給料

 あれから二週間弱が経ち今日はとうとう25日。

 すなわち、給料日である。

 他のバイトさん達がそわそわしている中一人だけテキパキと動いている少女がいた。

 ...目黒さんだ。

「内田くん、スペアリブの仕込み終わったよ」

「ん、ありがと!」

 お昼帯が一番客先が多くなる為、食材や料理の準備が不足してしまう事がある。

 なので、今回目黒さんがスペアリブの仕込みをしてくれたのだがこれは本来、他のバイトさんの仕事だ。

 おそらく、忘れていたのだろう。

 自分自身の仕事も完璧にこなしかつ他の人のカバーもする。

 目黒さんはこの喫茶店においてかなりの戦力になっていた。

 なんなら俺なんて余裕で超えている。



 それから営業時間後、俺は全員に給与明細を配り店閉めをしていた。

「内田くん、ちょっと良いかな?」

 てっきりもう帰ったと思っていた目黒さんの声が背後から聞こえてきた。

「これ、11200円!ドリンク代、初めて来た時以外は立て替えてくれてたでしょ?」

 完全に忘れていた。

 何でもお小遣いがあまり貰えないそうなので、期限なしで貸していたのだ。

「ありがと!」

「...お礼を言うのは私の方だよ~!ホントにありがとね」

 目黒さんは満面の笑みを浮かべこちらを見つめてきた。

「でも、11200円も渡しちゃったら残り少なくなっちゃっわない?半分でも...」

「全然、大丈夫だよ~!どうせ、後はお母さんへのプレゼント買うだけだし」

「...そっか」

「うん!仲直り出来るかもしれないしね~」

 あの母親がプレゼント一つで変わるのだろうか?

 俺は目黒さんの笑みを見ていると胸がギュッと締め付けられた。

 他人は変えられないと言うがそれは間違えだ。

 バカとクズが変われないのだ。

 バカは自分勝手な解釈をするしクズは独善的な思考しか出来ない。

「...仲直り出来るといいね」

 俺はそう言い頭を冷やす為、一度外へ出たのだった。

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