第28話 寒いのに暖かい…。


オーレオールにお礼を伝え、ギルドを後にした。


今こうして街中を歩いているのもグニーには全て丸わかりなのだろうか。辺りを気にしてしまう。

認識阻害魔法を掛けてもらったが呪いの方が先にかかっているため、効果はないだろう。


ルークをチラッと見る。


手を繋がれほんの少しだけ前を歩いている。ルークの表情が見えなくて不安になり、俯き気味にボソッと呟く。


「ねぇ、ルーク…。

またきっと召喚獣で襲ってくるよ…ね。

ごめんね、迷惑かけて…。」


ピタリとルークが歩くのをやめた為、ルークに軽くぶつかってしまう。


「ごめ」

「ロティ、とりあえず屋敷に戻ろう。」


それだけ言われまた手を引かれる。私は憂心を抱きながら帰り道を歩いた。



◇◇◇



屋敷に戻るや否やそのまま手を引っ張られ、2階に連れて行かれる。幸い?甲冑さん達は休んでいたのか反応はなかった。


寝室までそのままくると、ルークは寝室の扉を魔法で開けた。


と思ったら突然体が浮き、ベッドに放り込まれた。


「ひぇ!?んぅ!?」



下ろす時にぽふん、となるイメージで変な声が漏れたが優しく下され空振った為少々恥ずかしい。


体を小さくした格好で寝転びながら羞恥心に耐える。


そうしているとルークが急足でベッドに近寄ってきた。

一瞬ルークと目があったのも束の間、ルークは私に覆い被さってきた。


反射的に何故か怒られると思い目を硬く閉じる。


次の瞬間。


額にコツンと何が当たる感触があり、それ以上何も起こらない為、恐る恐る目を開けるとルークの長い睫毛と鼻筋が見えた。


私は何をされているのか瞬時に理解できなくて、その綺麗な顔をじっと見つめるしか出来ない。


私から少し離れたルークは私の顔を見つめて眉を下げている。


「やっぱり、熱がある。」

「え?」


「ロティ、あまり顔には出ていないが熱がある。

額が熱い。手も熱かった。」

「え?……。あっ、ほんとだ?全然気付かなかった。」


自分の額に手を当ててみるとじわりと熱い。


ルークはどこで気付いたのだろう。

自分でも自分の熱に全く気付かないなんて。

というより、熱を出したの何年振りかわからないほどずっと前だ。


熱を自覚すると急に体に寒さを感じ、ブルッと震えながら体を摩る。

ルークは私の肩に触れて心配そうに話す。


「ロティ、暖かい服を用意するからそれに着替えてベッドで休んで。今持ってくる。それに昼食がまだだったろう?食べれそうか?」


お腹に手を当て考えて見るが、あまりお腹が空いていないようだ。首を横に振りつつ答える。


「食事は大丈夫。休んでいいの…?」

「ああ、休んでくれ…。その前に着替え持ってくる。」


そう言うとルークはとなりの衣装部屋に行き、服を選んで持ってきた。

前開きの長いワンピースタイプの寝巻きみたいだ。


ルークは私が着替えをしている間、部屋の外に出てくれた。


熱のせいで体がぞわぞわするし、ぼーとしてしまう。


寒さに耐えきれず、布団の中に潜るとひんやりした布団の中は私の体温ですぐに暖かくなるが、私は寒いままだった。


ルークはすぐに戻ってきてベッドサイドのテーブルに水を置くと、私を見つめルークは眉が下がり悲しそうな顔をしていた。


「ロティ…大丈夫か…?昨日から疲れが溜まっていたのかもしれない…。気が付かなくてすまない…。」


不甲斐なさそうにルークは言うが、1番初めに気付いたのは私でもない、ルークなのだ。

私は笑って答える。


「ふふ…。ルークが気付いてくれたんでしょ?

私も気付かなかったよ。ありがとう、助かったよ。


熱を出すのとっっても…久々過ぎて。

こんなに寒いもんだっけ…。うー…。」

「いや、なんとなく調子がおかしいかと思った程度だったのだが…本気で悪いとは…。

そんなに寒いのか…?暖かくなる魔法をかけようか…、いやでも今度は熱が上がりきれば熱くなるか…?」


ルークは慌てているみたいだ。

そんなルークが可愛く見えてしまうのは私の前では百面相だからだろうか。


こんなルークの事を皆は知りもしない。

その優越感からなのか熱のせいなのかわからないがふわふわした気持ちになる。


だが、体はガタガタだ。嫌でも震えが止まらない。


私を困った顔で見つ続けるルークに無意識で手が伸びてしまった。

私の手を取るルークは私の熱い手をふわりと優しく包み込んでくれる。


「少しだけ…側に居てくれると……嬉しいな。」


緊張なのか寒さなのかわからない、少し震えた手。

昨日まで殆ど知らないルークの存在だったのに、今じゃ私の中ではかなりの存在感だ。


祖母が亡くなってから、こんな事を人に言う事なく生きてきた。

縋る者も、縋りたい者もいなかったのだ、当然ではある。


熱のせいなのか、ルークには縋りたいと思ってしまう。

こんな事を本人にはっきりとは言えず、少し濁してしまったが伝わったのだろうかと心配だ。



私の不安に反してルークは私の頭を一回撫でると、布団の中に入ってきて私を抱きしめてくれた。


ルークの体温が暖かくて擦り寄る。



「…ロティが具合悪いのに…すまない。」

「…うん?」

「こうしているのが凄く嬉しくて…。」

「…うん。」


私も一緒、とは恥ずかし過ぎて言えないけれど。


私の体に回るルークの手が私をどう想っているのか言わなくともわかるくらい優しくて涙が出そうだった。



懐かしい感触と暖かさで満たされ私の視界は徐々に真っ暗になった。

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