デートと焼き鳥

一色 サラ

第1話

「ねえ、この店に入らない?」

「俺も匂いに誘われたわ」

「やっぱり」

 少し照れくさそうな玲奈れいなに目が合ってしまった。浩平こうへいは照れくさくなってしまった。


一週間前に、大学2年の授業を同じ教室で受けていた玲奈に話しかけよと、前の方に座っている玲奈の元に向かって階段を降りて行った。

意を決して、

「玲奈ちゃん、お疲れ様」

「お疲れ様。どうしたの?何かあった?成川君。」

「あっ、来週の火曜って空いてるかなと思って?」

「来週の火曜?? なんで?」

「学校が休校でしょう?」

「そっか、臨時休業するって言ってたっけ?」

「で、単刀直入に聞いてしまっているけど、火曜日は空いてる?」

「空いてるけど…、映画を観に行くなら会ってもいいよ」

「いいの!映画いいね!!観たい映画とかある?」

「うん」


 浩平はソワソワしながら、あまり観たことのない青春系の恋愛映画を隣の玲奈の存在を感じながら映画を2時間を過ごした。映画の内容よりも、隣の玲奈のことばかりが気になって、あまり集中できなかった。


 映画を観た後、13時が過ぎていた。

「お昼どうする?」

玲奈に聞かれて、ドキッとした。

 前に、映画だけ観て、お昼を食べずに女性の方が先に帰ってしまった話を友人の山田から聞いていたので、安堵が起きた。

「下の階って、レストラン街みたいだよ」

エスカレーターの横にある館内案内を見ながら、浩平は言った。

「そうみたいだね。行ってみる?」

「うん。そこで何か食べよっか」

「そうしよう。」


 映画館のあるショッピングモール内にあるレストラン街に、焼き鳥の匂いが漂ってきた。


『ここから、、、炭火焼鳥』という名前の店に入って行った。


「何食べたい?」

玲奈はメニューを見ながら、悩んでいる。

「やっぱり、ねぎまは外せないのよね」

「そうなんだ。ももとか、せせりも美味しいそうだよ。」

「そうだね。ほんとに迷うわ。」

夢中に、メニューを見ている玲奈はやっぱり可愛い。

浩平は玲奈の持っているメニューに指をさした。

「じゃあ、この6種類の2本ずつが入っている6種12本入りを頼んでみる?」

「うん、それいいね。そうしよう。ああ、ボタン押す?」

浩平がうなずくと、玲奈は呼び出しボタンを押した。

「あと、飲み物はどうする?」

「ビールとか飲んでもいい?」

「玲奈ちゃんって、昼から飲むんだ。」

「ダメ?」

「別にいいよ」

「ありがとう」


「お待たせ、しました。ご注文をお伺いします。」

「じゃあ、6種12本入りと、生ビール2つで」

「かしこまりました」


すぐに、ビールが運ばれてきた。乾杯をして、観た映画の感想を話す。楽しそうに、あそこ良かったね、あそこ感動したと話す玲奈と見ていると、こっちまで楽しくなっていく。


「お待たせしました」

タレの『もも』『ねぎま』『つくね』、塩の『せせり』『砂肝』『ぼんじり』の入った2つの皿が置かれた。


「じゃあ、食べよっか」

「うん。いただきます」

玲奈は玲奈は最初にモモを1本、さらに串から外して、一つ箸で掴んで口に入れた。

「美味しい?」

「うん、美味しいよ。この甘ったるいタレがマッチしていて凄く美味しい」

浩平は直接、串に刺さったままのモモを食べた。

「うまいね」

せせりもちょうどいい加減に塩が振られていて、美味しかった。玲奈は外せないと言っていた”ねぎま”を最後に串のまま食べていた。


これが、玲奈との初デートだった。あれから10年、玲奈と一緒に焼き鳥屋を開くことになるとは思ってもいなかった。

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デートと焼き鳥 一色 サラ @Saku89make

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