それをまた心配しているのだろう。やっぱりお兄ちゃんはとても優しい。





「うん、わかった。」



そして、その日から私はどうしていいかわからなくなった。

そしてお兄ちゃん卒業当日。

「っ……ふぅ、っ……っ……」

私は並んだ後ろで静かに泣いていた。



「咲也くん。今までありがとうね。」

そう、遥奈さんが言った。

「はい。遥奈さん。ありがとうございました。 真。」

「え?私?…、」

「真、本当にありがとう。大好きだ。また、真が18歳になったら遊ぼう。」

「……っ。… 泣かせないでよっ…」

そして私は微笑んだ。






それから3年間。私は一人になった。孤独を味わった。お兄ちゃんの大切さを思い知った。

そしてまたいつもの鏡の前に立つ。




泣いてしまった。







「真に、プレゼントだ!」

お兄ちゃんが最後にくれたプレゼント。それは大きな鏡。でも今はそこまで大きいと感じなくなった。私は成長期が遅かったんだ。そう思った。



そして鏡に近寄った。ふちの上に文字が書かれていた。

「卒業したら、ここにこい。」その文字と住所。


「お、兄ちゃん………」

私はこんなに泣いたことはないと思う。







「ねぇ、真ちゃん、もう真ちゃんも卒業ね。今までありがとうね。」

「はい。遥奈さん。ありがとうございました。」

「ふふっ、ほんと、咲也くんとそっくりね。」

「そうですか?」




「それでは、今まで本当にありがとうございました。」

そして私は施設を出た。10年間住んだ施設。それはもう良くも悪くも思い出しかなかった。そして私はすぐあの住所のもとへ向かった。




するとそこにはお姉ちゃんがいた。私が5歳のときにあの親に早くも捨てられたお姉ちゃんだ。


「真。久しぶり。」

二人は声を合わせ、こっちをみてそういった。


「お兄ちゃん。お姉ちゃん。、…ありがとう。…本当に。、ありがとう。ありがとう。」

心の底からそう言えた。



「お兄ちゃんとお姉ちゃんは優しいから。、…  私はずっとお兄ちゃんとお姉ちゃんが大好き。もう、お兄ちゃんでも、お姉ちゃんでもないんだとは思うけどね。…」



「あのね、真。私とお兄ちゃんは双子なの。」

「え?」

「そう。だから、一応兄妹。でもさ、真だって、立派な私達の兄弟だよ。」


「うん。ありがとう。」


「なぁ、真。」

「ん?なに?お兄ちゃん。」

「あのときは断ってごめん。俺も真のこと好きだったみたい。付き合おう。」

「え?、…」

こんなことあるんだ。そう思った。


「うん、私もお兄ちゃんのこと、大好きだよ。」

そして私はお兄ちゃんと付き合うことになった。いや、もうずっと前からお兄ちゃんではないが、やっぱお兄ちゃんがしっくりきた。




そして、あれから数年後。私達はあの保護施設で働いている。

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兄妹の愛 尊(みこと) @mikorintan

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