第191話 歓迎会
体を清めるのは水拭きが主で、水に浸かるのは暑い日に湖に入る時ぐらい。そんなエルフ達が初めて温泉に浸かった結果・・・
「温泉最高でした!!!」
「これから毎日入っても良いって本当ですか!?」
「こんなに綺麗に汚れが落ちる石鹸を、ただで使って良いだなんて・・・。」
すっかり温泉の虜となっていた。
新しいエルフの里に造った温泉は、従業員宿舎と同じ物。もちろんシャンプーやボディーソープも備え付けてある。エルフ達は温泉に浸かり疲労もすっかり回復し、肌も髪もぴっかぴか。
綺麗に洗いあがった湯上がりエルフ達の浴衣姿の眩しい事といったら。エスプリの森に居た時のような鬼気迫った緊張感がすっかり溶け、今のエルフ達は本来持っていたであろう穏やかな雰囲気になっている。そのせいか美しさも体感で5割は増してる気がする。
直視できないぐらい美しい。リアム君が鼻を押さえてどこかへと走って行くレベル。・・・あの子、大丈夫かな。
「さあさあ、歓迎の宴を始めようじゃないかい!」
幹事であるリアム君が走り去ったので、宴会の準備を手伝っていたアンナが代わりに宴会を始める号令をかける。
「沢山食べて下さいね!お酒はほどほどに!特にヒューゴ!!!」
「俺だけ名指し!?そんなに信用無いかな俺・・・。」
「無いね。」
「無いな。」
「あるわけ無いだろ。」
「むしろあると思っていた事に驚いております。」
私やアンナ、ガイン、クレマンに散々な評価をされ、すっかりしょげてしまったヒューゴ。前科が山盛りなので、低評価は甘んじて受けてもらいましょう。
宴会を始める前から潰れた人は放っといて、お腹が空いて待ちきれない皆のためにさっさと始めちゃおう!
「エルフの皆さんようこそ温泉街へ!かんぱーい!」
「「「「「「 かんぱーい!!!」」」」」」
始めの一杯はラガービール。久しぶりに飲んだけど、やっぱりうちのビールは格別に美味しい!
冷蔵庫も出来たのでキンキンに冷やして飲みたい所だけど、このビールはあまり冷やさない方が香りが立って美味しい事に気付いたんだよね。
歓迎会用の料理は最近のド定番の唐揚げ、串カツ、枝豆、フライドポテト。串カツはエルフが好きな野菜もふんだんに使って揚げてある。
枝豆は味噌や醤油があるなら大豆もあるはず!と大豆の苗をローマンに仕入れてもらい、ソーヤーに畑で育ててもらった。おかげで酒飲み達に大好評。
もっと酒が飲みたい!もっと美味しい料理が食べたい!と言う冒険者達からの要望も上がってきているので、近々酒場を作る予定にしている。
それと少しいつもと趣向を変えて、トマトとモッツァレラにバジルを合わせたカプレーゼ風ピンチョスと一口サイズのオークステーキのピンチョスも準備した。
お酒が飲めれば何でも良い!油最高!なメンバーとは違って、きっとエルフは上品にお酒を飲むはずだ!と言うリアム君の主張を考慮した結果だ。まあ、私の予想はリアム君とは真逆なんだけどね。
それとエルフの里で作って食べた話を聞いた料理長に懇願されたピザも数種類作ってある。
今日はエルフの里の時とは中身を変えて、フレッシュな野菜をのせたサラダピザや照り焼きチキンのピザ、それとチョコバナナのデザートピザ。
この世界に来てから少しも痩せないのは、きっと充実した食生活のおかげだね・・・。あぁ、お腹が空いた。
大はしゃぎでお酒や料理を楽しむエルフ達と、予想とは違う姿を尊そうに見つめるリアム君を肴に、私もお腹を満たすべく食事に没頭するのだった。
翌日予想に反し、エルフ達は誰1人として二日酔いで潰れなかった。エルフ達はお酒に強いのかな?それとも永遠とも思える長い人生で、お酒に慣れているのかな。
「ぅおぇ。俺温泉入ってくる・・・。」
「あたしも・・・。」
「・・・・・。」
予想通りに潰れたのはヒューゴとアンナ、そしてガインだった。あれほど言ったのに本当懲りないよね。
「それでは桜様。行ってきます!」
「昨日は宴会ありがとうございました!」
「よーし!やるぞーーー!!」
酔いどれヒューゴ達とは対照的に、エルフ達は早速自分たちの仕事を見つけて働きに出かけていった。
もっと温泉街に慣れてからゆっくり探せば良いと言ったんだけど、皆やる気に満ちていてむしろじっとしていられないそうだ。
料理担当のエルフ達は昨日食べた料理に感動したらしく、料理長の下で料理を学ぶ事になったらしい。これでエルフ達も毎日美味しい料理が食べられるね。
エクセリオンは他のエルフ達数名と共に、ヒューゴの警備隊へ入る事に。その警備隊の隊長さんは酔い潰れて、今まさに温泉に浸かってる所なんだけどね。
エルフ達が警備隊に入る事で警備隊の戦力が上がり不安になったのか、アンナに警備隊長を変わって欲しいと頼んでいたけど、全く取り合ってもらえてなかった。
ヒューゴもカティアの森に来てからかなり強くなってるんだし、警備隊メンバーにも慕われている。
後はもう少し自信を持てたら良いんだろうけど、こればっかりは本人次第なんだよね。ヒューゴが弱いのはお酒にだけなんだけどな。
イシュリオンには隠れ里と茶畑の管理をお願いしてある。それと手が空いた時は子ども達の先生にもなってもらう予定。
他のエルフ達も、それぞれ興味を持った仕事をしてもらう事になっている。
エルフの子ども達は、昼間は孤児院の子ども達と一緒に勉強したり遊んだりして過ごしてもらう事になった。
子ども達の順応性は驚くほど高くすぐに意気投合し、楽しそうに一緒に駆け回っている。
いつまでも子ども達の笑い声が聞こえる、こんな平和な時間が続くと良いんだけどな。
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