素材10 魔法戦争を止めるため
俺はトラックに轢かれた。その瞬間、俺の意識は途切れた。…………。
そして今に至る。
どうやら俺は死んだらしい。
「ここがあの世か」
辺りを見渡すと、真っ白な空間が広がっていた。
なんとも幻想的な場所だ。だがしかし、誰もいない。
「おーい!誰かいませんかー!」
俺は大声で叫んだ。すると遠くの方から足音が聞こえてきた。
よかった。人がいるようだ。これでこの訳も分からない状況から抜け出せるぞ。
「はいはい。そんなに大きな声を出さなくてもちゃんと聞こえてるよ」
現れたのは金髪の女性だった。年齢は20代後半くらいだろうか? とても綺麗な人だった。
「あなたは?」
「私は女神だよ」
「め、女神!?」
まさか本当に女神様がいたなんて。
俺はてっきり死後の世界というのは、地獄のような恐ろしいところだとばかり思っていた。でもここは天国なのか?それとも地獄に行く前に通る待合室みたいなものなのか?
「君には悪いんだけどね。君は死んでしまったんだ」
「そうですか」やっぱり俺は死んでいたのか。
ということは、やはりここは死後の世界というわけか。
「ごめんね。私達の手違いで君の人生を台無しにしてしまって」
「えっ?」
どういうことだ? 手違いってなんだ?
「実はある世界で大きな戦争が起こっていてね。その世界では魔法と呼ばれる不思議な力を使う人間達がいるんだよ」
「はい」
それは知っている。地球でもファンタジー小説などでよく使われる設定だからな。
「その世界で、魔法を使える人間は特別な存在として扱われているんだ。でも中にはその力を悪用する人もいるんだよね。例えば他人の命を奪ったりとか。それで今回の戦争で、多くの人間が魔法の力を手に入れようと争い始めたんだ」
「つまり戦争の原因はその魔法というものが原因ということですか?」
「うん。そうなんだ。それで君が暮らしていた世界にもその影響が出始めてしまったんだ」
「俺が住んでいた世界に?」
「そう。君は元々あちらの世界の人間じゃなかっただろう?」
確かにそうだ。俺は日本生まれの日本人だ。
なのになぜ俺はこんな場所にいるんだろうか?
「そのせいで、こちらの世界に影響が出てきちゃったんだ。その結果、魔法の力を手に入れるために大勢の人が命を落としたんだ」
「なるほど」
「だから君には申し訳ないとは思っているんだけど、元いた世界に戻ることはできないんだ」
「そうですか」
別に未練があるわけではないけど、せっかくならもう少し生きていたかったという思いはある。
「ただね。君にはまだチャンスがあるんだ」
「チャンスですか?」
「そう! 君は異世界に行ってみたくないかい?」
「異世界……ですか?」
「そうだよ! 実はあっちの世界にまだ残っているんだよね。魔法の力が」
マジか! それは嬉しい情報だ!
「そこでどうだい? 君さえ良ければ異世界で新しい人生を送ってみる気はないかな?」
「ぜひお願いします!」
「即答だね。分かったよ。それじゃあ準備をしようか」
そう言うと女神様は俺に向かって手をかざした。
すると体が光に包まれた。これはもしかして転送されるのか?
「それじゃあ頑張ってきてね! 君の未来に幸運あれ!」
女神様の声を聞きながら俺は意識を失った。
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