素材13 王国スタート・金髪ヒロイン
俺はトラックに轢かれた。目が覚めた時俺がいたのは病院ではなくどこか見知らぬ部屋の中だった。そこはまるで中世ヨーロッパの貴族が住んでいるような豪華な作りになっていた部屋だった。しかし家具はどれも高価なもののようで品があるものだった。窓にはステンドグラスで彩られた美しいガラス製の装飾が施されたもので太陽の光が差し込んできており幻想的な風景となっていた。
(なんだ?ここは……それに一体誰がこんな場所へ連れてきたんだ)
俺は戸惑いつつもその状況を把握しようとした。まず自分の姿を確認するがいつもと変わらないジャージ姿で怪我などもしていないようだ……よかった。そして次に周囲を見てみたが全く記憶がなかったのだ。
そもそもここどこだよ?! そんなことを考えていると扉からノック音が聞こえた。すると中に入って来た人物がいた。それは女性であった。彼女は金色の長い髪に青い瞳をしておりとても美しく可憐な容姿をしていた。年齢は恐らく二十代前半といったところだろうか。服装はとても上質なものに見える白いドレスを着ていた。その姿を見た瞬間俺はドキッとした。
(かっ可愛い……!)
そう思ったところでハッとなった。いや待てよ。この女に見覚えはないぞ……。一体誰だこいつ。
「あのー……」
彼女はおずおずと話し始めた。
「えっとあなたはどなたですか?」
「あっはい僕は佐藤拓海っていいます」
とりあえず自己紹介を済ませた。それを聞いた女性は驚いた顔をしていた。
「タクミさんですね。私はソフィア・フォン・ダンケルフェルガーといいます」
彼女の名前を聞いてさらに混乱した。その名前はゲームとかでよく出てくるような貴族の名前じゃないか……。ますますどういうことなのかわからない。これは夢なのか?でも夢にしてはあまり現実的すぎる気がする。それとさっきから気になっていることがある。それは目の前にいる彼女のことだ。彼女からは今まで会ったことのないオーラのような気配を感じる。それは何か特別なものを持っているという感覚に近いものだ。「どうかしましたか?」
考え込んでいると彼女が心配そうな顔をしながら尋ねて来た。
「いえなんでもないです」
慌てて否定したが少し怪しかったかもしれない。まあ気にしないでおこう。それよりももっと色々聞きたいことがあったんだった。
「すみません、ちょっと質問してもいいでしょうか?」
「はいどうぞ!」
元気よく返事をした彼女に若干圧倒されつつ尋ねることにした。
「先ほどあなたの名前を伺ったのですがそれは本当の名なのでしょうか?」
「えっ?」
どういうことだ?ここは日本ではないということか?しかしなぜ日本にいないはずの俺がここにいるんだ?まさか本当に死んだんじゃないだろうな……。もしそうだとするとここは天国ということになるのだが……。
「あのうもしかして私を騙そうとしていますか?もしそうであるなら正直に答えてくださいね」
彼女は疑っている様子だったが仕方がないと思ったらしく本当だと認めた。だがそれと同時に衝撃的事実が発覚した。
「実は私この国の王女をしているんですけど……」
「へぇ〜そうなんだ…………はい?今なんて言いました?」
思わず耳を疑いそうになった。嘘だろ?!
「だからこの国のお姫様ですよ。それで私のことを誘拐してきて身代金を要求するつもりでしょう?残念ながらお金なんて持っていないので諦めてくださいね」
彼女は申し訳なさそうに言った。
「違います!!俺はただ道端で倒れていたところを拾われてここに運ばれてきただけです!!」
必死になって誤解を解くことに成功した。危なかった……。危うくとんでもない勘違いをされるところだった。
「じゃあなんでいきなり倒れていたんですか?普通ありえないと思うんですけど」
「そっそれは……信じてもらえるかわかりませんが俺は死んでしまったはずなのですが目が覚めるとなぜかこんなところにいてわけがわからなくて戸惑っていたんですよ……」
「大丈夫ですか?!頭をぶつけたんじゃありませんか?」
「いや俺は至って正常ですから。むしろ俺の方が聞きたいくらいなんですよ」
俺は真剣な表情をして訴えた。
「わっわかりました。ではあなたの話を信じましょう。一応確認しますがその話は誰かにしたことはありますか?」
「いいえ誰にも言っていませんよ。それに俺だってまだ頭の整理ができていませんし……」
「そうですか。でも困りましたね。この国にはそういった事例が存在しないため対処できないかもしれません。それにあなたにも生活があるでしょう。このまま帰らなければきっとご家族の方も心配していると思いますよ」
「確かにその通りですね……。だけど一体どうやって帰るんですか?」
「それは……わからないです」
ソフィアさんは暗い顔をしていた。
「とりあえず今は休んでください。また何かあった時はこちらからも連絡をするということでよろしいでしょうか?」
「はい……お願いします。ありがとうございます」
こうして俺はしばらくこの家で暮らすことになった。
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