第10話 おっさん無双

「お疲れ様!また店でなっ。」

 同僚に挨拶し、宿に向かう。


 拉致され森で死にかけてから半月以上経っていた。

 私は、今バーチという街で暮らしている。あれから森を抜けた私は、街道に出てここまでたどり着いたのだ。

 門兵に、ハクサンという人物の手のものに拉致された事、一角の怪物に襲われながらもここまでたどり着いた事など…一部始終説明し、街に身を寄せるに至った。

 

 ラキーバに戻るならと言われたが、拉致された街に戻る気にはならず、商会の荷運びなどの仕事をしながらやっと落ち着いて過ごしていた。


 ハクサンに関してはラキーバに通達が行き、捜査が行われるみたいだ。同じように拉致された人たちが解放される事を切に思う。自分に出来る事はそれくらいである。


 宿に戻ると、これからの事を考える。まず身体ついてだ。

 これについては、説明やチュートリアルもなかったので、私の勝手な解釈とステータス画面で想定するしかない。


以前

【ユウイチ イチカワ】

種族 人間

スキル 順応

言語能力 識字能力 菌耐性1 筋力上昇1 疲労耐性1 物理耐性2 苦痛耐性2


現在

【ユウイチ イチカワ】

種族 人間

スキル 順応

言語能力 識字能力 菌耐性1 筋力上昇1→3 疲労耐性1→3 物理耐性2→4 苦痛耐性2→3 気配察知1 気配遮断1 自然治癒2 恐怖耐性1 飢餓耐性1


 と、効果が分かるようで分からない項目が増えていたり、数値が上がっていたりした。


(ものすごい能力なのかもしれないが、順応するまで耐えなきゃいけないみたいで正直あえて強化しようとは思えないな…ハードすぎるだろ…)


 昔やったゲームなら、毒喰らいまくったりとひたすら周回作業なんだろうけど、生身でやれる気がしない。

 

 それからこれからについてだ。なんの前触れもなくこっちに来た私は、散々な目に合ってるだけで、未だ目的や目標などがない。

 特に使命や他者の思惑もないため、現状その日暮らしである。


 せっかくというか、こっちに来てしまった以上思うように生きていきたいと思ってはいる。

 金も稼ぎたいし、色々旅もしてみたい。素敵な女性にも出逢いたいし、スローライフみたいな事もしてみたい。


 そう考えるとまだまだ課題が山積みだ。考えるのを諦め、同僚の待つ酒場に向かった。


 「お!来たなユーイチ!こっちこっち。」


 店に入ると、同僚のカーセルが手招きする。


「待たせた。お疲れカーセル。」


 歳も近いせいか気も合ったので、よくこうして夕食を一緒にする。


 ビールのような常温の飲み物で乾杯し、いつものように他愛もない話をしながら食事にありつく。

 

 飲み物もそうなんだが、食べ物もやはり元いた世界の方が断然美味かった。初めは物珍しさから気にもしてなかったが、今は恋しくて仕方ない。

 ここでこんなのどうか、こうしたらどうかなんて、場末の酒場から革命ってのがお約束だ。

 しかし、残念な事に酒の作り方も分からないし、調味料も作れない。料理もそこそこ出来るとはいえ、調味料ありきだから役には立たない。

 フィクションの世界はなんで知識豊富なんだよ。自分が知らなすぎるだけなのか、今となっては確かめようもない。


 食事も済み談笑していると、


 「なぁ?この後いいとこ行かないか?まだ金もあるだろ。」


「まぁな、構わないぞ。」


 飲み足りないのかカーセルが珍しく誘う。たまに違う店もいいなと思い、店を後にする。


「どこの店に行くんだ?」

 

 「着いてからのお楽しみだ。」


 思わせぶりに連れて行かれると、少し綺麗な外見の建物についた。


 「「いらっしゃいませ」」


 綺麗な声で出迎えられる。

 

 「2人いいかい?」


 そういうと、席に案内され酒が出る。


「なぁここって…」


 すると、視線に困る服の女性たちが席に着く。


(キャバクラ的なやつなのか…っ)

 

 想定してなかったとはいえ、おっさんながら緊張でいっぱいになる。


 「ユーイチ、初めてか?連れてきた甲斐があるな。楽しもうじゃないか。」


 カーセルはニヤニヤと言う。いや!童貞でもないし、これは突然で驚いてるから仕方ないだけだ。

 決してそんなんではない…


 私に付いた女性は、30歳前後のスタイル抜群の銀髪ロングの色白美人だった。

 終始目のやり場に困りながら楽しく飲んだ。


 「この後どうする?」


 小声で女性に囁かれる。


「なっ…ちょ…」


 慌ててカーセルに助けを求める。すると、ここはそういう店だと言われた。

 キャバクラかと思ったら、もっとハードルが高かった。枯れてはないが、そういうのには落ち着いたはずだったのだが…○学生並みに頭がいっぱいになる。


 「私は好みじゃないのかしら…?」


 その顔は反則じゃないかと思う…


「そ、そんな事ない!ないですっ!」


 焦り方がもうそれだった。ニコッと女性が微笑むと、2階に手を引かれて行く。横目で、カーセルがひらひらと手を振っていた。


 「さぁ…今夜は楽しみましょ?」


 完全に童貞扱いの女性に、複雑な気分だったが正直我慢なんて出来ない。ハーレム主人公は、若いのによく我慢出来るなと余計な事を考える。本当に尊敬します。

 おっさんなので自分に期待なんかしてなかったのだが…


 「ちょ…あ…待って…えっ…え」


 エロは何事も成長が早いと、技術革新がその証拠と何かで聞いた事がある。

 それは私の順応も例外でなく、完全に立場が逆転し終わらない夜が始まったのである。



【ユウイチ イチカワ】

種族 人間

スキル 順応

言語能力 識字能力 菌耐性1 筋力上昇3 疲労耐性3 物理耐性4 苦痛耐性3 気配察知1 気配遮断1 自然治癒2 恐怖耐性1 飢餓耐性1   

New精力増強1→3




 





 

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