第200話 不思議な再会

 入り口で少し手間取ってしまったけれど、概ね予定通りに研究塔の中へ侵入する事が出来た。後頭部がズキズキと痛むけど他は無傷だし、侵入に気付かれた様子もないので下見は継続中だ。


 エスカレーターやエレベーターがないこの世界では、目的地である最上階まで5階分の階段を上らないと辿り着く事が出来ない。その間誰にも見付からないよう常にMAPを見ながら警戒しつつ、移動しなければいけない。


 しかも階段が各階に1つしかなく、それもあちこちに点在している。侵入者対策としては理にかなっているけど、これって実際にこの塔で研究している魔道士達には使い勝手が悪いのでは!?


「あーーーもーーー!また前から誰か来るよ!一旦ここを曲がろう!」

「流石に簡単には進めませんね。」

「えぇ、本当にね・・・。」


 MAPを見た時は簡単に行けるだろうと思った私が甘かった。MAPを見ながら人が居ない方向へと進んでるつもりでも、迷路みたいに入り組んだ研究塔の通路は非常に厄介だ。


「もう動かないでよーーー!今度はこっち!」

「承知!」


 人は絶えず動くという事がすっぽりと頭の中から抜け落ちていた私の案内のせいで、いつの間にか前と後の両方から来た人達に完全に挟まれてしまった。逃げようにも他に通路もなく完全に手詰まりだ。


「ごめんカイ。・・・・・詰んだかも。」

「なるほど。ではここは私の出番かと!」


 MAPをカイが見られたら良かったんだけど、私しか見えないから仕方ない。武力行使しかないかと腹をくくった時、突然近くの扉が開き、魔道士姿のルークさんがひょっこり顔を出して私達に向かって手招きしている。


「あれはルーク殿?」

「いつの間に騎士の鎧から着替えたんだろうねぇ。」


 MAPで見る限り、部屋にはルークさんしか居ないっぽい。この場面で私達に手を貸すという事は、もしかしたら敵では無い?いやでも、油断したところを・・・って事も考えられる。


 どうしよう。すぐそこまで人が来ている今は、悠長に考えてる時間は無い。それに何となくだけど、彼は敵では無い気がする。今は直感を信じて、一か八か中へ入るしかない!


 カイの顔を見ると、カイも私の考えてる事を察したのか一つ頷き、急いでルークさんがいる部屋へと駆け込んだ。


「でさーあの魔道具は・・・。」

「それは・・・。」


 扉越しに息を潜めて魔道士達が通過するのをじっと待っていると、全く私達に気付く事無く魔道士達は通り過ぎていった。


「ふぅ~~~・・・、今のはあっぶなかったぁ~・・・。」

「いざとなれば私が消すのでご安心を。」

「いやいや、それ全然安心出来ないからね!?」


 緊張が解け安堵のため息を吐く私の隣で、サラッと物騒な事を言うカイ。きっといざという時が本当に来た時は、躊躇わないのだろう。中々その物騒な発想にはなれないけれど、この世界で生きていくならいつか私も選択を迫られる時が来るのかもしれないな。


「いや~危ない所だったね~!」

「危ない所だったね~!じゃないよ!騎士達に混じってたくせに、何で魔道士姿でここに居るの!?」

 ルークさんは私の問いが意外だったのか、驚いた顔でこちらを見ている。


「・・・気付いてたんだ~。」

「そりゃあれだけ最前列で活動してたルークさんが別れの日に居ないのは、違和感しかなかったしね。」

「なるほど~・・・。まあ、詳しい事情はまた落ち着いてからで~。さあさあ、今のうちに行こうよ~!」


 私の問いから逃げるように、最上階へと続く階段の方へと私の背中を押し始める。と言う事は、ルークさんは私達の目的地まで気付いているって事だね。


「まさかとは思うんだけど・・・付いてくる気?」

「もちろ~ん!俺がいた方が、何かあった時に今みたいに助けられるから便利だよ~!」

「助けてくれた事には感謝してるよ。でもここからは私とカイだけで大丈夫だから。」


 私の話を聞いていないかのように、素知らぬ顔で後ろを付いて来るルークさん。その表情はどこか楽しそうだった。


「はぁ~~~~~・・・。分かった。分かりました!付いて来て良いから。その代わり絶対に邪魔しないって誓って。」

「おっ!やっとお許しが出たぁ~。もちろん邪魔なんかしないから安心して~。それじゃあ最上階まで案内するね~!」


 やっぱり目的地知ってるし。まあ真意は分からないけど敵では無さそうだし、これ以上時間をかけるとバレる危険性が高くなる。とりあえあずこのまま最上階まで向かうとしますか。



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