第6話

 一緒に出発して。


 隣の席。


 で、帰ってくる。


 そういう日が続いた。

 彼女が泊まる予定だった部屋は、点検が長引いているらしい。


「あの」


 外に出ていた彼女が、なんか、アタッシュケースを持ってきた。


「これ。部屋借りられなかったぶんのおわび、らしいんですけど」


 アタッシュケースの中身。


 おかね。


 そりゃあ、そうか。ここけっこう高い部屋だし。損失含めて、これぐらいはおかねもらえて普通か。


「これで、あの。何かお好きなものを」


「あ、俺?」


「住まわせていただいている、お礼に」


「あ、じゃあひとつ」


「はい」


「笑ってもらえます?」


「え?」


 その、けわしい眉間が気になる。


「いや、それはちょっと」


「そうですか。じゃあおかねはいいです。今日は何を食べますか?」


「ぱすた」


「パスタね」

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