ジェイソンとフレディ
もりくぼの小隊
ジェイソンとフレディ
あたしはアンパンが好きだ。なぜ好きかというと単純に甘いアンコが好みだというのもあるが地味なあたしに一番ぴったりな食べ物がアンパンだと思うからだ。まぁ、理由付けなんてしても
「おーい「ジェイソン」おまたせ~っと」
そんな、あたしの地味な幸福時間を切り裂く悪魔が待ってもねえのに、やってきやがった。
「いや、
「またまたそんなツンデレなこと言わんのってぇ、うちの事を待っとたくせにぃ」
「だから、待っちょらんっての、ツンデレて意味も
「ほいほいほーいっと」
あたしの毒々な呟きも右から左に耳から通り抜けフープしてるマイペースな
「てかさ、ジェイソンまたアンパンなん? 好きもんよねぇ。おともも牛乳とかジイちゃんが観てた大昔の刑事ドラマじゃん? ふおぉっふぉっふぉっッ、ヤバいツボにきちゃった」
「アンパンと牛乳は美味い相棒だって知らねぇのかよ、勝手にツボっときな」
あたしの目の前で宇宙忍者ゼミかぺこ〜らちゃんみたいな独創的な笑い方をするこいつの名前は「
「てかさてかさ、ジェイソンさぁ」
こいつはあたしの事を「ジェイソン」と呼ぶが別にあたしはアメリカ人じゃねえし男でもない。地味地味な和製女だ。お父ちゃんは周防大島出身でお母ちゃんは錦町出身の純ド田舎山口県人のサラブレッドなのがこのあたしだ。名前はまだない、いや嘘だね、名前はあるね。「
『ええっ「こえい」じゃなくて「こはな」なん。ふぉっふぉっ読めんわぁッ』
と、いきなり失礼極まりないぶっ込みを初対面でしてきたのもこいつだ。あたしだって普通に地味な「
『んじゃ、うちは「ジェイソン」て呼ぶ事にすんわ』
んで、何故かその場で「ジェイソン」て意味のわからねえニックネームを着けられた。本人曰く「寺村」のまん中に「英」をねじ込むと「
で、妙に癪に障ったんであたしは苦手なホラーを頑張って調べてこいつの事を同じホラー殺人鬼から「フレディ」て呼ぶことにした。え、フレデリカて呼べばいいじゃんて? イヤだよ、あたしにとってのフレデリカはデレステの「フレちゃん」だけなんだから。
『え、マジで! あ、夢街で「エルム街の悪夢」とも掛けとんの。うわ、エモすぎないッ』
等の本人に言ってやったら妙にテンション上がって悦びやがった。どうもホラーマニアだったらしい。いや、知らねぇよッ。そこまで考えてねえわこちとらよッ。
「で、Youは何しに日本の女子高生の前に来とんの?」
で、現実に戻ってきましてあたしの目の前で長いつけ爪キラッキラな指でバーガーもぐもぐしてる目の前のフレディにジトッと聞いてみた。早く平穏に残り時間は惰眠を貪るですしたいんですよこっちは。
「うちだって日本の女子高生よ? 自慢じゃないけど、英語は赤点確実なんよねぇ」
「ホントに自慢なんねぇな、とっとと勉強してきな」
「チッチッチッ、勉強するなんて日本じゃあ二番目だ」
おいそのズバット参上ネタ、このクラスじゃアタシ以外には通じねえぞ。このあとは何だ、何時何分になんたらしたってか、シチリア島でスパゲッティ食べてたて言えばいいの?
などと、長い睫毛に縁取られた茶色目をジットリと興味なさげに眺めていると、フレディはニンマリと口を笑わせて、長いつけ爪で摘んだ一枚のチケットらしき紙切れをあたしの前に差し出した。
「次の日曜日に「
ハァ、フレディさんよ、そりゃおまえさぁ。
「行くに決まってんだろ。刀らぶはあたしらの義務教育だべ?」
「よっしゃ、じゃ、当日ヨロシクッ」
「てか新刀剣男士「
くっそう、こいつと出掛けるのに楽しみになっちゃったじゃんかちきしょう。
――了
※柏原美術館=旧岩国美術館で刀剣乱舞さんのコラボ刀展示第二弾はやっておりません。またコラボ展示やれるといいですね。
ジェイソンとフレディ もりくぼの小隊 @rasu-toru
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