第81話 まさかの大物

 昨晩は夜遅くまで大盛り上がりだった。私はコタロウとリュウが心配だったから、皆より早めに部屋に戻ったけど、暫く食堂から大騒ぎする声が聞こえて来てた。

 皆きっと二日酔いで、朝起きて来れないだろうな。


 コタロウとリュウにご飯をあげてから、少し遅めの朝食を食べに食堂へ降りると、いつも通り笑顔のエマさんが給仕していた。

 そう言えばエマさんも妹のエルさんも、かなりの量のお酒を飲んでいた気がするけど、元気いっぱい働いている。かなりの酒豪だね。


 朝食を食べ終わった頃に、ヒューゴがやっと食堂に顔を出した。青い顔をして。

「朝食は?」

「うっ・・・いや、今朝は食べれそうにないから・・・。」

 以前深酒した時ほどでは無いにしても、今にも吐きそうな程には酷い二日酔いらしい。


「だよね。じゃあこれグイッと1本いっとこうか。」

 ヒューゴの前に状態異常回復の湯が入った瓶を置く。

「これは!!助かる!!!」

 ヒューゴが一気に呷ると、直ぐに顔色が正常な色に戻っていった。


「自分の限界を見極めて、お酒に飲まれない様に飲もうね?」

「申し訳ない・・・。」

 ガックリと肩を落としたヒューゴの背中をバシッと叩いて喝を入れる。


「そろそろ冒険者ギルドに行くよ!手伝ってくれるんでしょ?」

「ああ!任せとけ!」

 1度部屋に戻り、コタロウとリュウに影へ入ってもらう。それと今日のプレゼンに必要な物を収納から鞄へ移し替えたら準備万端。

 元気になったヒューゴと共に、いざ冒険者ギルドへ!



 扉を開けると昨日とは打って変わって、ギルド内は活気に満ちていた。

「こんにちわ。ギルド長とお会いする約束をして」

「あ!桜様!!聞いてますよー!どうぞそのまま部屋まで上がって下さいー!」


 ドジっ子アメリアさんは、本日も絶好調のようです。ギルド長の部屋まで勝手に上がるとか、危機管理的に駄目なのでは?


 チラッと奥の方に居る女性の職員さんを見ると、溜息をつきながら困った顔をしている。やっぱり本来は駄目なのね。

 私と目が合うと小さく「すみません。」と言いながら頭を下げて来た。彼女苦労してそうだな。


 とりあえず勝手に上がっても良さそうだったので、そのままギルド長室まで行く。


 コンコンコン

「すみません、桜です。直接上がって良いという事だったので上がらせて貰いました。」


 外から声をかけるとガチャッと扉が開き、マイルズさんが出迎えてくれた。

「待ってましたよ。どうぞお入り下さい。」


 中に入るとすでに先客が居た。マイルズさんが声を掛けてくれた、教会と商業ギルドの関係者だろう。


「早めに来たつもりでしたが、お待たせしてしまった様で申し訳ありません。」

「いえいえ、問題ありませんよ。実は彼らには少し早めに来てもらい、貴女方について少し説明する時間を作ってもらいました。」


 そりゃそうだよね。いきなり他国から来た見知らぬ冒険者に会って、復興計画について聞いて欲しいと言われても「はい、喜んで!」なんて私なら言わない。



「ではまずは自己紹介からしようかね?私は商業ギルドでギルド長をやってるイザヤだ。今日は面白い話が聞けると聞いて楽しみにして来たんだ。よろしく頼むよ。」


 イザヤさんがニヤリと笑う。何でも見透かしてしまいそうな、この眼光鋭い初老の女性が商業ギルドのギルド長か。

 聖王国であるこの国の教会関係者より先に自己紹介するという事は、実質今この街で1番影響力があるのは商業ギルドって事になるのかな。


「私はアマリア聖王国教会で枢機卿の任に就いている、カルロ・デッラ・アルティエリと言います。我が甥の誘いを受けて参りました。どうぞお見知りおきを。」


 教会のツテが枢機卿。しかも甥って。マイルズさん先に言っておいて欲しかったです。


「こちらは先程お話した、冒険者の桜さんとヒューゴさんです。今日はお2人からこの国の未来に向けての提案があるので、この場に御二方をお呼び致しました。

 それと最初に言っておきますね。私は桜さんに全面協力致します。それを踏まえてどうぞお聴き下さい。」


 マイルズさん援護射撃をありがとう!さすがに少し緊張するけど、さてさてどうやって口説き落とそうかな!


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