第3話 情報は時に命になりうる。
アリリセと作戦会議をした後その日は解散した。
会議といっても私は回復役ヒーラーで、アリリセは剣士なので攻撃役。今回は森の奥深くに潜るつもりはないが念のためきちんと自分の役割と目的の再確認を行ったのだ。
出発は明日の朝でタルソマの町の出入り口にて待ち合わせだ。
今日の午後の残り時間は各自、自分が必要だと思うポーションや道具を揃える時間が必要だったため解散としたのだ。
たとえこの町の近くの森だろうが、備えを怠れば命を落としかねない。
私はパーティを抜けたばかりで、本来なら今日また魔物討伐に行くだろうと荷物はセットしてあったので軽く確認をすればいいだけだ。
なので今日の残り時間は情報収集をしようと私はギルドの掲示板の前に戻った。
魔物討伐で1週間ほどタルソマの町を離れていたため、新しい情報を仕入れたい。
特にメルニア国内の私がいる町辺りの情報は頭に入れて置かなければならない。
数ある報告書や依頼書の中からそれらを探し出し目を通し始める。
〜メルニア王国内情報〜
【シュワールの森に大型の犬の様な魔物1匹の目撃情報あり、瘴気を放出している、当てられないよう注意せよ。交戦するも、すぐに魔物逃亡。追加の情報があればギルドに報告を。】
アリリセが言っていたのはこれだろう。
十分に気をつけねば。その魔物に会ってもあちらがすぐに逃げてくれると助かる。
【ゾツの墓地にてリッチらしき魔物の目撃情報あり。被害情報なし。】
【飼っていた黒猫探してます。特徴は後ろ左足の先だけ白いです。見つけたら魔法士のガーランまでよろしく。】
【勇者パーティ一行、5年の時を経て、遠征より6人無事帰還中。古代竜エンシェントドラゴンとの交渉に成功。メルニア王国において100年程の安寧を約束される。
アレックス、ルーク、エドガー、サイラス、リニ、ノニアは褒美と称号を授与。】
【犯罪者情報、投獄中だった犯罪者が1人逃げ出したと情報あり。グニー・アレグリア、女性、種族妖精エルフ。確保者に1億G報奨金。罪状、殺人。】
【生まれたてグリフォン、ギルドにて保管中。魔物使いテイマー募集。なるべく早く!】
【ギルドより最上級ポーション求む。1つ報酬金50万G。10本まで買取。】
まだまだ掲示板に紙は貼ってあるが、新しい情報と古い情報が混ざって張ってある為沢山は覚えられない。
緊急性が高いものやコロコロ変わる情報はきちんと差し替えられるが、黒猫の張り紙なんかはもうきっと私が来た頃から貼ってある気がする。
多い情報の中、気になったのはアリリセの言っていた大型の犬の様な魔物1匹と最上級ポーション。
ギルドで回復薬が足りていない時掲示板に貼られる。
いつもは30万Gだが今回は更に高くなっている為、最上級ポーションの在庫が少なくなっているのだろう。ポーションを作って買取してもらえれば当分暮らせる。
シュワールの森で最上級ポーションの一部がとれるため採取決定。手持ちにいくつかない素材があるため、近々採取のためにタルソマの町から離れ足を伸ばさないと行けない。
アリリセの事が済んだら、どうするか考えよう。
ギルドの掲示板からそっと離れ時計を見る。
16時半、結構長居してしまったらしい。
ウルカに挨拶をしようとカウンターに近づくと、丁度他の冒険者が報告を終えたのかカウンターを離れた。
私に気付いたウルカがにこりと可愛く微笑みを見せて手を振ってくれる。
カウンターまで行くとウルカの方から話しかけてきた。
「ロティさん。先程はアリリセさんとパーティを組んで下さりありがとうございました。」
「いえいえ、ウルカさんにはいつもお世話になってるし。
困ってたら放っておけないしね。薬草採取したいのは本当だから良かったよ。」
「そう言って頂けて嬉しいです。
……ただ。」
「ただ??なにかした?」
「何か忘れている様な気がして…。」
「うん?なんだろう?」
暫くウルカは悩んでいたが思い浮かばなかったらしい。その間ウルカの尻尾と耳を眺めて僥倖だ。
「なにか思い出したら明日お伝えしますね…。」
耳を垂らし悲しそうにウルカは言った。
「大丈夫だよ!ウルカさん!また明日ね!」
私はウルカに手を振りながらギルドを後にした。
外は夕方でタルソマの町が賑わってくる。
所々からいい匂いがして鼻がくすぐられ、胃を刺激した。
(夕食と明日の食料買って宿に戻って、明日の用意して備えよう。サクッと行ってサクッと帰れればいいなぁ。…ついでにお節介でもしてあげるかな。)
アリリセは瘴気跡にはエルダーの花が必要と知識はあっても、エルダーの花を一手間加工して使用する知識があるのかわからない。
花の事もきっとギルドで教えてもらったのだろうし。
(あ、ウルカさんが忘れてるってもしかしてエルダーの花の加工かな?ありえるなぁ。)
私は加工できるし、必要なら加工して使用するまで手を貸してもいい。
その代わり私の必要な薬草採取も手伝って貰おう。
実際、報酬金が2万Gは誰も手を貸してくれない案件だ。ゼロ一つ足りないほど報酬金が少ない。
私がパーティを組まなかったら強行突破をしていた可能性もある。
アリリセの冒険歴がどれくらいかはわからないが、冒険者が無謀にも死ぬのはギルドとしては避けたい為、ウルカは私とアリリセのパーティにはホッとしただろう。
私もお金を稼ぎたいので、ウルカの薬草採取前提の提案は大賛成だった。
依頼が成功すれば、皆ハッピーの円満解決だ。
私はいい匂いにお腹を空かせながら買い物に足を運んだ。
空腹は最高の調味料だ、たまにはお肉も食べたい。
鼻を効かせ匂いをたどる。
明日は頑張る為に体力付ける、という名目でお肉を食べたいと言う欲求を素直に受け入れ、匂いの元に歩いていく。
少し買い過ぎて重い荷物を抱えながら帰る事を、空腹である私はまだ知らない。
❇︎冒険者が拾ってきた卵はグリフォンのものだった。
(冒険者曰く食べようと思って持って来て、鑑定してもらったらグリフォンだった。食べれないなら、とギルドに買取してもらったら思いの外すぐに孵ってしまった。)
魔物使いの募集をしているのはギルマス。
グリフォンの面倒を見ているがテイマーではないので懐かず苦戦している。なるべく早く!は心の叫びが漏れて、依頼書に殴り書きした。
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