第186話 ピザ

 エクセリオンさんに頼んで、集落の端のあまり邪魔にならない所に釜を造る許可を取ってもらい、土魔法で釜を造る。

 その間にクレマンには野菜やフルーツを切っておいてもらう。


 リアム君には足りなくなった時用に、大量のピザ生地を捏ねといてもらおう。重労働だけど、蕎麦を作っていたリアム君なら大丈夫だろう。

 ヒューゴは・・・・・今は特に手伝ってもらえる事は無いから放置。


 私は寝かせてあるピザ生地を収納から取り出し、早速生地を伸ばし、形を整える。収納が便利で色々しまってるけど、「出来た物がこちらに~」みたいな、どこかの料理番組を彷彿とさせ、思わずクスリと笑ってしまう。


「おばさん、突然笑ってどうしたの?」

「私達も何か手伝いたい!」

「何でもないの。お手伝いありがとう!」


 頭の中で3分間料理の音楽がBGMで流れながら、子ども達にもお手伝いを頼む。とその前に、まずはハンドソープで手を綺麗に洗いましょう。


 収納から出したハンドソープを渡し、洗い方を実演しながら使い方を説明すると、興味津々で真似する子ども達。


「これ何~?」

「泡泡してて面白い~!」

「これは手を綺麗にしてくれるハンドソープっていうの。ご飯は必ず手を綺麗に洗ってから作ろうね。」

「「「「「 はーい!」」」」」


 泡で手を洗うのが楽しいのか、キャッキャと楽しそうに手を洗っている。子供達の笑い声に、心まで洗われていくね。


「じゃあ皆は私が伸ばした丸い生地にトマトソースを塗って、この切ってある野菜やお肉をのせていってくれる?」

「はーい!僕ソース塗るー!」

「私は野菜のせる~!」

「じゃ、じゃあ僕はお肉!」


 子ども達は思い思いに玉ねぎやアスパラガスやコーン、トマトにピーマン、きのこにベーコンとたっぷりのせている。


 子ども達が具材をのせ終わったら、仕上げにチーズをたっぷりのせ、熱しておいた窯でピザの耳がカリッとなるまで焼いて・・・ミックスピザの完成だー!


 ピザカッターは無いので、包丁でカットするのはご愛敬。

「さあ、召し上がれ~!」

「「「「「 いただきまーす!」」」」」


 私も味見の為に1つ食べよう。カットしたピザを1枚お皿にのせようと持ち上げると、チーズがとろ~んと伸びる。なんとかお皿にのせ、熱々のピザを一口。


 パクリ


「あっついけど、美味しい~~~!」


 しっかり熱が入った野菜はとっっっても甘くてジューシー。その甘さをベーコンとチーズの塩気が引き締めてくれていて、絶妙な塩梅に仕上がっている。控えめに言っても最高の出来だ。


 思わず夢中で食べてしまい、ふと子ども達が静かな事に気付く。あれ?美味しくなかったかな?


 とっても素直な子ども達だから、美味しくても美味しくなくても、何かしら言ってくれそうなのにな。

 不思議に思い子ども達を見ると、何と子ども達は泣きながら食べていた。


「どうしたの!?大丈夫!?美味しくなかった!?」

「ううん・・・。すごく・・・・美味しいのぉぉぉ~~~!!!」

「うぅぅ・・・美味しいよぅ・・・。」

「お母さんにも・・・食べさせてあげたい・・・。」


 きっと私が思ってた以上に深刻な状況だったんだろう。こんなに泣きながら食べるほどの空腹なんて想像もつかない。


 それに子ども達がこれだけ飢えているという事は、大人もまた同様に飢えているんだろう。


「ヒューゴ!今すぐ里のエルフ達にここに来るように声かけて来て!」

「了解!俺のも残しとけよ!」


 ニヤリと笑いながらサムズアップするヒューゴはなんとも頼もしい相棒だ。

 私も笑いながらサムズアップを返すと、満足げに頷き、あっという間に走って行った。


「さあ、どんどん焼くから冷める前にいっぱい食べてね!まだまだあるから、遠慮しないで!」

「本当・・・?」

「お母さんのもある?」

「あるある!里にいる全てのエルフ達がお腹いっぱいになるくらいあるから大丈夫!」


 にっこり笑って答えると、また皆泣き出してしまった。それでもさっきまでとは違い、泣きながらも顔には笑顔が戻っている。

 よし!私は皆が来る前にどんどん焼いていこう!


「あ、そうそう。そこに突っ立っているエクセリオンさん。貴方も他の人が来る前に食べてしまってね。」

「いや・・・俺は・・・。」

「後が支えると他の人の迷惑になるから、意地張らずに先に食べてって言ってるの!」

「・・・・・すまん。」


 小さな声で何かを言ったエクセリオンさんは、子ども達の横に座り、子ども達が取り分けてくれたピザを一口囓る。


「・・・・・美味いな。」

「だよね!僕もこんなに美味しい物は初めて食べたよ!」

「このトマトは私がのせたの!」

「僕はこのお花みたいな形のピーマンのせたよ!」


 子ども達は自分たちが手伝った所を、一生懸命アピールしている。それを微笑ましそうに見ながらも、ピザを頬張っているエクセリオンさん。


 そんな意外な光景をニマニマと見ながらも、ピザを焼く私。子ども達の為にも、ピザを焼く手は止めていられません!


 子ども達とエクセリオンさんが焼きたてピザを食べている間に、次はデザートピザを作るよ!


 まずは薄く伸ばしたピザ生地にカスタードクリームを塗り、クレマンが切ってくれた苺をふんだんにのせて焼く。生クリームを添えたら苺のデザートピザの完成だー!


「甘い匂いがするー!」

「これもピザなの?」

「そうだよー。これはとっても甘い苺を使ったデザートピザだよ!」

「苺!!!」

「キャーーー!美味しそう!」


 歓声をあげて喜ぶ子ども達。これこれ!この嬉しそうな顔が見たかったんだよね!


 食べたそうにソワソワしている子ども達の為に急いでカットしお皿に配ると、嬉しそうに口いっぱいに頬張っている。この笑顔が見られただけでもう大満足だよ!



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