第25話 クッキー

 今日は夜に歌うからという事で、昼間は強制的に休みになりました。

 ガインさんもハンバーグを作れるようになっている為、昼の営業も大丈夫そう!


 さて夜まで何しようかな。

そうだ!まだ孤児院の皆には挨拶に行けてなかったし、クッキーを手土産に挨拶に行こう!

 この世界での知り合いはまだまだ少ない。出会った縁は大切にしたい。


 そうと決まれば早速クッキーを焼こう。ガインさんに許可を取って、厨房を使わせてもらう。

 作るのはジャムを乗せたクッキー。バターも牛乳もないけど、美味しくできるかな。


 まずジャムを作る。

 市場で買っておいた苺っぽいフルーツを鍋に入れ、砂糖をまぶし、軽く潰して火にかける。

 沸騰したらレモン汁を加え、時々かき混ぜながらコトコト煮込んでいると、甘~い良い香りが漂ってきた。苺がツヤツヤしてて美味しそう。・・・我慢我慢。

 アクが消えてトロッとしたら、煮沸した瓶に入れ蓋をし、ひっくり返して冷ましておく。


 次はクッキーを作る。

 卵、砂糖、油、ひとつまみの塩を入れよく混ぜる。

 小麦粉を入れ混ぜ、耳たぶくらいのかたさになるまで捏ねる。

 型がないから、今回は生地を1口大位に等分して丸め、フライパンに乗せる前に軽く潰して厚さを調整する。中央を少し凹ませて、両面をじっくりと焼く。途中凹ませた所に、はみ出さないようにジャムを乗せて焼いたら完成!


 さあ!お味見お味見!パクッ。


 美味し~い!サクサクっとした素朴な味のクッキーにジャムの甘さが嬉しい!

 私がモグモグ食べていると、後ろからヒョイっと1枚盗まれる。犯人はアンナさんでした。


「美味しい・・・。桜これ何?新作?」

 アンナさんが固まってる。

「クッキー。コジイン サシイレ モッテク。」

 私の言葉にアンナさんが項垂れた。


「そっか・・・孤児院の子達に差し入れか。確か桜は孤児院で歌って、子供達と交流してたんだよな。子供達も喜ぶだろうし、それなら欲しいなんて言えないな・・・。」


 アンナさんもっと食べたかったんだ。

 あれ?何でアンナさん、私が孤児院で歌った事知ってるのかな。レオさんと話してた時は、知ってる素振りなかったんだけど。


「コンド ツクル。アンナサン タベテ。」

「本当か!桜ありがとう!楽しみにしてるよ!」

 アンナさんが嬉しそうに戻って行った。


 私もそろそろ孤児院へ向かおう!ミレイユさんの雑貨屋さんで買った持ち運び用の籠に、クッキーをしまっていざ出発!




 孤児院の庭で、子供達が楽しそうに遊んでいた。

「コンニチワ~。」

「あっ!この前のおばちゃ「お姉さん!」んだ!こんにちわー。」

 相変わらずフォローしてくれる年長男子。おばちゃん気にしないから、大丈夫だよ?


 子供達に挨拶をしていると、ユリアナさんが出てきた。

「桜さん、こんにちは。早速遊びに来てくださったのですね!」

「ユリアナサン、コンニチワ。ワタシ ラース スム。オオグマテイ ハタラク。」

「ラースに住まわれるんですね!お仕事も決まって良かったです!」

 ユリアナさんが自分の事のように喜んでくれる。嬉しいな。


「コレ サシイレ。タベテ。」

 籠から出したクッキーの乗ったお皿をユリアナさんに渡すと、子供達が集まってきた。皆キラキラした瞳でお皿を見つめている。


「せっかくなので、皆で頂きましょう。手を洗って食堂に集合ですよ。」

 ユリアナさんが言い終わる前に、子供達がダッシュで手を洗いに行った。素早い。


「桜さんもご一緒に是非。さあ、こちらへどうぞ。」

 にっこり笑顔でユリアナさんが食堂に案内してくれる。お邪魔しまーす。


 案内された食堂はとても広く、私が座れる席も余裕であった。

 手を洗い終わった子供達も合流して、いざ実食です!

「「「「「「 頂きまーす 」」」」」」


 パクッ


「「「「「 !!!!!!! 」」」」」

 皆一瞬固まったかと思うと、夢中で食べ始めた。

「お姉ちゃんとっても美味しい!」

 いつもおばちゃんって言ってた子の呼び方が、お姉ちゃんに変わった。とっても素直な良い子だね!

 子供達が笑顔でクッキー食べてる姿は癒されるな~。


「ワタシ、ラースキタ スコシマエ。トモダチ イナイ。ミンナ「「「じゃあ僕達と友達にはろうよ!」」」」

「ナル!アリガトウ!」


 私がお願いする前に、食い気味に提案してくれる子供達。クッキーに釣られただけじゃないよね?ないはず。うん、きっとない!

また子供達の笑顔に癒されに、遊びに来よう。


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