第178話 歓待
現在私達は獣王国ベスティアとの同盟締結を提案する為、かの国へと向かっている。エテルネに行く時にも使った豪華な馬車に乗って。
舗装もしていない道なので、かなりの悪路。だけどクッション性を高めたリアム君改良製のこの馬車は、快適とまではいかなくても、かなり私達の負担を減らしてくれている。
メンバーはコタロウとリュウ、アンナとガイン、クレマンとフェデリコ、そして護衛の警備隊。このメンバーなら護衛は必要ないと思ったけど、外交的には見栄えが大切らしい。
あれからずっとMAPでオルランド王子の動向を見ているけど、ベスティアから出る気配は全くない。それどころか、常に国の中心に居る。
これは王城かどこかで匿われているのか、それとも捕まっているのか・・・。
対策会議でオルランド王子の生存が発覚し皆が叫んだ後は、あれよあれよという間にオルランド王子をシューレ王国の旗頭に担ぎ上げる方向で話しが纏まっていった。
なのでベスティアへ行くのは温泉街との同盟を提案しつつ、オルランド王子と接触をはかる為。あわよくば一挙両得といきたい所なんだけどね。
今回実は私は同行せず、私の名代としてフェデリコが同盟締結の為に、ベスティアへと赴いた。という体になっている。
私はというと、怪しまれない様に鳥の姿でくっついている。皆が同盟締結で注意を引いてる間に、こっそりオルランド王子を探す予定。
そんな風にベスティアへ着いた後の事を考えていると、急に馬車の揺れが小さくなった。外を見てみると、さっきまでの鬱蒼とした森とは違い、人の手が入ったであろう木々が並んでいる。
「着きましたね。」
「ここからは別行動になるけど、無理すんなよ桜。」
「ふふ、期待していますよ桜様?」
「その期待にはお応えできません!」
フェデリコの期待は面白い事への期待だ。全くこの人もブレないね。心配してくれるアンナを安心させるように頷き返すと、少し安心した様に笑いながら馬車を降りていった。
私は皆の影に紛れて物陰へと転移し、動向を見守ってから行動に移る事にする。
事前に同盟締結に赴きたい旨の使者を送り、了承は貰っているものの、いきなり攻撃されるような事が起きないとも限らない。安全マージンはしっかり取っておきたいからね。
獣王国ベスティアへの入り口には、ずらりと出迎えが並んでいる。その中心に立っている男性は、2mはあるだろう大きな体に、黄金色に輝く大きな鋭い瞳と長い髪、頭には立派な耳が警戒する様にこちらを向いている。
その男性の隣には、同じく黄金色のふわふわっとした腰まである長い髪をたなびかせている小柄な女性が微笑んでいる。頭の上に付いている白くて長い耳がぴょこぴょこ動いていて可愛い。
うん。ライオンとウサギだね。ライオンと同じ髪色という事は、彼女はライオンの娘さんかな。何だか凄い組み合わせだけど、彼らは動物ではなく獣人。さもありなんって事だね。
フェデリコが馬車から降りた後、コタロウとリュウも馬車から降り、フェデリコの両サイドに控える。
今日は私の代わりに、戦闘力0のフェデリコの護衛をお願いした。かなり渋っていたけど、最近影から影へと移動する影移動を習得したらしく、何かあったらすぐ影移動で助けに来るという条件で納得してくれた。
そんなコタロウとリュウを見たライオンとウサギ達から、息をのむ気配がする。MAPで見る限り赤い警戒の印はない。コタロウとリュウは通常のフェンリルとは違い亜種。見た目も違うから驚いたのかな。
フェデリコ達がライオンの前まで歩いて行くと、私達の予想外の出来事が起きた。ライオンとウサギを筆頭に、出迎えに出ていた全ての獣人達が跪いている。
「ようこそおいで下さいましたフェンリル様!そして温泉街からの使者殿!我らはあなた方を心より歓迎致します!」
「・・・ありがとうございます。」
あまりの歓待ぶりに驚いたけど、一先ず危険は無さそうかな。それでは当初の予定通り、私はオルランド王子の所へ向かいますか。
( それじゃあ行ってくるね。フェデリコの事、頼んだよ!)
( 任せとけ!)
( 桜ちゃんも何かあったら、すぐに僕達に行ってね~!)
( うん!ありがとう!)
同盟はフェデリコ達に任せて、そろそろ私も自分の任務に取りかかるとしますか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます