第78話 原因判明

 宿屋を探してる時に街中を歩き回った時も思ったけど、やっぱり人があまり歩いていない。

 雑貨屋や武器屋にも何軒か入ってみたが、正直ハンメルの方が良い物が置いてあったな。


 何かアマリアならでは!みたいな物を期待していたのに、そういった物も特に見当たらない。

 回復薬は凄いんじゃないかと思い鑑定してみたものの、品質も性能もハンメルで売っていたものと同程度。


 市場や屋台街も閑散としていて、どれも買ってみる気になれなかった。


「思っていたのと違う・・・。」

 私がしょんぼりしながらトボトボ歩いていると、ヒューゴさんが笑いだした。


「桜はアマリアがもっと栄えた国だと思ってたのか?」

「うん。だって創造神ゼノス様を祀ってるんでしょ?この世界を創った1番偉い神様でしょ?」


 私を助けようとしてくれたり、地球の神様にコタロウとリュウを連れて来れるように交渉してくれたり・・・沢山助けてくれたんだよ。


「いや確かにそう言われてるけど、どうしても恩恵を感じにくいんだよな。

 火・水・風・土・光・闇の神々は魔法を使ったり、生活にも直結してくるから有難みを感じるんだ。だが世界を創ったと言われてもな・・・。」


 生まれた時から世界はあるんだから、そこに恩恵を感じろと言っても無理があるのか。

 うーん・・・。これじゃあアマリアが賑わうことも、ゼノス様が元気になる日も遠そうだな・・・。


 あれ?でも昔はゼノス様への信仰も今よりあったんだよね?信仰ってそんなに簡単に廃れるものかな?



 そんな会話をしながら、大通りを真っ直ぐ進む。目指すはアマリア大聖堂。

 徐々に近づくにつれ、その威風堂々たる佇まいに圧倒される。


 感動しつつ入口でお布施を払い、大聖堂の中へと足を踏み入れる。

 中も圧巻の素晴らしさだった。ステンドグラスから零れる光がプリズムの様に煌めき、聖堂内を明るく照らしている。


 そんな聖堂内の最奥中央には、威厳に溢れたゼノス様の像が祀られている。思わず祈らずにはいられない程神々しい。


 だがしかし!あれはちょっと・・・。威厳あるゼノス様像のすぐ側に、何故かデカデカと聖女様像が置いてあった。

 そのあまりの存在感に、ゼノス様が霞んでいる。


 分かった。全て分かったよ。原因はこれだ!聖女様を敬うあまり、全てが聖女様最推しになり、結果ゼノス様への信仰が追いやられてるんだ。


 これは根本から見直さなければならない根深い問題なのかもしれない。・・・外堀から埋めてみるか。


「桜、何を考えてる?」

 不穏な空気を察知したのか、ヒューゴが恐る恐る声をかけてきた。


「ふふふふふ。今は内緒。帰ってから少し頑張らないとね!」

「・・・程々にな。」

 何か誤解してない?悪い事をするわけじゃないんだよ?



 準備するのに必要な物を買い足し、その足で冒険者ギルドに向かうと、さっきまで閑古鳥が鳴いていたギルド内が人で埋め尽くされている。


「何かあったのかな?」

「受付で聞いてくるから、桜はここで待ってろ。」

「はーい!」

 流石元騎士というのか、こういう時の対応は素早いんだよねヒューゴ。


 丁度買取査定を頼んだ時の受付嬢が窓口に居た為か、ヒューゴが彼女に話しかけると


「彼ですーーーーー!!!!!」


 突然叫ばれた。前にも同じような事があった気がする。ハンメルの冒険者ギルドで。という事は、次はアレですね。


「すみませんー!持ち込まれた魔物の事でギルド長が話を聞かせて欲しいと言ってるので、ギルド長室まで付いて来て貰えますか?」

「はいはい了解ですよー。」


 無遠慮な視線に晒されながら階段を上がり、突き当たりの部屋の前まで来ると、受付嬢はいきなり扉を開けた。

「ギルド長!!!例の人達を連れて来ました!!!」


「はい、ありがとうございます。それと次からは出来ればノックをしてから扉を開けてもらえますか?」

 部屋の主であろう彼は、穏やかな笑みのまま、やんわりと彼女に注意を促している。


「はっ!!すみませんー!次から気を付けます!」

 ペコリとお辞儀をして彼女は走り去って行った。扉を開けたまま。

 彼女はもしかしてあれかな?ドジっ子なのかな?


「大変失礼致しました。どうぞお掛け下さい。」

 呆気に取られて立ち尽くしていた私達を席に促しながら、自分も私達の向かい側に腰を下ろす。


「あの、扉は・・・?」

「ああ、大丈夫ですよ。多分そろそろですから。」

「「???」」


 不思議に思っていると、すぐにパタパタと小走りに走る足音が聞こえて来た。


「すみませんー!お茶を持って来ましたー

!!」


 少しこぼれた形跡のあるお茶を、ドンッドンッドンッと3つ置いて立ち去ろうとする彼女をすかさず彼が呼び止めた。


「アメリアさん、美味しいお茶をありがとうございます。それと戻る時に、扉を閉めておいて貰えますか?」

「了解ですー!」

 お茶のお礼を言われ、嬉しそうに彼女は去って行った。扉を開けたまま。


「「ぶふぉっ!!」」

 笑っちゃダメだと思いながら、堪えきれずつい吹き出してしまった。


「少しそそっかしい所もあるのですが、とても明るく真面目な良い子なんですよ。」

 彼がアメリアさんをフォローしながら扉を閉める。確かに彼女が居たら自然と笑ってしまうかも。

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