暗黒のホワイトムーン

ソウカシンジ

暗黒のホワイトムーン

 黒くて白い月が揺れている、そう見えてしまう。最近目眩がするのだ、何処かの誰かに貰った薬を飲んでから目眩が止まらず吐き気も続いている。何で飲んでしまったのだろう。そうだ確か彼氏に振られてその時に初めて買った煙草を喫煙所で吸っていたら突然隣の不気味な男が話しかけてきたのだ。お嬢さん辛そうだねどうしたの、助けてあげようかと張り付けたような微笑みで話しかけてきたのだった。最初は無視していたのだが徐々に男がすり寄って来ていたのがわかったので怖くて思わず口を開いて何でしょうかと問いかけてしまった。そうすると、男は嬉しそうに口角を吊り上げて私に白い粉末を掌に乗せて渡して来た、明らかに貰ってはいけないものだったので急いで振りほどこうとした、しかし見た目が細腕の筈の男の腕力は異常に強く振りほどくこと等不可能だった。男は力強く私の腕を握りながら早口でこういった。これは絶対に君の拠り所になる決して捨てることのないようにねと。貰った後で捨てることは容易だったが、何故か捨てるには忍びなく私はそのまま家に持ち帰ってしまった。その後私はベッドに横たわりながら怪しい男から貰った怪しい白い粉末を見つめていた。何処か宝石のような美しさがありつつも、不気味な雰囲気があった。私はその不気味さと美しさに強く魅了されその粉末を水に溶かし、ひとえに飲んでしまった。すると私は眠りに落ちた。朝になると枕が吐瀉物まみれになっていて、体温が著しく低下していた。そこからは単調で最悪な時間が長く続いた。頭痛、嘔吐、目眩、寒気、痙攣。あらゆる身体症状が私を襲ったのだ。そして一時間がたった頃、突然視界が狭窄して黒と白しか視認できなくなった。モノクロで狭い視界に私は、自分が今どこにいるのかがわからなくなった。私は誰なのか何故生きているのかそもそも生きているのかさえわからなかった。私はベランダに出て月を眺めた。すると何かがおかしいことに気が付いた。月が黒い。いつも白い月が黒いのだ。まあどうでも良い、私はもう私じゃないのだ。唯一私と同じなのは月だけだ。暗黒で白い月が私の拠り所だ。あの男に感謝しよう。

はあ、煙草が美味い。俺はベランダから白い月を眺めていた。あの女に感謝しよう、こんなにきれいな月を見せてくれたのだから。彼女に謝らなくてはいけない、さっさと家を出よう。あの子はきっと何かを変えてくれる。何故かと言えば分からない、でもそれで良いそれで良いのだ。

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暗黒のホワイトムーン ソウカシンジ @soukashinji

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