第47話 温泉の新しい使い方

 ギムルさんのお店を出て、人気がないのをマップで確認してから転移。場所は前回魔法の練習をした森。


 周りに魔物が居ないのを確認する。

「コタロウ!リュウ!遊んでおいで!」

「やったー!!」

「何かあったらすぐ呼べよ!」

 嬉しそうに駆けて行った。いつも我慢させてる分、たくさん遊ばせてあげたい。


 2匹が遊んでる間、私はギムルさんが作ってくれた剣で素振りをする。久しぶりのせいか、あちこち変なところに力が入ってる気がする。

 暫く無心で振り続け、気付けばお昼になっていた。モヤモヤしていた気持ちが、少しスッキリした気がする。


 あれ?そういえば、これだけ素振りをしたのに、大して疲れてないかも。久しぶりなのに、掌の皮が剥けてないどころか痛くもない。

 もしかして加護の効果なのかな。いつかまた神様に会えたら聞いてみよう。



「腹減った!」「お腹空いたー!」

 お昼の準備をしていると、丁度2匹が帰ってきた。

 コタロウとリュウには、カツサンドをお皿に乗せて出す。私は全種類を1つずつ。


「「「いただきまーす!」」」


 パクリ。


 うん!美味しい!!

 コタロウとリュウも美味しそうに、バクバクっと食べている。

 同じ物を食べても大丈夫とは言われても、初めはやっぱり体調を崩したり、消化できないのではと不安もあった。

 けど今は美味しそうに食べてる姿を見られて、本当に幸せ。もっともっと美味しいご飯を食べさせてあげるからね!



 時々マップを見て魔物が近づいていないか確認をしてるけど、全く近づいてくる気配がない。というか1度も遭遇した事がない。何で?

 よくよくマップを見ると、私達から円を書くように半径10m以内に魔物がいない。


「ねえねえ、魔物が全く近づいて来ないんだけど、コタロウ・リュウ何か知ってる?」

「いや、知らない。」

「えっとね、コタロウがさっきマーキングと威嚇してたのー。」

「リュウ!!」

 コタロウの反応を見るに、私に危険がないようにしてくれてたのかな?


「コタロウありがとう!でも怪我しないよう気を付けてね?」

 ヨシヨシしながらお礼を言うと、コタロウのしっぽがバシンバシンと地面を叩いてる。

「リュウも教えてくれてありがとね!」

 リュウもヨシヨシすると、嬉しそうにしっぽが揺れている。はぁ~癒しです。


 ご飯を食べ終わり少し休憩をした後、温泉に入る。効果はもちろん疲労回復と美肌。今回はリュウも一緒に入る。

「気持ち良い~。疲れが溶ける~。」


 温泉に入りながら、テオさんの事を考える。どうにか治す方法は無いのかな・・・。

 転移で陽菜ちゃん連れて来て治してもらうとか?いや、昼間に陽菜ちゃん連れ出すのはリスクが高い。

 レシピをもっと登録してお金を稼いでポーションを買う?でも見つからないかもしれないし、そもそもテオさんが受け取ってくれない気がする。

 いっそ私が作れたらな・・・・・・作る?作れるかも!温泉の効能!!!


 無くなった腕をも再生する効能のある温泉をイメージし、温泉スキルを発動する。

 私の入ってる温泉の隣に、湯の色が濃い青色をした温泉が出来た。

 鑑定結果は【 どんな傷でも治る湯 】


「で・・・きた?」

「また温泉?」

「こっちの温泉にも入って良いのー?」

 リュウが今にも飛び込もうとしていたので、慌てて止める。

「待って待って!この温泉は、怪我を治してくれる効能があるの。お湯を収納したいから、飛び込まないで欲しいな。」

「「はーい」」


 とは言ったものの、テオさんに使う前に試してみないと。

 指を剣に軽く押し当てると、ピリッとした痛みが走る。・・・斬れ味すごいな。

 切れたところに温泉をかけてみると、一瞬で傷が治った。


「「治った!!!」」

 驚きで言葉が出ない私とは反対に、コタロウとリュウは思わず叫んでいた。


 でもテオさんは、右手が無くなってるんだよね。かけるだけで治る?飲むとか?そもそもこの温泉飲めるの?


 試してみるしかない。もう一度指に傷を作り、温泉を掬って飲んでみる。あ、ほんのり甘くて美味しいかも。

 傷もさっきと同じように、一瞬で治った。流石にこれ以上は試してみるまで分からないけど、何となく上手くいく気がする。


 身支度を整え、傷が治る温泉のお湯は全て収納。おっと、お湯がまた湧き出てきてる。でも今日はこれで充分!残して悪用されないように、温泉は2つとも消す。


 この傷を治す温泉の湯・・・長いから傷湯で良いか。これをテオさんに渡したのが、私だってバレない様に変身しよう!

 誰に変身したら怪しくないのか・・・持っててもおかしくない人・・・。

 そうだ!良い事思いついた!一石二鳥を狙ってみよう。ふふふふふ。

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